第42話 耳
飲み会でのブラックジャックは、かなり楽しいです。
「さて、昼飯まで軽く、トランプでもするか?」
どこから取り出したのか、トランプを手にした悠人の言葉に頷く。
「お、良いね。何する?」
「そうだな…。ブラックジャックなんてどうだ?チップとかは設定しないで、5回毎にディーラー役が交代で。」
「それなら途中で時間になっても、直ぐに終わらせる事が出来るな。うん、ブラックジャックをやろう。」
現在時刻は11時25分。例え飽きたとしても、その頃には1階に下りて、少し待てば昼食が出来るという時間帯になっているだろう。
「そんじゃ、まずは俺がディーラー役で良いか?」
トランプを持っている悠人から、ディーラー役をするようだ。既にカードを切り始めている。
「良いよ。確かディーラーは16以下はヒットしないといけなくて、17以上はスタンドするんだったよな?」
頷きながら、一応ルールの再確認を行う。トランプなど、久しくやっていないので、少し記憶が曖昧なのだ。それに、こちらの世界だと、ルールが違うかもしれない。
「そうだぞ。何かハウスルールとかあるなら、適用しても良いけど。」
「いや、一般的なので大丈夫。」
「分かった。」
喋りながらカードを切り終わった悠人は、そのまま流れるように互いに配る。
「う〜ん…。まず俺のは、ナチュラルじゃないか。」
雄貴は配られたカードを見て呟く。スペードのエースと、ダイヤの3だったので、エースを11と1のどちらに数えても、ナチュラルブラックジャックには程遠かった。
「俺の方も、ナチュラルは無理だったな。」
悠人のアップカードはクローバーの6で、ホールドカードが何であろうと、そのまま21にはならない。
「取り敢えず、ヒットで。」
「ほい。」
「…むむ。クローバーの8か。となるの、エースは1と数えて、合計は12だな。なら、ヒットで。」
17以下では、バスト狙いをするしかなく、しかし、初っ端からしけた事をするつもりは無いので、更にカードを引く。
「お、ハートの5か。悠人のホールドが10の可能性は高いから、引いて正解だったぜ。これで17だな。」
10、J、Q、Kが全て一律に10と数えられるブラックジャックでは、この数字が出る確率が高い。なので、悠人のホールドカードが10以上であれば16で、雄貴が引かなければ、必ず21となっていた。
そういう訳で、ほっと胸を撫で下ろす雄貴。
「スタンドで。」
「お、もう良いのか?」
「煽るな煽るな。つい引きたくなるから。」
ファーストゲームから、いきなりバストなんて、幸先が悪過ぎるので、勝負したい欲を抑える。
「ちっ!引かないか。じゃあ次は俺の番だな。お、雄貴の判断は、正しかったな。」
悠人のホールドカードは、スペードのジャックだったので、オープンカードとの合計値は16であり、危うく21を作られるところであった。
「あっぶな。さ〜て、バストするのかどうか、楽しみだな〜。」
「ヒット。ははは。まさかいきなりする訳…あったな。」
ハートのKを引いてしまった悠人は、この時点で26で、バストしてしまった。よって今回は、雄貴の勝ちとなった。
「よし。まずは一勝だな。」
「まだ一勝だ。喜ぶには早いんじゃないか?」
「テニスでは、最初のセットを取った方が、勝率7、8割なんだぜ?」
「ほほう…。なら、残りの2割か3割に傾かせてみようじゃないか。」
妙な豆知識を披露した雄貴に対して、悠人は挑発的な笑みで返す。
こうして男達の熱い闘いが始まったのであった。
……ただのカードゲームではあるが。
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「あ〜、負けた〜。」
「2、3割の確率に勝ったぜ。」
ゲームの結果は、それぞれの言葉から分かるように、雄貴の負け、悠人の勝ちであった。
「はぁ…。さて、もういい時間だし、そろそろ下に行こうか。」
チラッと海の方に目を向けて、雄貴は少し伸びをする。今日はあんまりついてないようで、結構なボロ負けだった。その為、少し落ち込んでしまっている。
「そうだな。続きは夕飯後にでもするか。」
「今度は負けないからな。」
喋りながら部屋を出て行き、階段を下りる。現在時刻は11時57分。かなり丁度いい時間だろう。
ー少し動いて、加えて頭を使ったから、腹が減ったな。昼飯は何かな〜。ー
女性を抱えて、木々を跳び越えるのが、『少し』で済むかは疑問だが、そんな事をボーッと考えながら、階段を下りる。
だからだろう。それを見た時の反応が遅れてしまったのは。
「あ、石田先輩。治療は終わったんですか?」
階段を下りきった先の、直ぐ右手側が女性用の風呂になっており、そこから出てきた咲に話しかける。
「ゆ、雄貴君!?こ、これはその…。」
何故だかこちらを向いたまま、大慌てする咲。風呂上がりを見られて焦ってるのだろうか?だが、普通に綺麗になった服を着ており、焦る要素など、1つも無いように思える。
「何故後ずさりを?タイミング悪かったですか?」
「え?雄貴君は何とも思わないの?」
「はい?」
首を傾げる。本気で何の話なのか分からない。なので、後ろに居る悠人に助けを求めようと振り向く。
「……。」
しかし悠人は、珍しく完全に固まっており、その視線は咲に固定されていた。
「お〜い?どうした?風呂上がりの石田先輩に見蕩れてるんか?」
「…い、いや、雄貴の目は節穴なのか?頭の上を見てみろよ。」
気が付けて無いので、節穴呼ばわりも甘んじて受けるが、それでもあまり嬉しくない呼び名なので、少し眉を寄せて咲の頭の上を見る。
「頭の上?可愛い猫耳がついてるだけだぞ?…ん?猫耳?猫耳!?」
自分で行ってから漸く普通とは何かが違う事に気が付き、二度見してしまう。何と咲の頭には、茶色い猫耳が生えていたのだ。
「あ、今気が付いたんだ…。」
「おいおい…。」
2人から本気で驚いた表情を向けられ、雄貴は少し居心地が悪くなってしまうのだった。
猫耳……愛でたいです。





