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∞クロニクル・アルディア∞ ~101年目の未来~  作者: 空乃真芽
第六章 繰り返された百年編

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第百十七話 守れなかった背中

 倒れた魔物を。


 木の根元へ移す。


 白い筋は切れている。


 それでも。


 北へ向いた耳だけは動いていた。


「ここから先は。」


 ガレスが森を見る。


「群れが通った直後だ。」


「戻るんですか。」


「目的は果たしていない。」


 鐘も。


 接続先も。


 まだ見つかっていない。


「だが、追いつくためには進まない。」


 群れとの間を空ける。


 七人はその場で待った。


     ◇


 レインが木へ手をついた時。


 森の景色が揺れた。


 同じ木。


 同じ根。


 けれど。


 足元には雪が積もっていた。


「走れ!」


 過去のトーマの声。


 レインの身体が。


 勝手に前へ進む。


 手の中に剣はない。


 森の奥で。


 誰かの背中が揺れていた。


 長い髪。


 細い身体。


 白い光に隠れ。


 顔は見えない。


「絶対に助けろ!」


 もう一度。


 背後で何かがぶつかる音。


 振り返ろうとする。


 けれど。


 過去の自分は振り返らなかった。


     ◇


「レイン!」


 肩をつかまれた。


 目の前に。


 ロイドの盾がある。


 レインは。


 ひとりで三歩進んでいた。


 白い草の中へ。


「止まってください。」


 ミリアの声。


 足の先から。


 白い光が伸びている。


 セレスの水が。


 触れる前に土を洗った。


「また履歴か。」


 ガレスが尋ねる。


「はい。」


「誰がいた。」


「女の人に見えました。でも、顔は見えない。」


 セレスも。


 ミリアも。


 その答えに何も言わなかった。


 見えない顔へ。


 知っている誰かを当てはめることはできない。


     ◇


「俺は何をしてた。」


 トーマが聞いた。


「後ろにいた。何かと戦ってた。」


「お前を先へ行かせるために?」


「たぶん。」


「たぶんで、俺を死なせるなよ。」


 冗談のような言い方だった。


 けれど。


 誰も笑わなかった。


 過去の自分は。


 助けろと言われた相手だけを見た。


 後ろに残った者を。


 確かめなかった。


【履歴照合:継続】


【結果情報:欠損】


「助けられたかは、出ない。」


 レインは読み上げる。


「なら。」


 ロイドが盾を持ち直した。


「同じことをする必要はありません。」


 先へ進む者と。


 後ろに残る者。


 どちらかを選ぶのではなく。


 届く合図を残す。


 ガレスが鐘を一度鳴らした。


 少し離れた場所で。


 リディアが二度返す。


 声の先へ走る前に。


 全員の位置を確かめる。


 七人は。


 今度こそ同じ速さで進んだ。

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