53 相談事とチルトからの願い②
昼食をとるために食堂に来た俺は、席を確保すべく周囲を見渡せば、意外にも混雑していて、空席は見つけられず
あいも変わらず食堂は人気だな~
とか思っていれば、不意にチルトとジマ、ガイスの周囲だけが、妙に暗い雰囲気を醸し出していた
えらく場違いだな、あすこは┄┄うん? おぉ~意外にも席が空いてるではないか! きっと他の者は、あの空気にあてられたくないから、開けたのだろう
しかし俺からすれば、都合が良いと考え、食券を購入し、食品を台所のカウンターに渡した後、出来上がった料理をチルト達のいる近くの席に着いた
カタンとお盆がテーブルに当たるが、周囲の喧騒にてかき消える筈なのに、チルト達が近くに俺がいることに気づいたらしく
パア~っと都合の良いところに、来てくれましたと言わんばかりに、視線で会話されてしまう
「なんだ、その視線は?」
少し怪訝な表情をして言えば、チルトが代表してか、真剣な表情のもと俺の方向を向きテーブルに当たるか当たらないギリギリぐらいにあて
「シリウス隊長! 非常に急ですが、俺達の相談に乗って下さい‼」
「確かに藪から棒だな、まあ┄別に相談は乗ってもいいが、先に食事をさせろ、いいな!」
もともと食事をするために、ここに来たのであって、チルト達の悩みを聞きに来たのではないからだ
するとチルト達は、頷き合うと同時に、はい! と返事をしたのを確認した
◆◇◆◇
食事は軽めの、サラダとハンバーグ定食を頼んでいたので、食事を充分に楽しみ、食事を終えたのは10分ぐらいで済ました。
口元をナプキンで拭った頃、ウエイターが食器を持って行ってくれたのを確認後に、チルト達に向き直り
「で、俺に相談事とはなんだ?」
と話を振れば、チルト達はハッとしたようになりつつも、言いにくげだが決心したように話をし始めた
「実は、俺達の知り合いに今回、出店を出すことになったんですが、どうにも客足が悪く、新商品が売れるようなアイデアが中々に決まらないんです」
「出店って、良く┄王国誕生祭を祝う為に市制の者達が開催している奴か?」
「はい」
王国誕生祭には、城の一角は解放され、王族の方々と会える機会もあるが、他にも市制の方でも出店などが開催され、各々が店の前にて出店をしているのだ
意外にも人気があったりするため、市民の混雑もある、だからこそ騎士や憲兵が見回りをすることもある
いかん、話がずれたな、さてよりにもよって新商品を売れる方法を俺に聞いてくるとは、余程切羽詰まっていたのだろう
商売事は嫌いではないが、いち隊長職の俺に聞いても何のメリットもないんだがな
多少の呆れが混じりつつも、相談されたのなら聞いてアドバイスをおくるのも無難だろうと思い、考えてみる
新商品ならば、市民からは珍しい事になるだろうし、男女により受けが良いかはわからない
「なあ┄その新商品ってのは、どんな品なんだ、詳しく知りたいんだが?」
新商品事態を知らねば、商品の有無など考えるだけ混乱するとチルトに訊ねた
「バナナの果物があるんですが、そこにチョコレートと言うものの液体を垂らしただけの商品です」
バナナって確か最近、南米辺りに生息しているピルム国からの商品だな。ルーヴェンス殿下が、貿易して店に取り寄せたとかの
あとチョコレートってのはなんだ?
確かに聞き覚えがないが、バナナと合うのか?
実物事態がわからないため、疑問符が頭に大量に飛んでしまう
「実物は? 特徴はどんな感じなんだ?」
「えーっと、特徴ですか、そうですね┄こんな感じですか」
チルトは水の入ったお冷やに指をあて、長い棒に突き刺さった感じで、先端から中央にかけて黒ように染めたようにする
その形は、妙にシンプル過ぎる気がするし、何だか卑猥な感じにも見えた
だからこそ気づいた、女性も男性もそんな卑猥なものは買いたいと思わないだろうと
「お前達は、最初にその形を見てどう思った?」
ジッと見つめて、俺がそう訊ねれば、チルト達は互いに、凄く間を空けてから苦笑を漏らす
「俺達も隊長と同じく、卑猥かと思いました。このご時世、女性はそのようなものを連想するとは思いませんが、男性はすけべ心があるため卑猥になる気はしました」
「だな、俺らも、ちょっと思ったよな」
「うん、僕も感じたかも」
「ならば、何故に止めないんだ?」
「「「いや~あいつ、えらく楽しげに売れる‼ とか意気込んでるから止める気になれなくて」」」
お互いに声をハモる程に、その人物の事を大事にしていることは理解したが、売れるためにも止めろよと突っ込みたくなった