閉話7 クリス人達の野望
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エリーの私室にて
「マリーさんよく来てくれました」エリーは30台後半ぐらいの薄いブラウンの髪をした女性に言った。
「中佐殿のお呼びですから」
「やめてください。公の場ならいざ知らず今は二人しかいないのですから。それにクリスではあなたの方が中尉で上官だったじゃないですか」
「何をいいます。総統の妻の一人で人工クリス人では初めての佐官、更にファースト10の妻たちは皆あなたの教え子兼部下でしょ。このミズホではクリス人一番の実力者じゃないですか」
「ファースト10?」
「総統配下の最初のヤマト男子10人のことをいうのですよ。この前のヤマトとの戦いではセカンド8と共に桜花搭乗員として志願した勇者たちでしょう」
「セカンド8とはイムから来た少年たちのことですか?」
「ええ、この18人はこのミズホの最初の男たちですから。おそらく将来この国が発展したらクリスの名門のような存在になるでしょう」マリーは興奮したように続けた。
「そして彼らの妻はみな人工クリス人です。この国は我々人工にとって希望の国なのですよ。そしてあなたはその国のクリス人代表だ。敬語ぐらい使います」
「マリーさんはクリス本国で人工では稀有な中尉に昇進した軍人でしょう。私もあなたの名前は知っていましたから。まさかイムで捕虜になっているとは思いませんでした」
「名門出のひよっこの無理な作戦に従軍させられ、更にひよっこたちが逃げ出すために捨て石にされたのです。私は彼女たちが逃げた後、部下とともに降伏して捕虜になりました。このままクリスに帰ることもなく、イムでぼろ雑巾のようにこき使われて死ぬと思っていたのですが、運よくミズホに来ることができました」
「大変でしたね。我々人工は天然にとって便利な道具並みの意識しかありませんからね」
「私もそれが当たり前と思っていましたが、この国に来ていろいろなことを知りました。恋もすることができました」
「あら、それじゃ男性とお付き合いを」
「はい、私とキャサリン少尉、いや中尉とフレデリカ中尉が一緒に付き合っています。彼からプロポーズもされたので総統の許可がいただければ結婚する予定です」
「お相手は誰なんですか?」
「ヤマトから来たばかりですが、毒島伍長です」
「ええっと、おいくつなんですか」
「17歳と聞いております」
たしかマリー大尉は30代後半ぐらいで、キャサリン中尉、フレデリカ中尉もベテラン将校で30歳過ぎていたはず。一瞬騙されているのではと思ったが、おそらくそんなことは旦那様が許さないだろうし、そもそも騙す理由がない。
「それはおめでとうございます。私からもお祝い申し上げます」
「ありがとうございます」マリー大尉は嬉しそうに答えた。
「実はマリーさんにお願いがありまして」エリーは言った。
「私にお願い?」
「はい、実はこの国でのクリス人の件についてです」恵理は立ち上がって、まるで演説するようにしゃべり始めた。
「ミズホは建国以来、男はヤマト人、女はクリス人で占めていました。いえ、ヤマト女性もいましたが、すべて総統の妻ですから、総統以外のヤマト男の相手はクリス女が占めていました。そのため、この国はヤマトとクリス人それも人工クリス人の連合国家として成立してきました。ところがヤマトからの技術者等の派遣が行われ、それに伴いこの地の男と恋仲になって多くのヤマト人女性がそのままこの国に住み着くようになりました。我が国は脱走兵と亡命者の国ですから移住を希望する人を受け入れないということはできないのは分かっているのですが、数少ない男がヤマト女に持って行かれると、我々人工クリス人の立場が脅かされるのではないかと危惧しています」エリーは一息つくと、再び話し始めた。
「あなたは、クリス軍内で顔が広い。できるだけ多くの人工クリス人がミズホで婚姻できるよう尽力してほしいのです」
「でもどうやって?」
「ヤマト人男性はほぼ全員訓練兵として、ミズホ軍で訓練を受けます。訓練中になるだけクリス人と仲良くさせ、結婚させてしまうのです。あなたをミズホ軍訓練総監に任命します。ヤマト人の新兵訓練を取り仕切る役職です。そこでクリス人との出会いを工作するのです」
「分かりました。お任せ下さい。ヤマト男を一人も逃さずクリス人と婚姻させます」
「その意気です。よろしくお願いいたします」
しばらくして、九頭はエリーに聞いた。
「訓練終了後のヤマトの男の子がすぐに結婚することが多いな。確か、彼らは結婚にトラウマをもってこの国に亡命してきたはずなのだが、どういうことなんだろう」
「クリス女の良さに触れて、すっかりトラウマを克服できたのではないでしょうか」
「そうか、まあいいか。トラウマが克服できたのならそれはそれでよいことだ」
「その通りです。この国では、ヤマト男とクリス女という組み合わせが一番自然なのですから」
「あはは、まあ確かにクリス女性なしにはこの国は成立しなかったからな。男の子たちに嫁さんをもらうことができなかったしな」
「はい、この国はヤマト人とクリス人の両者によって作られた国ですから」
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