第6話 告白
本日2回投稿となります。お読みいただければ幸いです。
私はアイさんのことを好きになっていた。
アイさんはかわいいし、よく気が付くし、優しい。それでいてしっかりしているし、アイさんとマイ、ミィの三人の中ではまとめ役らしい。
告白して恋人同士になりたいという気持ちが強くなっていた。
しかし、もし告白を受け入れてもらっても、私は裏切り者の汚名を着せられているので、もし、私が九頭一史と分かれば逮捕され、アイさんを悲しませることになってしまう。
本来なら告白と同時に私の過去を話すべきだが、正直私は恐怖していた。このことを話してアイさんに嫌われるだけでなく、上官に報告され、逮捕される可能性もある。
正直すごく悩んでいた。
アイさんに告白するためには私に着せられた冤罪を何としてでも解きたかった。
少なくとも冤罪であることを説明できるようにしたいと思った。
そのためにも情報収集に努めなくてはならない。
更にこの船を降りてからのことも考えなくてはならない。現代に生きていけるだけの技術・能力と、冷凍睡眠で落ちた体力を回復させることにも努めることにしよう。
そういうわけで、情報収集のための図書館通い、技能習得のための訓練ルーム、そして体力増強のための運動を欠かさないようにした。
訓練ルームでの技能取得だが、かなりの勢いで進めることができた。200年前とは比べ物にならないくらい自動化が進んでおり、機械の操作も変わっていたが基本の部分は変わっていなかった。かえって人間が判断する部分を機械が自動でやってくれるため、かなり楽になったといえる。
運動場はとてもとてもおもしろかった。見たこともないトレーニングマシーンが色々あり、また、各種格闘術を学ぶためのシミュレーションが用意されていた。
ある日格闘術の訓練をしていると(アイさんはトレーニングマシーンのエリアに行った)「お、頑張ってるじゃん」とマイからチャットが入った。
「ありがとう。マイ」「格闘術の訓練をしているのかい。俺と手合わせしないか。」「おう、やるか。」そう言って、我々二人は同じステージにログインした。
「それじゃ、これを受けてみな」いきなり殴りかかってきた。それをよけると懐に入り込み伸びた腕をつかんで背負い投げを決めた後、みぞおちに一撃を与えた。
「体力ポイント10減少、行動に負荷がかかります」システムからメッセージが流れた。
「げっ。いきなりきついな」「そっちが先に手をだしてきたんだろ」マイはニヤッと笑うと一言「よし、燃えてきた。」
それから30分ほどひたすら投げ、叩き、蹴りあった。とりあえず3勝2敗1引き分けで私が辛勝した。
現実世界に戻り、二人で健闘を称えあった。
「ヤタ、おまえなかなかやるな。男とは思えないな」マイは笑いながら言った。
「あはは、ありがとう。マイもさすがだよ。ほれ、タオルとドリンク」私は自分自身の分とマイの分を合わせて取ってきて、片方をマイに渡した。
「サンキュー。う~ん生き返る」ドリンクを飲みながらマイは言った。
「ところでさ、アイのことだけど」マイは突然切り出してきた。「お前たち付き合っているのか?」
「いいや、付き合ってはいない。告白したいとは思っているが」私は言った。
「アイのことが好きなのか」マイは言った。
「そうだ」私は言った。
「じゃ、告白すればいいのに。アイもお前のことが好きだぜ」マイは言った。
「いろいろ面倒を見てくれるので嫌われていないとは思うけど、告白を受け入れてくれるかどうか不安なんだ」私は言った。
「アイは間違いなくお前のことが好きだぞ。じゃなければあんなに四六時中お前にべったりついていないぞ」マイは言った。
「正式にお付き合いを申し込みたいのだが、私自身に事情があってな。告白に躊躇しているんだ」
「事情?ヤタは記憶喪失なんじゃないのか?」マイはびっくりしたような声で言った。
「実は完全に記憶がないわけではないんだ。詳しいことは話せないけれども」
「そうなのか」マイは言った。
「マイは私がアイに交際を申し込むことは賛成なんだな」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」マイは言った。
「マイは私の友人だし、アイの親友だろ」
「そうだな」考えるようなそぶりを見せながら答えた。
マイはだまって少し考えていた。そしておもむろに口を開いた。
