第24話 報酬
「これがキングオークの首になります」
時は夕暮れ。エルヴ村を日中照らして太陽は高度を下げている。
沈みゆく太陽は、村をオレンジ色のライトで照らしていた。
ユーリは手で持っていたキングオークの首を男達の目の前に、見せつけるように置いた。
「おお!」
「わずか半日足らずで!」
男達は、内心この少女の実力を疑っている部分があった。
若葉色のローブと風貌こそは魔法使い然としているが、見た目はただの少女であり、椅子すら持ち上げる事が出来ないような繊細な印象を受けた。
その認識は間違っている事を、改めて認識する。
目の前に置かれた仇敵の首を見れば、それは自明の理であり、間違いなくこの少女は腕利きの魔法使いであった。
「ご満足いただけましたか?」
この程度の依頼であれば、ユーリにとってさほど苦労することのないものであった。
しかし、あえて苦労したという素振りを見せる事で、自分の実力を高く見せようとしていた。
報酬を上乗せしてもらう算段もあったが、それよりも自分のことをよく思われたいという気持ちが彼女にはある。
要するに、彼女は褒めて欲しかったのである。功績を上げたことを賞賛してほしいと、本人は無自覚に思っていた。
「ええ! もちろんですとも!」
「これが、今回の報酬になります」
「では、たしかに受け取りました」
手渡される袋に入っている、ゴールドの重みに充足感を得ながら、ユーリは報酬のゴールドを受け取った。
「賢者様、本当にありがとうございました」
「いえいえ」
男達の賞賛に、どこか照れくささも感じながら、ユーリはその場を後にする。
夕暮れ時という事も有り、人通りが少なくなったエルヴ村を一人で歩いていく。
背中からはオレンジ色のライトが照らされている。
「ふぅー、疲れたなぁ」
進行方向に向かって伸びており、足元の影は昼間の時に比べて、大きいものであった。
一日の終わりを感じながらユーリは青山羊亭の扉を開けて部屋の中に入る。受付に立っていた主人に軽い会釈し、ある部屋へと向かった。
ドアノブを回してみるが、内側から施錠されているようで、このままでは入ることができない。
そう思ったユーリは朝型、宿屋の主人から預かっていた部屋の鍵を使って、部屋の中に入る。
「・・・・入るよ・・・・・・」
中で寝ていると思われる人間を起こさないように小声で、忍び足で部屋の中に入る。
部屋の中は暗く、ランタンの微かな光が灯されているだけであった。
「うん、ちゃんと寝てるね」
音をたてないようにして、ユーリは部屋の隅にあるベッドへと向かう
静かな寝息を立てながらジークはベッドに横たわっている。表情も安らかで、明日には風も完治しているだろう。
「・・・・」
彼の風邪は治っていることに、安堵のため息をつく。
あまり長く留まっていると、彼が起きてしまいかねない。
後は退出して風呂に入り、明日に備えるために早く寝るだけなのだが、少し気になることがあり、少しだけ考え込む。
「温かいし普通だね。でもちょっとだけ硬いや」
なんとなく気になったので、彼の頬に触れてみる。自分の冷たい手とは対照的に温かい感触が伝わってくるのを感じる。
また、肌の感触は少しだけ硬く、彼は男性なのだと再確認させられた。
比較の為に、自身の頬に触れてみる。柔らかい感触が右手に伝わってくる。
この世界に来るまでの自分の肌とは違い、柔らかい感触であった。
「・・・・・・さて、お風呂入って寝ようっと」
長居しても仕方がないと判断し、ユーリは音を立てない様に部屋を歩き、そのまま退出する。
その後、風呂に入り、心身ともにリフレッシュを図が、入浴中は少しだけ、なんとも言い難い気持ちが頭をよぎっていた。
そして、疲れた身体を休めるために、温かいベッドの中で深い眠りにつくのであった。




