第33話 禍を転じて福と為す
あともう一話あります。お読みいただければ幸いです。
私はベッドの上で目覚めた。腕には点滴が打たれていた。
「大丈夫ですか?」九頭明が心配そうに顔を覗き込んだ。
「相変わらず、手足がしびれて動けない。おなかも痛い、トイレに行きたい」息も絶え絶えに話した。
後ろにはあみ姉がまいに怒られていた。
「お姉ちゃん、いつも私が言っていたでしょう、ご飯に薬入れるのをやめろって。一史を殺すところだったんだよ」
いや、お前分かっていて逃げたんだろ、私にも教えろよ。
「200年ぶりだから忘れていたの!まいだって今朝そのこと私に言ってくれればよかったのに」とあみ姉は恨み節になっていた。
「私も200年ぶりで忘れていたの!ただお姉ちゃんのご飯は食べちゃダメという情報だけ強く残っていて、訳が分からなかったから様子を見たの!」
「ひどいわ、私のご飯を食べたらダメなんて、お姉ちゃん悲しい」
「実際、一史がひどい目に遭っているじゃない!」
姉妹は言い争いをしていた。
「一史様、今日は動けないみたいですね。わかりました。今日の行事はすべてキャンセルにしておきます」と明は言った。
「本当にすまない、今日はどんな予定だったんだ?」
「ああ、例の冤罪の件を記者会見で発表する予定だったのです。まあ、余計な横やりが入らないように私達御三家がかかわっているマスコミにのみ発表する予定だったので、中止にそんなに手間はかからないです」と明はにこやかに言った。
「本当にすまない」
「大丈夫ですよ」と言ってから「あと今一史様はおしめをしていますからいくらでも漏らしてください。あの二人に変えさせますので」と言って、二人のところに行き話をしていた。
私は情けなさで思わず涙が出てしまった。いい年した男がおしめをしていて、そこでしろと、さらに知り合いにそのおしめを変えさせるなんて、そう思ったら急に差し込みが来て、我慢する間もなく盛大に漏らしてしまった。
その音を聞きつけた二人が興奮したように「大丈夫、二人でおしめ変えてあげまちゅからね」「うふふ、全部出ましたか?良い子でちゅね~、さあおしめを変えまちゅよ」と言って二人はおしめに手をかけた。
私はあまりの恥ずかしさに泣き出してしまった。
プレス会場にて
「本日のプレス発表は中止になったからと言ってこのビルの爆発物チェックをやり直すのと警備員を多量に配置する必要あるのかね?」九頭家の警備員Aが盾と銃を立て掛けて言った。
「そうだよな、こんな大人数でやることないと思うよな」同じく警備員Bが言った。
「なんでも明日に延期になったので、時間が空いたので再度隅々まで点検し直すそうだ」警備員Cが続けて言った。
「まあ、上の方は心配なんだろ。なんか重大発表をするらしいからな。テロでも起こされたらと言うことらしい」
「テロねえ、まあやるとすると記者会見する予定の時間だった今時分にやるかな」警備員Aが何気に言った。
その時、軍用車両がビルの前に泊まり、30名ばかりの武装したテロリストたちが乗り込んできた。
「おい、本当に来たぞ、警報を鳴らせ!」
ビル全体に警報が鳴り響き、一回に警備員が集まってきた。
警備員と言っても、元軍人や元軍人が教官として教えた者達で構成されており、銃と複合金属で作られた盾で武装していた。
この盾は銃は同然、レーザーも手りゅう弾さえも防ぎきるかなり固いもので、更に軽量と現在ヤマトが誇る最高レベルの盾だった。
九頭家の警備員たちはたちまちテロリストたちを包囲、無力化し逮捕していった。
「放しなさい!私たちにこんなことをしていいと思っているの!」
「汚らしい手で触らないで!私は名家の出身なのよ!」
テロリストたちは口々に叫んでいた。
「出身なんぞ知らん。お前たちはテロリストだ。証拠の映像もある。あきらめることだな。極刑は覚悟しておけよ」警備隊の隊長は冷徹に彼女たちに行った。
女たちは何やら泣きわめきながら連れていかれた。
「すぐに当主様達に連絡をしろ。すごいものが釣れたとな」と警備隊長はニヤリとしながら言った。
九頭家本宅にて
本当にひどい目に遭った。夕方近くになって、やっと手足のしびれも取れ、腹痛も収まってきた。起き上がることができて、トイレにも自分で行けるようになったので、おむつは外した。
あみ姉たちがすごく残念そうな顔をしていたが、もうあんな恥ずかしい思いは嫌だ。
