78 シリウスとフォルトロン
ミラと俺は警戒して後方を見据え互いに得物を構え、足音の正体を確認する
そこにはフォルトロンが成長したような人物が、俺達を見つけるなりにっこりと笑うが、何故か危険な感覚が俺を支配する
「誰だ┄お前は⁉」
声をかけると、男はゾッとするような笑みを浮かべて、つかつかと無言で近づいてくる
俺はミラを庇うように、相手に得物を向けているが、カタカタと恐怖で手が震えていた
なんだかわからないが、近づけば殺されると感じているのだと気づくものの、恐怖よりも大事なミラを守る事を考え直して柄に力を入れた
そのときだった、男の瞳がまるで間近にあるような負のエネルギーを感じた瞬間、男から聞き覚えのある声が聞こえてきた
「酷いなシリウス、僕に攻撃する気なのかい」
「え? 少し声が低いが、フォルトロンか?」
「ああ、そうだよ。力を使ったら成長しちゃってさ、一応┄魔女な、痛めつけた隙を見て逃げてきたんだ」
「┄そっかと安心すると思ってるか?」
いくら力を使ったからと、あの魔女は化け物並みに強いと聞いている
フォルトロンが何の力を使ったとしても、攻撃をし痛めつけて、本当に無事でいられるとは思えない
それに隙を見て逃げてきたわりに、何故、俺とミラに敵視するような笑みを見せるのか、矛盾があった。
するとフォルトロンは、フフフ、アハハハハと笑み
「┄さすがシリウスだ。なら、もういいや、第1段階を実行しよう」
と呟いた瞬間、バッと俺との距離を縮めて、頭に手をあてた
「┄シリウス様! フォルトロン、貴方何をしているんですか?」
「煩いよ、ミラ。僕は僕のために動くんだよ、傷つけよお前ら、ククク」
フォルトロンが、そう告げるとガンっと強い衝撃が、俺を襲い、己れの意志とは関係ないように身体が勝手に動き、目の前が闇に染まり意識が遠のく
数秒間にて意識を取り戻したあと、俺の手には不快になるような、ヌルッとした液体が流れ
目の前には、ミラが血塗られたように倒れていた。
え? なんだ┄これ!?
ガシャンと俺は得物の双剣を地面に落としていた
カタカタと震えてしまい、目の前にある光景を見て赤に染まる手の暖かみは血塗られた物だと気づき
喉元からむせ返る感覚に襲われ、嘔吐しながら思う、俺がミラに攻撃して殺したのかと
「┄アハハハハ、どうしたシリウス、大好きなミラを傷つけて、ショックかい? でもさあ傷つけるなら、命を刈り取らないと、まだ生きてるぞ」
ホラッとミラの髪を掴み、俺に見せてくる、はあはあと息をまだしてくれて、俺は良かったと思った
しかし俺の反応に、フォルトロンは不愉快だったらしく、ミラを放り投げて、俺に近づき、蹴りあげた
その衝撃で近くの木にぶつかり、フォルトロンが近づくと俺の剣を掴み肩に突き刺す
「┄ぐあっ‼」
「なあ、シリウス。僕さあ┄お前の友達になれて、ミラとも仲良くなれただろう。本当に嬉しかったんだぜ」
グリッと剣を弄り、笑顔で笑う姿は本当にフォルトロンかと疑いたくなる
「┄でもよ、僕は┄お前と、仲良くなったぶん辛いんだ。だって苛めたくなるならな、もっと不幸にしてやるよ、お前がお前でいられなくなるように、そして殺しにこい」
フォルトロンは不快そうに酷い事を言いながらも、何処か辛そうで泣いているように見えた
お前は、何を思ってこんなことをしてんだよ‼
フォルトロン‼
そう叫びたかったが、フォルトロンがもうひとつの剣を肩に縫い付けるように刺され、痛みと攻撃により、意識を失った
◆◇◆◇
それから意識を取り戻したとき、俺は病院に寝かされていた。
「┄意識を取り戻したかい、シリウス」
え? 誰だ?
と思い横を向けば、病院の院長の健二さんと医者の弥生さんの顔があった。
「あの┄俺は、どうして、ここに?」
健二さんと弥生さんは、互いに見つめたあと、呆れたような表情をされ、俺がここに運ばれた経緯を話してくれた。
俺が意識を失ったあとに倒れたあと、フォルトロンは消えて、ミラは負傷しながらも下山したらしいが力尽き
ローズ先生の影であるクウガさんが、ミラと俺を見つけてたらしく、今は隣りの病室で寝ているとの事だった
「┄傷は、大丈夫だったんですか⁉」
ミラは女性だ。俺が怪我を負わせたとき、どれぐらいの傷をつけたのかは、わからない。
だが、傷など残れば、女性にとっては重要性がある。
ローズ先生に養女となっているなら、いつか嫁として誰かに嫁ぐこともあるのに、傷などついてしまえば、傷者として貰い手は低くなるからだ。
チクッとミラの今後を考えて心配な、気持ちと誰かに嫁ぐことを思うと、妙な苛立ちと不快さが込み上げてくる
うん、これは嫉妬だろうな
自分でも、ミラに対しては好きだと思ってはいたし、ミラをいつか自分だけの者にしたいと思っているからかもしれない
やめよ、あんな家に彼女を巻き込みたくないし
ブンブンと顔を振り、気持ちに蓋をした
そんな俺の様子に、弥生さんが頭をポンポンと軽く叩き、傷の心配をしている気持ちだけを汲み取って話してくれた
「┄ミラの傷は、少しぐらいは残るかもしれないね、でもミラも成長期だ、傷も成長すれば薄くなるし大丈夫だ」
「そうですか、少しなら良かった」
俺はホッとしたとき、ズキッと両肩に痛みが走る
「┄っ┄」
「┄馬鹿、動くな。いくら妻が治療したからと言っても、麻酔や縫合しているが、お前の傷は深いのだ。2┄3日は入院して貰うからな」
「そうだよ、もともとあんたは普段から、怪我し過ぎで、治るのが遅いんだからね」
近くで、弥生夫婦に怒られ、あははと笑っておいた。
「┄わかってます、大人しく療養させてもらいます。あっそうだ、入院費用はラーシュに言って下さい、あとミラの入院費用も、もとより俺のせいですから、此方で持ちますので」
今後のためにローズ先生に負担をかけるのは、こちらが気が引ける
「┄┄はあ~、まったくあんたらは」
「弥生、ダメだよ。これは言っては」
「? どうかしたのか?」
寝転んだまま、不可解な弥生夫婦に疑問になって聞いたら、何故か苦笑されるだけで応えてくれず
いまは何も考えずに休むようにと言われ、渋々ながら了承した。




