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《REVELATION ONLINE》 ―人格診断みたいなVRMMOで、最悪の適性が出た―  作者: 如月 爐
綻びの中で

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覗き魔

 サイレンの警告音に混じって、腹の底を揺らすような重低音が響く。その音を聞いた女は、ニヤついた笑みを浮かべながら、入口の方へと走っていく。


 男はそれに釣られて視線を向けた。



 「人の留守に何してんだァ?」



 金属製の足音が響く。


 赤色灯の明滅。黄色と黒の装甲義肢。


 “Toxic KICK(トキシック)”のエンブレム。薄緑色の試験管に、黒色の亀裂が走った特徴的なもの。


 「まさか、この街に“法”がないなんて思ってねぇよなぁ」


 武装したプレイヤー達が、壊れた工場設備を踏み越えながら、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


  「いやぁ、ようこそ。お待ちしておりましたです。ささっ、旦那方、あれが件の下手人でござい」


 右眼のモニターには、「喜」の文字が浮かんでいる。女はへりくだった態度で、先頭にいる大柄の男にそう言った。


 その男は工場内を一瞥する。


 床へ転がる義肢、砕けたアーム、抉れた床材、



 そして、片腕を失ったカラスマ。



 数秒の沈黙。


 「設備損壊にぃ、無許可侵入。おまけにMT(モンスタートレイン)……随分楽しそうなことしてんじゃねぇか。えぇ?」


 大柄の男の義肢が、低い駆動音を鳴らした。


 「全くもってその通り!大罪人でごぜぇますよ。どうぞとっちめてやってくだせぇ」


 女のその反応を男──カラスマは冷めた視線で見つめる。元々味方ではない。裏切りではなく、真っ当な態度、というやつだろう。


 が、Toxic KICKの男たちはその言葉に沈黙で返す。


 「……あれ?な、なんだかノリが悪ぅございますね、いつもなら『ヒャッハー!俺たちの縄張りを荒らすなんてとんだ野郎もいたもんだ!バラバラにしてミンチにしちまおうぜ!』みたいな……は、はは……」


 女の右眼に「焦」の文字が浮かぶ。女も、企業勢も一枚岩ではないようで……


 「誰かと思えば覗き魔のモニカじゃねぇか。“俺たちの工場”で、何してやがんだ?」


 答え合わせをするように、企業勢のプレイヤーの1人が尋ねる。明確にまずい、という表情を浮かべた女は、ゆっくりと後ずさりを始める。


 「い、いやだなぁ〜、誤解でごぜぇますよ。あーしはたまたま通りかかった一般善良プレイヤーで……」


 「“A.Order”との取引情報の流出、企画部の極秘情報を闇市に流し、挙句、生産区域への無断のカメラ設置……挙げればキリがねぇなぁ。どこが善良なプレイヤー、なんだ? 」


 「い、言い方が悪いでごぜぇますねぇ……ただの、公共性の高い情報収集活動でさぁ……ご勘弁なすってぇ……へへ……」


 何やら言い淀む女。男はそれを見て、踵を返すように、工場の出口に向かって歩き出す。ゴーストが派手に開けた大穴から、上手いこと脱出できそうではあった。


 しかし、


 男の瞳に、黒い閃光が走る


 直後


 「ッ!?」


 乱雑に飛来する軌跡。それはどう見ても、自分の頭を撃ち抜かんとする軌道で。男は間一髪、前方に倒れ込むように頭を下げて回避する。


 それは、企業勢プレイヤーの1人が放った、ライフルの弾丸であった。


 「おおっと。どこに行こうってんだ?」


 「……そこの女の店だ」


 「はぁ!!?ちょ、ちょっと何言いやがりますかこのスットコドッコイ!」


 「ほう?てことはやっぱりグルってわけか」


 男は暫し思考する。戦闘になれば確実にこちらが不利。向こうは完全武装した、自分より上位のプレイヤー集団。対してこちらは丸腰かつ、先ほど片腕を失った死に体。


 「まだ、グルではない」


 「予定は、ある、と?」


 男は会話を続けながら周囲に視線を配る。切れた配線。歪んだ金属製のアーム。散らばった義肢。何か使えるものはないか。先のゴーストとの戦闘のように、一瞬でも視界を晦ませられれば……


 と、そんな男の思考に割り込むように、女が叫ぶ。


 「さっきから黙って聞いてれば適当なことをペラペラペラペラ抜かしやがりますね……あーしはおっさんと組む気なんて更々ないでさぁ!……というわけで、そちらのお兄さん方ぁ?あーしだけでも見逃しちゃあくりゃせんかね」


 「随分と口が回るな覗き魔。そんなに企業勢に目をつけられるのが嫌か?」


 女の懇願にも耳を貸さず、突きつけられる銃口。あの距離ではどう足掻いても避けることはできない。


 「……どうしてもダメですかい」


 「工場の損失をお前が埋めるんなら考えてやってもいいぜ?」


 暫しの沈黙があった。女は何かを観念したように、深いため息をつく。


 男は見た、女の右眼のマークが消え、その色が真っ赤に変わるのを。


 次の瞬間、


 女に銃を向けていた、企業勢のプレイヤーの頭が爆ぜた。



 「っ!??」


 「こ、こいつ!やりやがった!」


 「くそっ!どっからだ!」


 騒然とするToxic KICKの面々。その只中で、いつの間にか女は空中に脱出していた。浮遊する女の足元には、先程見せた、眼球のような物体がある。


 男だけは見ていた。あの瞬間、銃口を向けていた男の頭に軌跡が走り、それは、あの空飛ぶ眼球から放たれた“なにか”であった。


 「おっさん!!」



 女が叫ぶ。



 「あーしに付いてこいつらに殺されるか、こいつらに付いてあーしに殺されるか!」


 「ふむ……流石に分が悪いように見えるが?」


 男は女と企業勢を見比べて尋ねる。女のあの態度と、言動。冷静に考えれば、どちらにつくのが得かは明白。


 「じゃあ言い方を変えてやります」




 「さっさと助けろください!!」



 横暴。あまりにも自分勝手。そもそもこんな状況になったのは、女の自業自得に他ならない。だが、



 「勿論。俺はまだアンタに聞きたいことがある」



 この世界を知るためには、それが最善の判断だと思った。



 「くそっ!全員、撃てー!!!」



 次の瞬間、男の視界が、黒い軌跡で染まった

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