そんなこんなしていたら、明さんがやってきて「具合はいかがですか?」と尋ねてきた。
「ええ、何とか回復しました。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、飛んでもありません。こちらこそ我々のご先祖様達がとんでもないことしまして本当に申し訳ありませんでした」と言って誤ってきた。
「いえいえ、あみ姉とまいは家族みたいなものですから。私の責任もあります」と言って謝った。
「家族みたいじゃなくて家族でしょ」あみ姉がふくれっ面になりながら私に言った。
「あみ姉、少しは反省しなさい」私が言うと、「は~い」と言ったが、やはり少し不満そうである。
「それはそうと今日プレス発表を予定していた場所がテロリストたちに襲われまして」と明さんが言い出しました。
「えっ、大丈夫だったのですか?」思わず聞くと
「会場の再点検をしているときに襲ってきまして、ちょうど警備員たちがたくさんいましたから誰も怪我をすることなく、全員を捕らえることに成功しました。いま、彼女たちからいろいろ情報を吐かせています。背後関係も洗っていますのでこれで反対派も壊滅でしょう」と何やらうれしそうな声で言った。
「まあ、無事で何よりです」
「今日一史様が倒れなければ警備員の数も少なく、ももっと苦戦していたでしょう。本当にあなたは強運だ」とにこやかに言った。
強運?かもしれないな。いくつもの激戦を潜り抜け、更に特攻に行って生き残ったし、冤罪で逮捕されることなく好きな女たちと開拓生活をして、いつの間にか国家を築いて、200年前に別れてもう会うことの無いと思っていた幼馴染とも会えたし、今回みたいな危険もスルー出来たし、かなりの強運だな、と私は心の中で思った。
翌日には、予定されていた私の冤罪に対するプレスでの発表も終えた。かなり詳細な資料も一緒に配られ、私の冤罪が確実なものと印象付けられた。
プレス発表に呼ばれたマスコミはこぞって一面トップ、若しくは最優先トピックスとして取り上げて、国民にかなりの反響を得た。この発表を受けて歴史学会や機械工学会など各種学界から個別に声明が出される事態となった。
ただし、軍部からは何のコメントもなかった。
また、私の評判も、それまでは裏切り者でヤマトに敵対する犯罪者から、冤罪に苦しめられた被害者とがらりと評価が変わり、世間の印象もだいぶ変化した。
私には取材の依頼が多数寄せられたが、すべて断った。なぜならそろそろミズホに帰る予定だからだ。
ヤマトでの滞在はいろいろなことがあった。さあミズホに帰ろう、と用意をしていると、あみ姉たちも何やら用意をしている。というか、トラックを何台も用意し、宇宙船になにやら運び込んでいた。
「何をしているの?」
「ン?移住の準備よ。色々もっていかなくてはならない物があるからね」とあみ姉はこともなげに言った。
「一緒に来るのは良いけど、なんでそんなに荷物が必要なんだい?」
「私たちの体は機械的に合成しているの。さらに一部は機械化しているしいろいろメンテナンスが必要なのよ。そんなに頻繁に必要なわけではないけど、そっちに永住するから必要でしょ?」
「そうなんだ。船の空きスペースが足りるかな。何隻か呼び寄せようか?」
「ううん、大丈夫。九頭家の方で船は用意してくれるって」
「わかった。なんか手伝うことがある?」
「特にないわ。一史は自分の準備をしていて」そう言ってその場から立ち去った。
ふたりともミズホについてくることになったのだが、何やら大量の荷物を運びこんでいる。まあ、あみ姉たちは科学者だし、いろいろな機材が必要なことはわかるが、一抹の不安を感じるのはなぜだろうか。ミズホに害をもたらさなければいいが、いや、あみ姉たちがそんなことをするはずないだろう、木の所為、気の所為と自分に言い聞かせた。
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あともう一話投稿します。最後までお読みいただければありがたいです。
また、休日出勤が連続でありまして、先に予告した転生ものですが、連休明けの9月末にでも投稿できたらいいなと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。




