閉話5 マイの困惑と少年たちの課外活動
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時は少しさかのぼる。
マイはひとりお茶を飲んでいた。アイは総統の秘書役、ミィは事実上の宰相役であちこち飛び回っており、ユウとユアは空戦指揮官兼教官として新規に配属された隊員の訓練を行っていた。
ヨーデル艦長兼艦隊指令のエリーは、イム帝国からクリス人と一緒に売却されたイムに拿捕されていたクリス軍の戦艦の補修と完熟訓練を行っていた。
ところが陸戦指揮官のマイは現状やることもない。兵士を集めて陸戦訓練をしたいところだが、待機要員として屋敷にとどまるようお願いされているため、動くに動けない状況である。
クリスからの視察官も来るらしいし、まあ忙しくなる前に少しのんびりするか、と思っていた。
そこに突然「マイ少佐、お話があります」とヤマト人の男の子が3人やってきた。
「なんだ、何かあったのか?」
「桜花を作りませんか?」最近イムから来た男の子がいった。
「桜花?」
「だってここは九頭大佐の国なんですよね。なら桜花を作るべきでしょう」
言ってる意味が分からない。「どういう意味なんだ。桜井伍長、齋藤伍長」
残りの二人に問いかけた。
「マイ姉さん、こいつは俺たちの同級生で矢作というのですが、戦史オタクなんですよ」
「それでこの国が兄貴、いや九頭大佐の国だと知ったら、絶対に桜花を持つべきだと言い出したんですよ」
「だって独立戦争で桜花の搭乗員だった九頭大……総統の国なんですから桜花があるべきでしょう」
「うーん、旦那は桜花をあまり好きではないんだよね。前にミィがその件を話したら嫌な顔をされたからな」
ミィは戦力の不足を補うため、桜花を作ったらどうか聞いたんだが、そんな非人道兵器に頼るくらいならみんなを連れて奥地に逃げると言っていた。このサルガッソーの奥はまだ未探検でまだ未発見の星系がある可能性が高いらしい。
まあ、サルガッソーの内部は相当広大だから星系がもう一つぐらいありそうなのだけど。
「そんな、それじゃ直接総統に話をします」矢作はいまにも駆け出していきそうだったが、齋藤と桜井が羽交い締めにしてとめた。
「姉さんが言って駄目だったんだ。あきらめろ」「やだ、絶対にあきらめない。桜花の必要性を総統に30時間も話せば納得してもらえる。はなしてくれ」
勘弁してくれ。旦那は忙しいだぞ。仕方ないな。
「分かった分かった。廃品置き場の物資は使っていいから空き時間に作ってみな」
「ほんとですか!ありがとうございます。それじゃ廃品置き場のそばにあるバラックを使っていいですか」目を輝かせて言った。
「ああ、いいよ。旦那には時を選んで伝えるから、この件は口外しないこと。いいね」
「了解しました」矢作は言い、桜井と齋藤は顔に手を当てて、あ~あという顔をしていた。
「遠くに見えるあのバラックはなんですか?」
ミローナイトさんが言った時、マイはヤバいと思った。あそこにあるもの旦那に言うのを忘れていた、それに例えおもちゃと言っても桜花を見せるのはまずいよな、間違いなく旦那に叱られてしまう。むりやり笑顔をつくり「あそこは単なる物置です。見に行っても面白いものはないし、危険なものもありますので止めておきましょう」と言った。
「ぜひ見たいのですが」ミローナイトさんはいったが、何とか説得して諦めさせた。
あ~危なかった。
バラックにて
「さあ、桜花を作るぞ」矢作が言った。ここには同級生18人が集まっていた。
「材料はどうするんだよ」
「そこにあるスクラップ使うんだと」
「工作機械はどうする」
「マイ姉さんが適当に使っていいって」
「誰が工作機械を動かすんだよ」
「俺そういうの得意」
「設計図はどうするだよ」それに矢作が答えた。
「これをみてくれ。俺の考えた最強の桜花だ。形式は設計図の残っている後期の桜花をモデルに、俺の考えうる最高の装備を備えているんだ。桜花は過去に試作機も含めて五四式まで作成されていた。俺はそこに改良を加え、大気圏脱出から長距離の宇宙空間移動が可能、対戦闘艇用の武装も装備し多少の攻撃ではびくともしない装甲を持っている最高の機体だ」
「桜花って爆弾を先頭につけているんだよな」
「あまり装甲が厚いと特攻した時爆発しないだろ」
「核融合爆弾なら関係ないだろ」
「核なんてないぞ」
矢作はちっちっと首を横に振った。「複合反応弾を使う」
「複合反応弾?おいおいそんなぶっそうなものどこから手に入れるんだ」
「それが手に入るんだな。なあ、水口」矢作が言った。
「ああ、第2惑星にいるスミさんに言ったら、材料の賢者の石とヒイロガネ、あと共鳴石もくれた」
「なんで第2惑星になんか行ったんだ」
「僕は鉱業に興味があって、九頭総統に相談したらスミさんを紹介されたんだ。いろいろ教えてもらって、すごくお世話になっているよ。そこにいるお姉さんたちも親切にしてくれてとっても優しいよ」
「おまえ、年上でもいいタイプか。なんで逃げたんだ」
「あいつらは僕を欲望の掃け口としか見ていなかったからね。スミさんたちとは全然違うよ」
「これで複合反応弾の材料はある。複合反応弾って材料の入手が難しいだけで、作るのはそんなに難しくないからね。実際危険だから材料のまま厳重保管しておくけど」
「それがいい」
「そうしよう」
「機体になんか書くか?」
「我々18人みんなで作っているから、18と書こう」
「まあ、いいんじゃないか」
「これ、俺たちのブログに乗せてもいいか?」
「総統はブログなんか見ないからな。いいんじゃないか」
「これはまたパズるな」
「この前はなんでバズったんだっけ」
「妻たちと水遊びに行った時の写真だな」
「お前なんてものを載せたんだ!」
「コメントの返しがすごかったぞ」
というようなやり取りをしながら桜花を作っていった。気の置けない男ばかりで同級生、それががやがやとしながら桜花を作る。まるで文化祭の出し物を作るように楽しい時間であった。
デジマコロニーにて
「どうやった。様子は」
「お嬢様、現在ここには私たちしかおりません。口調を改めてもよいかと」
「あはは、すっかり商人言葉が癖になってしまったよ。クリス人たちはどうだった」「恐れていましたな」
「ふ~ん、何とは聞かないよ。で九頭さんをセバスはどうみた」
「一見穏やかで優しく、また指導力もあります。戦闘能力も高いようです。しかし…」
「どうしたんだい」
「気を悪くされないようお願いしたいのですが、あの男危険です」
「危険とはどういうこと?」
「よほど数、身近で死を見てきたのでしょう。おそらく自らも死の寸前まで経験しているように見られます。服についたほこりをつまむように平気で人を殺すでしょうし、自らも死ぬでしょう。恐ろしく危険です」
「あはは、すごいね。セバスにそう言わせるなんて。でもね、私たちの悲願を達成するには彼の狂気が必要なんだ。我らの悲願を達成し父様母様の復讐を果たすためにもね」
「分かっております。我らの悲願のために」
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