閑話 絆は時に覚悟を決める瞬間になるーグラビアス視点 後編
歩き進む中で、自分の行く末に対しての希望を見据えた俺は、一旦屋敷を目指そうかと思っていたが、後方より人の後をつける足音を耳にした。
ふ、俺の裏切りが感づかれたかね。
しかし足音が素人っポイな、あいつらじゃないかもな。
しょうがない、軽くのすか。
俺は歩いて進んでいき、途中の角を急ぎ曲れば、足音が慌てたように追いかけてきた。
そしてそこに見かけたのは、近衛の制服を着用している騎士だと気づく。
「お前達は、俺に何か用でもあるのかい?」
俺が気配を消してたのを解除して姿を現せば、騎士どもは明らかに動揺している素振りをしている。
「お、おれたちは、その┄貴方のファン何です」
「そうなんす、ジルビオさんは騎士のルドルフ近衛騎士総代に匹敵する猛者で、ずっと憧れで、その┄握手して下さい」
「見かけたのは偶然で、我慢出来なくてすんません」
と三人より、熱烈な事を言われて俺は引いた。ジルビオって男にもモテんだな。
シラーと引いてたら、ジルビオの声が突っ込まれた。
『ただの憧れであって、そんなんじゃねえよ、引くな』
うん、ジルビオだな。
何か安心した。
『意味わからんわ!』
あーはいはい、ジルビオは今は俺の時間なんで、通信切るよ。
そうすると、ジルビオがギャアギャア言われてたけど、後で怖いからほっとこう。
俺は一応はジルビオの面子の為にとファンサービスしといて、騎士達は去って行った。
やれやれと呆れつつも、今度こそ歩き出そうとしたら、眼前に澱みが現れて、そこに男がゆっくりと出てくる。一人、いや二人か。
「よう、塵。いや名前貰ったんだっけグラビアスちゃん」
「からかうな。いまは塵より、こいつには、きっちり動いて貰わねばならんのだ」
「あーはいはい。リクルス様はご機嫌斜めのようだ。で、グラビアス命令は順調に進んでんのかい?」
フォルトロンか、声には自身がある。俺をジルビオに移植した奴で、あのとき暴走させてきた人物だ。
昔からずっと操られたな。
「ああ、計画は順調だと言えるぞ」
いまは誤魔化せねば、俺の存在もジルビオも危うくなる。
こいつは結構危険だと背中に汗が伝い落ちていき、嫌な警鐘が鳴り響く。
とくにリクルスって奴からは、どす黒い闇が周囲に滲み出て、触れれば喰われる恐怖の気配が襲う。
しばしの沈黙後に、フォルトロンはクククと笑い、ふーんとか、嫌な笑みを浮かべているようだが、何かを納得するような素振りをする。
「へえ、なるほど。まあ計画に支障はないし、いいかもな。リクルス様はどうします?」
「いいだろう、だが、計画が崩れた場合はお前が責任をとって始末しろよ」
「ああ、壊れた玩具は最後まで遊ぶのが俺流なんで、責任もって壊しますよ。な、グラビアス」
ニヤリと笑い俺に詰め寄ると、俺の頭に手をあて、無理矢理に深層心理の中を語られた。
『ジルビオ、あんたには最後の最後で、きっちり決着をつけてやるよ。塵を失いたくなくば、あの場所に来い、そうすれば失った物を取り戻せるぜ。』
『お前は本当に狂ったのだなフォルトロン。ミクライスが哀しむぞ』
『┄┄』
『反論なしか、まだ子供だな』
「うるせえ!」
バキッと俺の頬を殴り飛ばされ、口元が切れたのか鉄の味がした。
フォルトロンはクククと笑い出して狂ったように、俺を鋭く睨み出すと殺気が込み上げてるのか、闇が濃くなる。
「玩具の分際で、ぶっ殺してやる」
ギロリと瞳の色が濃い黒に染まりかかったとき、俺はゾクッとした。
あの魔女が本気のときに纏う冷たい闇のようで、一歩下がる。
ヤバイ、逃げたくなる。
関わるな、逃げろと余計に警鐘が酷くなって苦しくなったとき
「フォル‼」
と慈愛の籠る声が響く。
するとフォルトロンがビクッと跳ねて、声がした方向を向こうとしたが、リクルスが舌打ちをして、フォルトロンに何かを告げると動かなくなり、リクルスが俺を見てニヤリと笑ったあと「またな」と告げて消えた。
すると心底ホッと胸を撫で下ろしたとき、ミクライスって名前を知ってた奴が、俺に詰め寄る。
「あんたジルビオさんだよな、フォルトロンの奴と知り合いなのか⁉」
酷く辛そうに、俺を見上げてくるせいで、フォルトロンとミクライスは絆として繋がりがあるのだろうと感じた。
「知り合いとは言えんが、フォルトロンとはちょっとした事件で関わっているが、君は彼と知り合いなのかい?」
「兄弟なんだ、俺のたった一人の。あいつが行方不明になって探している。知ってたならと思ってたから」
不安な気持ちと、せっかくの手がかりに進展がないことに悔しそうな表情を見ていると、まるで自分を見ている気分になって、ついらしくもなく聞いていた。
「そうか。なあ君は彼を探す理由はなんだい?」
「あいつを探す理由なんて決まってる。フォルトロンの闇を晴らす手がかりを見つけて、俺のもとに取り戻すためだ」
「なら前を向いて希望を持ち、諦めるな、奴と対面するときには。きっと導く者がいるだろうから」
え? と呆気にとられたような表情をしていたけど、俺の表情や態度に真剣さを感じたのか、ミクライスは何かを決意を固めたようで、覚悟をした姿があった。
そして俺に頭を下げて、お礼の言葉を告げてから、しっかりとした表情のもと走って行く。
「絆は時に覚悟を決める瞬間があるんだな」
あんな人間もいるのだと、つい感想が口から出ると、深層よりジルビオから『格好良かったぞ、さすがは我が息子だ』とかちゃかされて、顔に熱が出て『うっせ黙れ、ジルビオのばーか‼』と文句を言えば、ハハハと笑われた。