「俺とアイとミィは一緒の日に生まれたんだ。一緒の育成所で子供の時は何をするのも一緒だったんだ。三人はみんなバラバラに見えて、みんな似ているんだよ」
「そうなんだ」突然何を言い出したのだろうと思いながら相槌を打った。
「好きな食べ物も、好きな遊びも一緒だったんだ」
「へえ」
「男の好みも俺もアイと同じなんだ」
「そうなんだ。えっ」突然何を言われたかわからなかった。
「なあ、実は俺もヤタのことが好きだ」
わたしは驚きで声が出なかった。
「ヤタは一緒にスポーツをやっていて楽しいし、一緒に遊ぶのも楽しい。なによりお前の笑顔が好きだ。俺とも付き合ってくれないか」マイは顔を赤くして私に言った。
「しかし」二股はまずいだろう。
「俺たちのこと、よく考えておいてほしい」
そう言って去っていった。
入れ替わりにアイさんが入ってきた。「ヤタ君、一緒に戻ろう~。どうしたの~ぼ~として~」
私の頭はいろいろなことでいっぱいいっぱいであった。
マイの思い
ついに言ってしまった。俺の顔が真っ赤になっているだろうか。なんかすごく熱い。
初めて見たときは、亡霊のように感じた。痩せた体に目が暗くよどんだ感じで、地獄の底からきた悪霊のような感じで少し引いてしまった。
優しいアイがいろいろ面倒を見ているうちに表情も柔らかくなり、体に肉もついてきて、たくましい感じになってきた。俺とも一緒に遊ぶ仲になった。
ゲームはまあまあの腕だったが、空戦ゲームでは、相当ハンデをもらっても全然勝てなかった。プロのシュミレータとは違い遊び用のものだが、とっても悔しい。
一緒に遊んでいて感じたのだが、どうも俺はヤタのことが好きらしい。特に笑顔が好きだ。
ニコってした時の顔がすごく優しい。
アイもヤタのことがすごく好きなようだし、ツンデレのミィもかなり気に入っているようだ。アイのことを相談されたついでに俺のことも言ってしまった。果たして愛を受け入れてくれるだろうか。
九頭の思い
マイに告白されてしまった。マイも一緒に遊んでいるうちに気の合う友達のように感じていた。ただ、つきあうとなるとそこまで考えていなかったというほかないだろう。それじゃマイは断るか。でも告白されたからかもしれないが、マイのことも気になっていた。
私は過去に女性と肉体関係はもったことがあるが、相手から迫られた結果であって、きちんと女性と付き合ったことはなく、自分から愛を告白した経験もなかった。アイのこと、マイのこと、私の秘密のこと、正直頭がぐちゃぐちゃであった。
さんざん悩んだ挙句、知り合いのいない私はミィに相談することにした。
「相談?なんで私があんたの相談を聞かなきゃいけないのよ」
まあ、そういうだろうな。さすがに無理だったか。
「悪かった。じゃ結構だ」踵を返して立ち去ろうとすると、後ろから服を引っ張られた。
「聞かないとは言ってないでしょ。とりあえず聞いてあげるから言ってみなさいよ」
それならばと、アイが好きなことと、マイから私を好きだといわれたこと、マイに対しても気に入った感情があることを伝えた。また、内容は話せないが告白するのに重大な支障があることも伝えた。
「それなら二人とも付き合ったらいいでしょ」こともなげに言った。「私たち三人は姉妹みたいなものよ。もし片方だけを選んだら選ばれた方が余計悲しむわよ。あなたも男だったら好かれている女の2人でも3人でも幸せにしてみなさいよ」
さらにこの世界のことについて説明された。言われたのはこの世界は男の数が少なく、一夫多妻は当たり前なんだそうだ。それに人工子宮から生まれたアイやマイは結婚の機会がほとんどないらしい。
「まず、男は人工子宮から生まれない。そうすると今いる男はだいたい名家と言われる人たち同士が結婚した夫婦から生まれるのよ。夫婦から生まれるのは男女ともに可能性があるから、そうすると名家同士が婚約の形で男が子供のうちに唾をつけられてしまうのよ」「へえ」
「そのため夫婦になるのはだいたい名家同士だからはっきり言って私たち人工子宮生まれの入り込む余地は無いのよ」
「名家ってなんだい?」
「この国ができたときからいる人たちの子孫よ。独立戦争の時戦った功績からこの国を支配しているの」
「そうなんだ」
「俺たち人工子宮で生まれたのは、15歳まで育成所で教育や訓練を受けていて、外に出ることはほとんどない。そうすると男と知り合う機会はほぼない。おそらくヤタを逃すと死ぬまで機会がないと思うの」
「そうか」
「アイもマイもそういう打算的なことは考えない子だけれど、他の女はあんたをそういう目で見ているのもいるから」
