閉話6 ヤマト連邦統合本部での会議
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連邦統合本部はヤマト連邦の政治軍事を統括する最高議決機関である。桜井良子は大きなビルの前で立ちすくんでいた。母はここで働いているが、自分自身が来たのは初めてだ。
中に入り母を訪ねると、事務局にいた。
「いらっしゃい。早速だけど総司令に会ってほしいのだけど」母はいった。
母に連れられて立派なドアのある部屋に入った。
奥には一人の女性がいた。「あなたが桜井中将の娘さん?初めまして、私は佐藤仁美、階級は大将よ」
「は、自分は桜井良子少佐であります」
「実は聞きたいことがあるの。あなたの夫の桜井守の件なのだけど」
「守の行方が分かったのでしょうか」私は思わず身を乗り出してしまった。
「今回の大量失踪事件は彼と仲間たちがかかわっているみたいなの」
「えっ」
「守君らが行方不明になった事件、警察では逃亡者になったと思って放置していたみたいね」
逃亡者というのは今の生活に嫌気がさして逃げ出して、宇宙に飛び出した者をそう呼んでいる。だいたいが世間の厳しさを知って逃げ戻ってくるか、事故にあって死んでしまうかだが、一般にわがままな行動としてとらえられ、警察では放置するケースが多い。
毎年何人か出ているのは知っているが、守たちは25人も一度に行方不明になったというのに何もしていなかったのかと、警察のやる気のなさに桜井良子は怒りが増した。
「彼らのうち18人の所在が分かっているのよ」
「どこなんでしょうか」
「サルガッソーの中にあるミズホと名乗る武装組織にいるみたい」
「そこに捕らわれているのですね。すぐに助け出さないと」
「そうじゃないの。そこで組織の構成員として生活しているみたい。ちなみに桜井守は戦闘艇の搭乗員になっているね」
「どういうことですか」そういうと、大将はモニターを見せてくれた。
モニターには、ブログが写し出されており、たくさんの男の子たちが写っていた。
そこには戦闘艇に乗って訓練をしている写真や、戦闘艇の前で仲間たちと笑っている写真、見たことのないような広い農場で働いている様子や食事をみんなで食べている写真、みんなで菓子を食べながら仲間で騒いでいる様子などが写されていた。
そのなかに怒りで気を失いそうになった写真があった。何人の女たちが守にすり寄っている写真が何枚もあり、極めつけは守とその女たちの結婚式らしき写真もあった。
「これは何ですか」
「これは行方不明になった少年たちがブログに乗せている写真よ。これが男の子たちの間で人気になっているらしくて、今回の事件を引き起こす原因になったらしいの」
「すぐに連れ帰らなくては。場所はサルガッソー宙域なのですか。サルガッソー宙域のどのあたりでしょうか」私は焦っていった。
「サルガッソーの外に廃棄コロニーがあってそこが出先機関になっているようなの。それで今警察が犯人を捕まえるため、警察艇を送っているわ」
「それではすぐに戻ってきますね」
「ところが、すでに警察は4回人員を送っているのだけどすべて連絡を絶って行方不明になっているのよ」
「それはつまり…」
「おそらく全滅させられているわ。通信を送る間もなく、若しくは妨害されているわ」
「軍を送るべきでは」
「警察が拒否しているの。軍は余計なことをするな。我々の仕事だということで。それに我々が行けば戦争になっちゃうでしょ。それは避けなくちゃね」
「……」
「しかし、もう4回も失敗しているでしょう。上の方もいい加減しびれを切らしていて、緊急対策会議が開かれたの。それで今回も警察で手に負えなかった場合、軍の方で対応がまかされることになったわ」
「今回、警察は最大戦力を送り込むこととなっているのだけど、おそらく失敗するわね」
「それはどうしてでしょうか」
「戦力が違いすぎるものの。軍の情報部の調査によると彼らはイムとクリスと国交を結び、武器の供与を受けているわ。警察がいかに数を集めても、軍の兵器にはかなわないわ」佐藤大将はそう言ってから、桜井良子少佐に尋ねた。
「それであなたに聞きたいのだけど、九頭一史大尉はあなたが拾ったのですって」
「はい、私が訓練艦の艦長として航海訓練中、桜花に乗った九頭大尉を拾いました。最初は彼だとはわからなかったうえ、本人も記憶喪失で、逃亡者として対応いたしました。ところがたぐいまれなき戦闘能力に失われた過去の技術などを持っており、訓練航海で大いに活躍したため正規軍人として任用しました。その直後、そのとき懇ろになった訓練兵と一緒に旅行に行きました」桜井良子少佐は思い出すように続けた。
「その後私の妹が、彼が九頭一史大尉であることを突き止め、兵2名に迎えに行かせたところ、しばらくして迎えに行かせた兵も含めて全員から退職届が届きました。戦闘艇を持ち逃げした件で探索しようとしたところ、守たちの行方不明事件があり、うやむやになっておりました」
「その九頭大尉がその武装組織のリーダーらしいのよ。この写真を見て」
「あっ、たしかに九頭一史です。それに周りいるのはその時の訓練兵で間違いありません」
「ブログでは、ミズホ王国総統を名乗っているらしいわね。つぎはこれを見て」
「これはなんですか?」守たちがわいわいと何かを作っている写真だ。
「桜花みたい」
「桜花ですか?」
「武装組織は独立戦争の時ヤマトが使用した特攻兵器桜花を作成し、保有しているわ。そしてその搭乗員は…」
「守たちが搭乗員なのですか」
「おそらくはそうだと思われるわ。彼は200年前の亡霊よ。血で血を洗う独立戦争を戦い、最後に裏切り者として死んだはずの男が現代によみがえってしまったのよ。彼の中ではまだ戦争をしているのかもしれないわ」
「それじゃ守たちは」
「軍で侵攻すれば、彼らは桜花搭乗員として出撃させられ死ぬわ。おそらく軍にも多大なる被害が予測できる」そう言って、佐藤大将は桜井少佐を見つめていった。
「それでお願いがあるの」
「なんでしょうか」
「警察の作戦が失敗した後、あなたにミズホに行ってほしいの」
「私がですか?」
「あなたが九頭を助けた。また、あなたが訓練した兵が彼の周りを固めている。話をするなら適任だと思うの」佐藤大将は真顔で言った。
「おそらくかなり危険な仕事になるわ。何度もこちらは攻撃を仕掛けているわけだし、行ったらすぐに撃沈される可能性もある。でもあなたならきっと大丈夫だわ」
「行きます。彼に示せる条件とこちらが譲れない線を確認させてください」
「譲れない線は男子たちの返還、支配領域の我が国への帰属、関係者全員のわが軍への出頭、そして譲歩できるのは関係者の助命ね」
「相当厳しい条件だと思います。この条件だと恐らく物別れに終わることが予想されます。もし条件を飲まなかったらどの程度まで妥協してよろしいでしょうか。最低でも独立の承認と関係者全員を罪に問わないことの確約が欲しいところです」
「一切妥協点はないわ。何としてでも説得して」
「この条件を飲まなかった場合は戦争ということでよろしいでしょうか」
「それはあなたが判断することではありません。とにかくこの条件を飲ませなさい」かなり強い口調で佐藤大将は言った。
一瞬良子少佐は言葉に詰まったが「了解しました。警察の作戦終了後、サルガッソーに赴きます」といった。
「よろしく頼むわね」佐藤大将はにこやかに言った。
「良子ちゃん、大変な任務だけど無事成功させれば昇進間違いなしよ」
母が最後に言った。
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