74 大事な記憶と約束①
ぎゅと胸に刻みつけたとき、目の前の光景が変わり始めた。
『┄なあ、ラーナリア、俺はまだ忘れていることがあるんだよな』
『はい、場面はシリウス様のもとよりある記憶ですから、いくら記憶から消そうとも、欠片は残るものですから』
『┄それを集めて守ってたわけだ』
『いつか、このような機会があると思ってましたので』
『そっか、なら覚悟しないとな、忘れた記憶を受け止めるために』
先程の父上との約束に愛された思いがある真実、それは忘れてはならない記憶だ。
他に酷い事があろうと、向き合わないと、俺にとっては始まらないと思っている
それに父上にもだが、どうしてかミラ嬢の事も、何かあるとは思っていた。忘れないで、とプレゼントを渡されたときに願っていたから
あんな寂しそうな表情をされて、何をしたんだ昔の俺はと、少し考えていたんだよな
いかんミラ嬢の事を考えたら気持ちが緩む
俺はバシッと己れの両頬を叩き気合いをいれた。するとラーナリアが笑う姿があったが、俺の行動にだろうと気にせずに目の前の変化をみた。
今度の場面は、あの大樹の上に俺がいて、その下にはミラともう一人、変わった服装の少年がいた。
誰だ? と思ったとき、ふと名前が浮かぶ【フォルトロン・ゲシュタルト】と
そうだ、あいつはフォルトロンだ
ズキッと頭が疼き始めたが、俺はまっすぐに画面を見ていた。
これは俺とミラ、フォルトロンにあった悲劇の場面だ、俺が忘れていた、もっとも大事で悔しさとミラを守れなかった記憶
そう感じたとき、またシンクロする
◇◆◇◆
始まりは俺が┄両親の変化と長男としての役割、戸惑い、弟を守ろうとする気持ちで疲れた頃に、いつも時間を見つけてはお気に入りの場所に来ていた
そしてこの日もいつものように、大樹のある丘に来て、木に登り町並みを眺めていたんだ
そのとき木の下にいつのまにか誰かいて、俺のお気に入りに誰が来たのかと、だだの興味で見ていると、どうにも剣の稽古をしているようだった。
ふ~ん、こんな人気のないところで、努力してる奴なんているんだな
女の子っぽいけど、何だか型が滅茶苦茶だな
あっ、何か気づいたかね、自分の動きをブツブツ言っているようで、再び動き始めた
へえ~、少し動きが良くなってきてんじゃん
などとジッと上から覗いていたら、疲れたようで、汗を拭き、よし! と呟くと何処かに行ってしまう
もう帰るんだな、とか思っていたが、よく見ると陽が傾き始めていて、時間がいつのまにか経過していたことに驚いた
「はは、あの子を見てて忘れてたな、のんびりするの。でも、こんな日も悪くないかもな」
俺は木の上から飛び降り、地面に着地するとあの子が走って行った方向を見てみると、剣の師匠の先生がいる方向だな~とか思った
もしかしてローズ先生の新しい生徒かも
「┄なら、弟、弟子かも」
でも女の子だから、手合わせはないかもな、女に手を出したらウザいし、僕も女の子とは戦いたくないもんな
きっと今回は偶然、秘密の訓練がしたかったんだろうし、もうこないだろうな
とそう思っていた。でも、これを気に、お気に入りの場所に彼女は、よく現れるようになった。
僕が昼寝を木の上にしていても気にしてないのか、人の気配に鈍いのか、剣の稽古で集中してるのか、正解は後者かもしれないと、何回かの彼女の行動で気づいた。
そして同時に、気づいてしまう
剣の稽古の割りには、あまり上達するどころか、剣の型も動きも、未熟過ぎて、見てると口を挟みたくなったりして焦れったかった
だから我慢も限界になり、声をかけてしまった
「┄ねえ、君はいつも、そこで剣を振り回して、何をしてるの?」
唐突に声をかけたものだから、彼女は「はい?」と間抜けな声を出し疑問を含ませた眼差しを向けていたが
「剣の稽古です。邪魔する気ならば、声をかけないでいただきたい」
と言って再び剣を振り回し、稽古を再開していた。
皮肉な言い返しをされたものの、自身の秘密の訓練を見られたら、確かに同じ反応を見せるかもと、口を挟むのを我慢し
しょうがないので、観察することにした。
地面に降りての彼女の訓練を上からでは、わからない部分や、動きなどが鮮明にわかり
持っている得物の握り具合なども、気づいたが口を挟むべきかと思案して、ついボソボソと呟いてしまうと彼女はイラッとしたようで、僕を睨んで文句を言われた
「言いたいことがあるなら、言って下さい」
ウザいですと続けて幻聴が聞こえ、苦笑してしまう、実際に口ではなく表情は、そんな感じだけど
「┄言うのは、いいけど。怒るなよ」
「内容によりますが、納得出来るものに対して反論はしません。では、どうぞ」
何を言うのかは、私が判断しますがね
とまた幻聴が聞こえたが、負けん気が強いんだろうなと考えて、ポリポリと頬を掻いてから
「じゃあ、お言葉に甘えるよ。えーっとな┄」
俺は彼女をいつも見ていて、歯痒く思っていた彼女の動きや型の仕方、剣の持ち方、姿勢の体勢、そして彼女にしか出来ない攻撃方法などを教えていった
すると彼女は感心しながらも、敗北感を否めない表情のもと
「何でそこまで詳しいのか」
と聞かれてしまい。
彼女をいつも見てたなんて言ったら、気持ち悪がられるのは何だか嫌だと思い
自身が剣術の稽古を受けていることや、色々と自分で研究して身につけた攻撃方法を、友人と鍛練していることを話たが、まだ自分は未熟だと説明した。




