グルス王国 10
王国内 大臣執務室
国王はもちろん、この国中でトップであり誰も逆らえない存在。
だが、今の王は細かい指示などは送れるわけがないため実質この国を操るのは1人であった。
「ふむ…2人ともよくぞ集まってくれた。2人がこうして並ぶのは数年ぶりだ。」
大臣執務室には現在3人だけ。
リバとシャルバ、そしてグルス王国大臣であるイーストン。
この国におけるスリートップである。
「で?…どこと戦争つもりだ?デウスか?ルコーガか?」
「…?伝令部隊の話を聞いていないのか?」
イーストンは、リバの訳の分からない言葉に首を傾げるがオホンと咳払いをして再び説明に戻る。
「今回の相手は「錬金術師とその手下ですよ。まぁ、手下は大したことないと聞きましたので、実質相手は錬金術師1人と言うことです。どれほどの力を持つかわかりませんが我々2人を連れてくるほどの存在であるのは間違いない。」……と言う訳だ。」
イーストンの説明に被せるようにシャルバが説明する。段々とイーストンの影が薄くなる。
「だから、2人にはそれぞれ持ち場についてもら「よっしゃぁぁぁ!!!俺前線!!」ーーいや、あの守りを「前線をリバで固めて、中を私とこの国のギルド所属冒険者で固めましょう。ギルド協会に連絡を入れます。」ーーあの守りを「やってやるぜぇぇぇぇ!!!」……ぐすん。」
イーストンの汚いおっさんの涙を見せたところで、2人は何一つ聞いておらず早々に部屋を出て行った。
ユイト達のキャンプ地
森の中でのキャンプはこの場所においては安全で、ユイトの設置した罠が魔物を仕留めていた。
しかし、それは魔物だけだった。昨晩の襲撃者は1人として捕まっておらず取り逃していた。
そして、この男もーー
「え?…酔って寝てる間にそんなことになってたのか?」
「こいつマジか。」
「めちゃくちゃ殺気ダダ漏れだったよ。」
先程起きたばっかりだった。
「じゃあ、さっさと始めるか。」
「え?…作戦も何も決めてないでしょ。」
ユイトの突然の提案にホムは朝食を食べながら驚き声を出す。
「いや、それには俺も賛成だ。早くしないと奴らの準備が整っちまう。」
バルザックの説明に腑に落ちるが、やはり作戦無しでは心許ない。
「細かい作戦はないが用は俺が国王の所に行って殺せば目的達成だ。その為には2人に囮になってもらう必要がある。」
「街中まで行けるかすら危うい状態のはずだぜ。あいつらは行動だけは早いからな。」
昨夜の襲撃者は、その日のうちにユイト達のキャンプ地を発見から襲撃まで行ったのだ。伝達速度や行動力の速さは折り紙付きだと推測できる。
「だから、アレを使うんだ。突破力だけなら充分だ。」
ユイトが指さす先には彼らの寝床兼移動手段であるキャンピングカーであった。
それから数時間後。
グルス王国関所前
そこには、本来ならば観光客や商人達などがたくさん列を作っているのだが、その場には人っ子1人いなかった。
それもこれもグルス王国は突然の封鎖命令が出された事が要因だった。突然の封鎖に戸惑う国民と事情を聞かされていない冒険者達。国民のほとんどは外出禁止令も敷かれて尚更混乱する。
冒険者達は、ギルド協会の通達により国内中心広場にて王国所属の冒険者による配置に従っていた。切羽詰まっているのか、混乱を避けるためか錬金術師が来る事は伏せられてテロリストが来るとだけ伝えられていた。
侵入経路はほとんど塞がれてネズミ1匹入る事は許されないほどの配置であった。
だからこそ、彼らは正面からやってくる。
国門付近で待機する兵士は、目の前の光景にはしゃいでいた。
「おいおい、珍しいな。いつもはものすごい長蛇の列ができるってのに…おい俺のス魔ホで写真撮ってくれよ記念にな。」
「おう任せろ。次は俺のな。」
兵士とは思えない緩さで記念撮影を始めようとカメラを向けたその端に、砂塵を捉えた。
「ん?向こうで竜巻でも起きたか?」
兵士の言う通り遠目でかなり大きな砂塵を巻き上がっていた。その中には一際眩しい光が上空へと上がっていた。
「……ッ!…うわっ!なんだこの突風は!」
王国の城壁が揺れるほどの突風に兵士たちは、立っているのが精一杯だった。
ゴゴゴゴゴゴッ
その音は段々と大きくなり一際眩しい光も大きくなる。
目の前の光はグルス王国の城壁に近づいてその正体を表す。
それはこの世界には存在しない技術の代物だった。
別世界では、″ロケット″と呼ばれている。




