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∞クロニクル・アルディア∞ ~101年目の未来~  作者: 空乃真芽
第六章 繰り返された百年編

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第九十五話 何度目の剣

「世界線外部。」


 トーマが紙に書いた言葉を見る。


「別の世界が、本当にあった。」


「クロニクルの記録では。」


 レインは答える。


「でも、どうして俺の身体に残ってる?」


 別の世界なら。


 今のレインが経験したことではない。


 北門の戦いも。


 雪原で神崎を倒したことも。


 今の世界では起きていない。


 それなのに。


 剣を握る手は覚えていた。


「世界線同士に、何かつながりがあるのかもしれません。」


 セレスが言う。


「何が残り、何が残らないのかは分かりませんが。」


     ◇


「重複している履歴の数を表示。」


【集計を開始】


 文字が止まる。


【表示可能範囲を超過】


「二つや三つじゃない。」


「どれくらいですか?」


【概数表示へ切替】


【百年区間:多数】


【完全集計には上位権限が必要です】


 具体的な数字は出ない。


「上位権限って、誰が持ってるんだ?」


 トーマが尋ねる。


「分からない。」


「神崎蓮なら?」


「可能性はある。でも、クロニクルとの関係は未確定です。」


 司書が答える。


 名前を見つけたからといって。


 神崎が全ての答えを持つとは限らない。


 だが。


 数えられるほど少なくもなかった。


「神崎蓮は、全部にいるのか?」


【検索を実行】


【名称参照が失われた履歴を含むため集計不能】


【照合可能履歴:複数】


 名前が消えた世界もある。


 その中に同じ人物がいたかは。


 名称だけでは検索できない。


「対象識別で。」


 レインは北方の記録を思い出す。


「名前ではなく、同じ人かどうかで探せない?」


【対象識別による照合を実行】


     ◇


 表示を待つ間。


 白い爪痕の隔離が進められた。


 学院長たちは。


 残留情報を失わないよう。


 導石の間隔を少しずつ狭めている。


 レインも北門へ戻った。


「今日は見るだけだ。」


 ガレスに言われ。


 剣には触れない。


 セレスの水が土を固め。


 トーマの風が外側を覆う。


「昨日より動かないな。」


「魔力の流れを迂回させたからかもしれません。」


 白い筋は。


 静かなままだった。


 ただ。


 レインが近づくと。


 細い光が一度だけ走った。


 視界の端に。


 別の北門が重なる。


 壊れた門。


 燃える門。


 誰もいない門。


 全てが一瞬で消えた。


「また見えた?」


 セレスが水を止める。


「三つ。」


「何が?」


「違う北門。」


     ◇


 クロニクルの照合が終わる。


【対象識別:一致する履歴を確認】


【神崎蓮に該当する対象:複数世界線に存在】


「神崎は。」


 レインは読み上げる。


「複数の世界線にいる。」


「別人ではないんですか?」


【対象識別:同一】


「同じ人です。」


 生まれ直した同じ名前の誰かではない。


 対象そのものが一致している。


「記憶は?」


 ガレスが尋ねる。


【記憶情報:制限】


【一部履歴で継続反応を確認】


「全部覚えているとは、まだ分からない。」


「でも、一部では前を知っていた。」


 雪原で。


 神崎はレインの動きを知っていた。


『今回は――』


 欠けた言葉。


 初めてではないことだけは伝わる。


     ◇


「レインの方は?」


 トーマが尋ねた。


「別の世界にも、俺がいるのか。」


【利用者情報を照合】


【現在名称:レイン・アークライト】


【魂情報:接続制限】


【一致する反応:複数】


 今度は。


 レインが黙った。


「複数ある。」


「だから剣を覚えていた?」


「可能性はある。」


 答えではない。


 けれど。


 別の世界で握った剣が。


 今の身体へ残っているのなら。


 夢も。


 既視感も。


 起きなかった出来事ではなくなる。


「雪原で、神崎を倒した俺は。」


 レインは呟く。


「何度目だったんだ。」


 クロニクルは。


 まだ答えなかった。


 答えないのではなく。


 今の権限では、数え切れないのかもしれない。


 レインの掌に。


 剣を握ったことのないはずの痛みが戻る。


 一度の戦いでできたものではない。


 そんな感覚だけが。


 問いへの返事のように残った。

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