第5話 彼女
毎日18時に投稿しています。明日は日曜日なので、12時と18時に投稿いたしますので、お読みいただければ幸いです。
アイさんとはすっかり仲良くなっている。朝から寝るまで一緒だ。あと、マイとも一緒にいることが多い。アイさんと一緒にいると、後からマイが合流してくる。その後からミィまで一緒に来る。
「おはよ~ヤタくん」今日もアイさんが起こしに来た。のほほんしているようにみえるが、アイさんとってもしっかり者で世話焼きで、いろいろ私の世話をしてくれる。
アイさんの指導のもと身支度を整えて、食堂に行こうとすると、「おはよう、アイ、ヤタ」とマイが合流してくる。
「くそ、まだ眠いな」マイが言うと「遅くまであそんでいるからだよ~」とアイが答えた。
「そうは言うけど、ヤタのやつ、空戦ゲームめちゃくちゃ強いんだぜ。なかなか勝てないんだよ」
一応、元戦闘機乗りだからな。素人に負けないだろ。というか、勝てないものだから何回も付き合わされた挙句、目隠ししてゲームやらせるのは卑怯だろ。でも勝ったけどね。
「おはよう。アイ、マイ、あとおまけ」ミィが食堂にいた。おまけって私のことかい。
「おはよう~ミィちゃん~」「おはよう、ミィ」「おはよう…」
その後みんなで食事をとって、仕事に出た。修繕の仕事はなかなか面白い。壊れた個所を探すのは宝探しのようだ。生きるか死ぬか、いや、いつ死ぬかの日常の日々を送っていた私には考えられない落ち着いた日々だ。
戦場の狂気の中で私は死に狂っていた。仲間が次々死んでいく中で、私の心は何も感じなくなっていった。ただ、「ヤマト独立万歳」と言って死ぬ日を待っているだけだった。
「ヤタくん~仕事終わったよ~ご飯食べに行こ~」仕事を終えて、昼ご飯だ。4人で食べに行く。
そういえば私を見るほかの訓練生の視線が痛い。まるで肉食獣に狙われている草食獣のようだ。そう、戦闘機に乗っていた時に敵に狙われているときに感じた視線だ。
「ヤタくん~どこ見ているのかな~かわいい女の子でもいたのかな~」アイさんが微笑みながら言った。でもなんか少し怖い。
「いや、なんか見られているなって」「気にしなくていいよ~。私がずっと一緒にいるからね~」アイさんがにこやかに言った。何かから守ってくれているということだろうか。
食事の後はシミュレーターで訓練だ。ミィは別に士官候補の訓練があるのでここで別行動。私は空戦技術、操艦技術、機械整備とにかく学べるものはどんどん学んでいった。技術は生きていく力になる。アイさんもオペレーターの訓練をしている。ちょっと見せてもたが、過去の経験から言うと、その手順といい、判断力と言い一流と言っていいだろう。ゆくゆくは戦艦のチーフオペレーターになりたいそうだ。
シミュレーターでの訓練はとても実践的だ。まず、チュートリアルで基本的な技術を学び、そのあとレベルごとに課題が与えられ、クリアのスピードと完成度によって次のレベルに進む。自分のペースで進めるうえ、レベルアップや習熟度の向上によって達成感もある。また、行き詰った場合、ヘルプAIが相談に乗ってくれる。飽きたら、別のコースを選択して、気分を変えることもできる。本当によくできている。
その後は図書館で調べ物をしたり、運動場で鍛えたりした。アイさんも一緒に行く。マイは運動場でよく一緒に訓練した。彼女は格闘技や各種武器の訓練をしていた。マイは陸戦兵を目指しているそうだ。まあ、アイさんはトレーニングマシーンで運動するぐらいで、格闘術の訓練はしなかった。格闘技はマイと訓練をすることが多かった。
格闘技の訓練はシミュレータで行われており、バーチャルリアリティが取り入れられている。本気で殴り合っても痛み一つないし、武器で攻撃しても傷一つつかない。ただ、体力ポイントが減ったり、攻撃がヒットすると体の一部、例えば腕や足が動かせなくなったりする。最終的に体力ポイントが0になるか体が動けなくなるかで勝敗が決まる。