アイはそういう意味で守ってくれていたのか。
「でどうするの?」
「話はよく分かった。ただ、私の事情から、すぐに結論は出せない」私は言った。
「あなたの事情は何となく察しが付くわ」ミィが言った。
「えっ、なぜわかった」私はあわてた。ミィに私が犯罪者扱いされていることがばれていたのか。
「あなた、名家の出身なのでしょ。ということは婚約者、若しくは妻がいるということよね」
「?」
「あなたはその婚約者か妻が嫌で逃げてきた。ところが船が航行不能になり、この船に救助された。あなたは自分のことがばれたくないので、記憶喪失のふりをしている」
ミィはどや顔で言った。私はそのことについて何も答えず黙っていた。
「図星だったみたいね。いいわ、別に答えなくても。でも私たち誰もそんなこと気にしないわよ。確かに妻や婚約者がいるといろいろ面倒だと思うけど、お互い納得して付き合っているなら何の問題もないわ。とりあえず既成事実を作ってしまえば、あなたはぼこぼこにされると思うけど、私たちのことを妻か婚約者も無碍にはできないわ」
とりあえずミィから貴重な情報を得ることができた。私が戦争で犯罪者となっていることはいずれ話をしなくてはならないと思っている。でもアイが好きなのは確かだ。マイのことも憎からず思っている。二人に恋人として付き合ってくれるかどうか聞いてみよう。
秘密のことは秘密があることだけを話そう。それに二股なんて不誠実かと思ったが、二人を真剣に愛し、幸せにするため努力する意思があるなら、愛を貫くのも一つの誠実さだと知らされた。「ミィありがとう。感謝する」
「ところで、私とも付き合うのよね」ミィはすこし顔を赤らめていった。
「え?」
「どうしてもというなら私もあなたと付き合ってあげてもいいわよ」
「は?」
「ほんと3人もものにしようなんて、欲張りな奴」
「いや、その気はないのだが」
「何でよ!私美人でしょ。スタイルもいいし。優秀でもある。どうしてあんた惚れないのよ」
「惚れる理由がない。そのいう外見で惚れたりしない。相談に乗ってもらって感謝はしているがそういう対象ではない」
ミイはうつむくと黙り込んだ。
そして顔を上げると目に涙をたくさん浮かべ、突然大声で泣き始めた。
「うぁーん、うぁーん」それはもう大泣き。まるで小さな子供が思い通りいかず駄々をこねてなきだしたようであった。
「どうしたの~」「とうしたんだ」アイとマイがとんできた。
「あのね、ヤタがいじめるの」声をしゃくりあげながらアイに抱きつき言った。
「悪いヤタ君ね~。なんていじめられたの~」
「ヤタがね、アイとマイに告白するのに私にはしてくれないの」
「え!」「ほんとか!」
「何でそれを言う!」私は思わず言った。
「ヤタ君ほんと~わたしと付き合ってくれるの~」
「ヤタ、俺もいいのか」
「ああ、不誠実かもしれないが、二人とも好きだ。愛している。実は君たちに話していない秘密があるのだが、いずれ整理出来たら話をしようと思っている。そんな私の愛を受け入れてくれるだろうか?」
「「はい」~」
「私は?」ミィが鼻をすすりながら言った。
そのとき、「ヤタこっちこっち」マイは私の腕を引っ張り、物陰へと連れて行った。
「どうしたの?」マイはいった。
「ミイはもともと甘えん坊の泣き虫で、寂しがり屋なんだ。私たち3人は一緒の日に生まれて、ずっと一緒に育ってきたからよく知っているけど、あの子は普段は他人の前だと虚勢を張って男勝りで優秀な女を演じているが、本当の中身はまるっきり逆なんだ。」
マイは続けていった。
「あの子は優秀で、気もよくつくから将来の幹部候補生に選ばれる予定なのだけど、本当は私たちの離れるのがさみしくてしょうがないのよ。私たちがヤタと付き合うのを聞いて、自分もいっしょに交際すればずっと私たちと一緒にいられると思ったんだと思う。それに、当然あの子の中では美人で優秀な自分の申し出にヤタが断るなんて思っていないところに、ヤタが断ったうえ、いろいろ言われたから感情が爆発してしまったんだ」
マイは説明を終えた後、結論付けるように言った。
「まあ、そういうわけだから悪気はないんだよ、あの子のなかでは」
「でもな、好意もない女性と付き合うのはごめんこうむりたい」
「まあ、ミィはミィなりにヤタのことが好きなんだよ」
「いつもきつい言葉が返ってくるが」
「ミィはツンデレだから好きな子に意地悪したりきつい言葉を言ったりするのだよ。ようはまだ子供なんだよ」
