33話 個展、34話 茶飲み
絵描きの話と茶のみ話。
33.個展
ふと、街角の画廊の前の絵に惹かれた。静かな印象の夜空と幻想的な狐が描かれた絵だった。どうやら、個展が開かれているようだ。
こういう個展に入った事はなかったけれど、思い切って入ってみた。自然と狐と狸が幻想的に描かれた作品が多かったが、最後の作品に目を剝いた。
(これって、友達の家の犬じゃない?!)
大きな黒い、3つの顔を持つ犬のうち、2つの顔が気持ちよさそうに眠っていて、一つは嬉しそうな顔でこちらを見上げている。よく見ると、サボテンとラディッシュも背景にさりげなく紛れていた。
「気に入りましたか?」
友達よりもいくつか若い感じの女性が声を掛けてきた。
「あの、もしかして……?」
どことなく友達と似た顔立ちの画家は、友達の妹さんだった。妹さんが居るのも初耳だったけど、画家だったなんて驚きだ。
「実家に帰ると、創作意欲が刺激されるんですよね」
そう言って妹さんは、友達そっくりの笑顔になった。
34.茶飲み
「妹さんがいたのね」
友人がそう言って、妹の個展を見た話しをしてくれた。あの子はふらりとここに来て、ぼんやりしていると思うといつの間にか帰っていたりする。
「ああ、この前仕事で通りかかりましたよ」
宅配のお兄さんがそう言った。今日は仕事が休みだから、私服だ。まだ見慣れなくて不思議な感じがする。
「狸と狐の絵の人ですよね?」
「ええ。妹はよくそのテーマで描いているわ」
「個展に入ったら、ここのわんちゃんの絵があったわ。背景にサボテンとラディッシュが居たから確信したのよ」
そういえば、妹は祖母の狸と狐がお気に入りだった。妹は山の中に住んでいる。多分、あの子たちと会いたいからだろう。
花瓶にとまっていた蝶々が、テーブルの上に舞い降りてきた。
「もしかして、描いてほしいのかもね」
友人がそう言って笑うと、蝶々は羽根を動かした。みんなそれを見て笑った。かわいい子。
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