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隣の席の水無月さんが、ネットで話題のアイドルだった  作者: 結城ユウキ


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第11話 みんなの印象と……


「今日は、リリアリ談義をしようと思う!」


 突然、悠真《ゆうま》がそんなことをお昼休みに切り出してきた。

 これはゆっくりお昼ごはんを食べさせてもらえなさそうだ……。なんて心の中で思いながらも、僕はその話に付き合うことにする。


「急にどうしたの、悠真?」


「晴輝がだんだんと興味持ってきてるみたいだからなっ! ほらほら、お前らもこっちこいよ!」


 悠真がクラスメイト二人を呼び寄せると、僕の机を囲むように集まってきた。

 やっぱり、お昼ごはんを食べながらリリアリ談義とやらが始まるらしい。


「なんか、僕を沼に落とそうとしてない?」


「でも、片足突っ込んでるだろ? そしたら俺たちがやることは引きずりこむだけさ」


「怖い言い方しないでよ……」


「にしても、迫田ってアイドルとか興味あったんだな」


「確かに意外だったわ」


 悠真以外のクラスメイトとは、そこまで深い関わりはないんだけど、僕ってそんなイメージを持たれてたんだ……。


「晴輝はお姉さんからもライブ映像を布教されたみたいでな」


「リリアリ好きの姉とか羨ましっ!」


「家で語り放題ってことじゃん」


「いやいや、そんなに良いものでもないよ?」


 よく姉や妹がほしいと言ってる人はいるけれど、そういう人はどんな理想を抱いているのだろう……。

 現実だとだらしない姿だって見るわけだから、特別な感情とか湧くわけないし。


 まあ、みんなが言っているのは趣味が合う姉が欲しいってことなんだろうけど。


「で、晴輝が観たライブ映像ってどれなんだよ?」


「えっとね、このやつ」


 そう聞かれると僕はスマホをいじって、姉さんから教えてもらったライブ映像をみんなにも見せる。


「おお、迫田のお姉さん分かってるな~」


「自己紹介ソング! やっぱ最初はこれだよ!」


「あ~こんな分かってる家族がいんの羨ましいわ~」


 動画が流れると、みんなはすぐに何の曲か分かったみたいで、一気にテンションが上がりだす。

 これだけみんなが共感するってことは、教えてくれた姉さんもやっぱり結構なファンなんだなぁ……。



「おっ、これが俺の推しのユイちゃんっ!」



 動画の途中、かじりつくように観ていた悠真が突然大きな声を出す。

 そこに流れていたのは、高い位置でツインテールにした金髪の子が歌っているシーンだった。


「いやいや、お前この間のライブでアカリに揺らいでたじゃん!」


「そうなんだけど! やっぱりオタクに優しいギャルの誘惑には勝てないんだよ……!」


 この人が悠真の推しのユイさんなんだ。

 黄色がベースの衣装に身をつつんでいて、確かに歌詞や歌声を聞くとギャルっぽく感じる気がした。


「そういうみんなは誰が好きなの?」


「俺はこの子だな、ルカ! クールさが麗しすぎる……!」


 次のソロパートで映ったのは、青色がメインの衣装を着たルカさん。

 ショートカットの髪は綺麗な銀髪で。見た目からしてクールと言われるのも納得だ。


「いやいや、サクラコさんの年上の魅力! 大学生なのにあの包容力は狂わされるって!」


 パーマがかったピンク色の髪をなびかせていたのはサクラコさん。

 大人びた雰囲気の人がいるとは思ってたけど、少し年上なのか……。

 だけど動きや声からは、ふわふわした天然っぽいイメージを感じる。


「で、晴輝はレナちゃんだよなっ!」


「みんなの前で推しって言うには、ずいぶん知識が浅い気がするんだけど……」


「いいんだよ。最初は誰だってそうなんだから」


 そして、レナさんのソロパートも。

 やっぱりこうして聴き比べてみると、レナさんの歌にはどこか惹かれるなぁ。

 なんだかんだ僕もライブ映像を観入ってるときだった。


「そういえば、水無月さんってちょっとレナちゃんに似てるよな」


「えっ、そうかな?」


「水無月、ちょっとこっち向いてくれね?」


 突然、悠真がそんなことを言い出すから僕まで気になってしまう。

 けど、水無月さんは窓の外のほうを眺めたままで。


「水無月~? お~い?」


「お前と話したくないんだろ」


「えぇ~。俺そんな嫌われてんの」


「こっち向いてくれないんだからしょうがないか。確かに似てると思うんだけど……。晴輝もそう思わないか?」


「どうだろう……。でも、水無月さんもレナさんも綺麗だと思うよ」


「お、お前……。よく水無月の隣でそんな恥ずかしいこと言えるな」


「そうかな? 本当に思ってることなんだけど」


「晴輝はこういうやつだからなぁ……」


 結局、その日はずっと、水無月さんがこっちを向いてくれることはなかった。



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