最強の能力
遅くなってしまいすみません!次の更新は22時頃を予定しています
暗い部屋で、男は女と対峙していた。
「これが……おっさんのソウルスキル…… 」
「あぁ、と言っても、俺自身まだなにか分かってはいないが」
「エビちゃんから聞いた振動云々の内容は……」
「ハッタリだ。騙すような真似をして悪かったが、命が懸かってたのでな。実際、原理はまだ掴めていない」
女はその言葉を項垂れながら聞いている。その掌から、拳銃の残骸が零れ落ちた。
「あのハイパー回避能力に、この、“まるでダメージを再現”するようなスキル……」
「……もういいだろ。アンタの負けだ」
「おまけにその様子。魂力をほとんど消費していやせんね?」
「……燃費切れになったことは、今のところないな」
魂力。スキルの発動にも消費されるそれ。あれほどまでに低い値の男が、一体何故。
「……ねぇ、おっさん」
「なんだ」
女が、ゆっくりと顔を上げる。その右眼には「苦」の文字。そして、
「最強の能力、って、なんだと思いますかい?」
女の顔は笑っていた。
────────
『時にミスモニカ。最強の能力、とはなんだと思うかね』
『なんですか藪から棒に』
『まぁまぁ、考えてみてくれ給え』
『……負けない能力?』
『ふむ。それもまた正しい。だがね、私が思うに最強の能力とは──────』
────────────
「それは」
リンクする。過去の声と今が。今の自分が。
私は、モニカ=モーンは、
「『情報のない能力』」
最強の能力を持っている。
次の瞬間、男の右膝に、焼けるような痛みが走った。
「なっ……」
衝撃に崩れ落ちる。続け様に、二発、三発、四発。膝、背中、腹。熱線が男の身体を貫通する。
「ぐうっ……!!」
「なるほど。どうやら、“自分の死に直接関与しない攻撃”は、避けやがれないみたいで」
「なんで……っ!P.devilは全部……!」
「破壊した、ですかい?はぁ、やっぱりわかってない」
まずい、そう感じた男は、痛む足に力を入れて、女の視線を切るように机の裏へと隠れた。
しかし
「がぁっ……!!?」
男の身体を視認していないにもかかわらず、熱線が再び、男の背中を貫いた。
「よく勘違いされるんでさぁ。あーしは観測型じゃなくて、侵食型。本来、P.devilはおまけ。熱線の方があーしの能力でさ」
「侵食型……っ!??」
男は周囲に視線を向ける。P.devilの姿は見えない。なのに、男の視界は、黒い軌跡で埋まっていた。
「……誰かが言ってくれやした。観測することで、その事象に価値をつける。見なければ、情報は情報たり得ない」
ソウルスキル。未だに多くの謎が残るそれ。しかし、かの探偵はこの世界を去る間際に、ある法則を見つけていた。
前提としてソウルスキルは人間の脳波を観測している。それを読み取り、データとする。
つまり、そのプレイヤーの世界の認識の仕方、それが、スキルに影響している、ということ。
「見えやすか。おっさんの目にも見えますか。真っ赤に燃える世界が」
「そうか……っ!!!空間の、侵食……!!」
いつの間にか、P.devilの残骸が消失していた。否、消失したのではない。同化したのだ、この空間そのものに。男は理解する。女の、モニカの本当のスキルとは、
「ご名答。あーしの認識した視界そのものに“熱線を付与する”能力。発動条件は、一定数のP.devilが破壊されること……丁寧に全機破壊してくれやがりましたから。おかげでここら一体は掌握してやりました」
「やられたな……」
かつて、アリスを含めたToxicKICKのプレイヤーを屠ったそのスキル。名を────
《ユーザー認証:モニカ=モーン》
《承認》
《ソウルスキル 第三段階》
──《Case closed “PLEASE ALL”(全てを求め、結論に至る)》
「すごいな、アンタは。自分が……っ、観測することで、世界に初めて意味をもたらすと、本気で信じているのか」
「あーしは、世界一の探偵ですので」
女は笑う。男には、その笑顔が、酷く哀しそうに見えた。