「あんまりうれしくないな」
「で、相談なんだけど」
「なに?」
「ヤタはアイと俺と恋人になりたいんだよね」
「その通りだが」
「ミィも一緒に扱ってくれないかな」
「というと」
「ミィも恋人にしてほしい」
「それは勘弁してほしい。好きでもない女性に、更にもう2人も告白した女性がいるのに、あまりに不誠実だ」
「三人は一緒の日に生まれて、一緒に育った。できれば俺もアイもミィとは一緒にいたい」
「…」
「ミィだけ仲間はずれにはできないし、ミィもヤタのことが好きなら3人一緒に扱ってもらわないと、アイも私もこの告白断るしかない」
「えっ」
「ヤタ、愛してる。お願いだ」
「分かった。分かったよ」
「ヤタ君~」アイがよんだ。
「ほら行ってきな」マイは苦笑いをしながらいった。
アイのところに行くと、泣き止んだミィがアイに抱きついたままこちらをにらんでいた。
「ヤタくん~、アイからのお願いなんだけど~、ミィとも付き合ってくれるよね」
「分かりました。ミィ付き合ってくれないか」
「そう私とお付き合いしたいのね。じゃしてあげてもいいわよ」ミィはどや顔でいった。
何かとっても疲れた。それにしても、最後はグダグダになってしまったな、と私は思った。
あれよあれよという間に3人と付き合うことになった。とりあえず、その旨を副長に報告した。副長は、「ヤタを行方不明者リストで探したのだけれども該当する人物が見つからないんだ。本来は実家か婚家に連絡するべきなんだが、家が見つからないからな。お前家からも見捨てられたのかもな」とぼやきながら受け付けてくれた。
副長はいろいろ手続きをして私たち4人に小さいながらも部屋をくれた。それまでは2段ベットを広間に並べた場所にいたが、付き合う以上そういうことをする可能性があり、その場合他の者に影響が大きいということであった。
恋人との生活はというと、アイとマイとは普通に仲良くしていた。ミイは「1回ぐらいは仲良くしてあげないとかわいそうだから」と言って1度したら、「1度だけではかわいそうだから」といいだし、何回かしたところ、そのあとも当然のごとく混ざってきて、そのことを指摘すると泣きそうになったので流されるまま3人と仲良くしていた。
ミィの思い
私は幼いころは泣き虫で、寂しがりやだった。それでいつもアイとマイと一緒にいた。アイとマイと私は三人同じ日に生まれて、ずっと一緒に過ごしてきた。アイは面倒見がよく、ある意味みんなのまとめ役をしており、マイは体力もあり、喧嘩しても負けたことがなかった。私はというとアイとマイ以外の人となじめず、本ばかり読んでいた。
育成所を出て、私たちの多くが軍に入隊した。訓練兵課程のなかで私は成績が良かったため、幹部候補生に選ばれた。アイもマイもとっても喜んでくれた。私も人に認められた嬉しさの反面、アイとマイと別れなくてはならないことに大変な寂しさを感じた。
訓練課程の最終課程である訓練航海中、一人の男が私たちの班に入ってきた。
男なんてあったこともないし、話なんてとんでもない。そいつの指導を上官に指示されたが、どうしていいのかわからず思いっきり罵倒して立ち去ってしまった。
後から聞いたらアイがフォローをしてくれたみたいだ。私は人との接触が苦手で、ついきつい言葉を言ってしまう。まあ、そのおかげでみんな私を避けるから人と接することが少なくなってありがたい。
ヤタとは一緒に仕事をして、一緒に遊ぶ中になった。アイとマイもいるからとてもうれしい。ヤタは私がきつい言葉を吐いても苦笑いで流してくれる。そこをアイやマイがフォローしてくれる。私としては結構楽しい時間を過ごすようになった。
そのうちヤタがアイのことが好きになったらしい。アイもマイもヤタのことが好きなようだ。私の優秀な頭脳が一つのことを閃いた。三人でヤタと恋人同士になり、最終的に結婚すればずっと一緒にいられるのではないか。私もヤタのことは結構気に入っているし、まあ付き合ってあげてもいいだろう。美人でスレンダーなスタイルと優秀な頭脳を持つ私が付き合っていいといえば、ヤタも喜んで告白してくるだろう。
ヤタとは紆余曲折があったが、とりあえず告白してきたので、付き合ってあげることにした。
それから、恋人として一緒に生活していく中で、ヤタのこともアイとマイと同じくらい好きかな、ぐらいになった。
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