全てが終わって夕飯(?)を食べると、後は寝るまでゲームしたり、遊んだりしている。その時にはミィも加わり、4人で遊ぶことが多かった。
アイさんはゲーム中ニコニコしている。そしてかなり強い。的確な手順で勝ちをさらっていく。マイは頭に血が上りやすく、考えるより感で勝負するので、波に乗れば勝てるが、外すとボロボロに負ける。ミィは負けず嫌い。負けるとすごく悔しそうにして、勝てるまで勝負を挑む。
マイは空戦ゲームを楽しむことがある。シミュレータに入って模擬空中戦をする。マイは動体視力もよく操縦技術もけっこう高いため、なかなかうまい。まあ、元戦闘機乗りで激戦を潜り抜けてきた私にはまったくかなわないけれども。
勝負が終わるとマイは悔しそうにしながら、もう一戦といってくる。何回か付き合ってあげて、勝てずにふてくされているマイさんを、私は健闘を称えながら慰める。そうするとなぜだかマイが顔を赤らめ、言葉に詰まる事がしばしばある。こっちもなんだか気恥ずかしくなって黙ってしまう。するとアイさんがニコニコしながら寄ってきて、私たち二人の手を引いてミィと合流する。するとマイが調子を戻して話をはじめ、ミィがそれに突っ込み、アイさんがニコニコしながらそれをフォローするような流れが始まる。
本当にアイさんにはお世話になっている。マイともすっかり仲良くなった。
何かお礼をしなくちゃと思い、あることを思いついた。
ミサ軍曹に相談したらOKをもらえたので、実行することにした。
夕食後、アイとマイを仕事場に誘った。すると当然のようにミィもついてきた。まあいいか。「ヤタくん~仕事終わったのにどうしてここにきたの~」アイさんが聞いた。
「みんなこれを着てくれるかな」みんなに宇宙服を配った。
「ちょっとまさか外に出る気じゃないでしょうね」ミィが詰め寄ってきた。ミィは三人の中で一番背が高く発育もいいので迫られるといろいろ困る。
「そうだよ」私は答えた。
「外は危険よ。そんなことわかっているでしょ」ミィは私をにらみつけながら言った。
「百も承知だよ。でも危険と言っても死んだり怪我をする可能性は確率的にはほとんど0に近い。その代わり、船の中では見られないものが見られるよ。ミィはやめとくかい」
「ヤタくんが誘ってくれたんだもん。私はいく~」「面白いものが見られるんだろう。俺も行くよ」ミィは黙って考えていたが、「アイとマイが行くなら私も行く」としぶしぶ言った。
外は星が瞬いていた。360度星の光が満ちていた。「わあ」「すごい」「なんなのこれ」三人は一言言って黙ってしまった。恐らく外に出た解放感と星の光に感動しているのだろう。
360度の宇宙空間にいると、心が宇宙に溶けていき、自分と宇宙が一体となるような感覚になる。それは恐怖ではなく、精神の開放そのものでようであった。満天の星々の明かりは全身を照らし、未知のエネルギーが全身を駆け巡る感覚がして、「阿字観」を体験できる。
どうでもいいが、アイさん語尾が伸びなかったな。
この星空は私にとって懐かしい思い出だった。航宙士学校の時、命綱一本で宇宙に放り出された時、最初は恐怖だったが、慣れてくるとこの星の光に包まれた世界に感動した。
あの時航宙士を志して本当に良かったと思ったものだ。
三人とも船の中しか知らないので、絶対に喜んでくれると思った。
しばらくして、「ヤタくんありがとう」とアイさんが満面のほほえみを浮かべながら言った。
その顔を見たとき、心臓が打ち抜かれたようだった。
ああ、私はアイさんに恋をしているのだな、とそのとき私は自分の思いを知った。
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作者としてはかなり気になります。




