第41話 世間は狭い
超能力者同士は引かれ合う……?
あの後、男達に追い付かれる事無く、無事に別荘に辿り着けたので、そのまま中に咲を入れたところ、ダイニングのソファで寛いでいたシンシアは、驚きの表情を浮かべた。
「え?咲さん?ど、どうして雄貴君と?と言いますか、ボロボロじゃないですか。」
「や、やっぱりシンシアさんでしたか。」
対して咲は何故だか、別荘にシンシアが居たことを、不思議に思ってないようだった。
「石田先輩は、先輩が居た事に疑問を感じてないみたいですけど、分かってたんですか?」
「うん、まぁね。さっき雄貴君の匂いを嗅いだ時に、シンシアさんの匂いがしたから。」
「え、マジすか?俺から先輩の匂いがするんですか?」
またしても、思わず自分の匂いを嗅いでしまう。だがやはり分からない。そんなに近くに居たつもりは無いのに、染み付いてるとでも言うのだろうか。
「そうだね。でも、人の嗅覚だと分からないと思うよ。」
「そ、そうですか。」
ー優斗さんといい、石田先輩といい、何でこう鼻が良い人が、俺の周りには集まるんだ?ー
犬猫並の鼻の持ち主が周囲に居るとあらば、今後の行動にも気を付けねば、悠人達のサポートが、し難くなってしまう。
とはいえ、雄貴自身も人間にしては、かなり鼻は良い方なので、自分で気を付ける事が出来るだろう。
「えっと、雄貴君は、出かけた先で咲さんと会ったのですか?」
「あ、はい、そうです。ちょっと男達に絡まれてたので、少し手を貸したんです。で、見ての通り、ボロボロなので、手当てとかしてもらえればと思って、帰って来た訳です。」
「な、なるほど。ちょっとメイドを呼んで来ます!」
思わぬ人物を、雄貴が連れ帰った事による驚きが抜けきったシンシアは、慌てて立ち上がって部屋を出て行く。
「…あれ。雄貴が帰って来たのかと思ったら、見知らぬ女性が…。ナンパか?」
「ちゃうわい!俺がそんな事するように見えるのか!?」
「見えないが、人は見かけに依らないからな。」
「ナンパとかした事無いわ。この人は、石田咲さん。学園の一個上の先輩だよ。見ての通り、ボロボロだったから連れて来たんだ。」
冗談だろうが、そんな軽い奴だと思われても嫌なので、取り敢えず説明をしておく。
「ほ〜。世間は狭いな。旅先で会うとは。それと、雄貴はつくづく女性に縁があると見える。」
「何でそういう発想になるのか。ま、トラブルには巻き込まれやすいみたいだけど。」
「な、何かボクのせいでごめんなさい。」
「あ、いや別に自分は、何とも思ってないですから。」
大抵のトラブルは、悠人達の仲をよくさせる為の、スパイスとしてしか、認識していない。
だから、本当に気にしていない。
ーしっかし、ボクっ娘とか初めて見たな。ま、言葉遣いは人それぞれだ。これはこれで、結構可愛いな。ー
ボクっ娘という、新たな属性の咲に、雄貴はホクホク顔だ。『ウラデリ』のストーリー内には登場しない人物だが、悠人と仲良くなってくれれば、それで十分である。
「すみません。お待たせ致しました。」
「ありがとうございます。」
タイミング良くシンシアが、救急箱を持ったメイドを連れてやって来たので、礼を言って通す。
「それじゃあお願いします。」
「お、お願いします。」
「はい、畏まりました。」
何でもない顔して頼む雄貴と、物珍しいメイドに緊張しながら言う咲。雄貴も最初は、メイドを最初に見た時は、物珍しさから少しソワソワとしていたが、今ではすっかり慣れ、メイドが近くに居る事に、もう何とも思わなくなってしまっていた。
恭しく頭を下げたメイドに頷きながら、悠人に視線を向ける。
「じゃ、上に行こうか。」
「そうだな。」
この場で、咲が手当てを受ける様を眺める訳にはいかないので、さっさと退散しようという事だ。
悠人もその辺の事はちゃんと弁えてるので、タイムラグ無く返事する。
「先輩も、後はよろしくお願いします。」
「はい、任されました。」
こうして、雄貴達はリビングを後にするのであった。
_____________________________________________
別荘は二階建てで、二階には主に、客間があった。雄貴に割り振られたのは、海側のかなり眺めの良い部屋だった。
「ほへ〜、かなり良い眺めだな。」
「そうだな。」
「…いや何悠人は、自然に入って来てるんだ?」
「いや〜。少しこっちからの眺めが気になってな。俺の方は、あんまり海が見えないから。」
一緒に部屋に入って来た悠人が言う。彼に割り振られた部屋は、残念ながら眺めが悪いらしい。
「そうなのか。…お、冷蔵庫まである。おぉ…。俺好みのお菓子とかお茶とか、食べ物が入ってる!」
嬉しそうに中を漁る。シンシアが手配してくれたのか、中身が充実しており、非常に満足いくものだった。
「…なるほどな。俺のところも結構色んなのが入ってたぞ。」
謎にしたり顔で頷いた悠人。
「何がなるほどな、なのか分からないけど、ここまで至れり尽くせりだと、却って気が引けちゃうよな。」
紙パックの野菜ジュースを取り出し、飲み始める。一人暮らしで野菜不足を気にしていた雄貴は、中等部に入り立ての頃から、野菜ジュースを飲み始めたのだが、今では不足とか関係無く、飲んでないと落ち着かなくなってしまった。
「雄貴はホントに野菜ジュースが好きなんだな。」
まだ会って1ヶ月程だが、もう既に野菜ジュース好きを把握されてしまっているようだ。苦笑いである。
「まぁね。これが止められないんだよな〜。」
苦笑いには気が付かず、美味しそうに、一気に飲み干すのだった。
野菜ジュースは、なんかこう、ヤミツキになるんすよね。私だけですかね?





