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23話 ダンジョン観察

 世の中に数えきれないくらい人がいる。しかし、『人』は一人一人が特別であり、同じように見えてもどこか必ず違いがある。

 ダンジョンに挑んでいる探索者も『人』であるため、ステータスやスキル構成、戦い方も戦う理由も皆違う。

 彼らの戦いを文字にして書物にすれば1つの物語が出来るのではないだろうか。


 空は探索者達の戦いをマスタールームから眺めながらそんなことを考えていた。



「新学期早々よくやるねぇ、何がこいつらをここまで熱くさせるのやら」



 ダンジョンは危険と隣り合わせだが、それ相応の見返りがある。金銭面は当然のこと、強さや名声も集まる。今ではメディアに呼ばれた者、企業に雇われた者もいる。

 どれだけ努力しようとも給料が上がらない、その上日常がサービス残業が当たり前、みたいな会社を辞めた者、ニートや夢見がちな学生などなど、探索者には様々な者がいる。



「入れるように手回ししたのは俺だけど、ここまでとはね……。政府がダンジョンに入るの禁止するだとか言い出してたが、案の定受理されてなかったからな」



 政府が四月になっていきなり『一般人がダンジョンに入るのを禁止する』と言う内容の法律を作ろうとしたが、当然のごとく作れなかった。

 そもそもその原因となったのは空の余計な遊びであり。ヤクザ一味を掃除した時、ボスみたいな男の死体の胸に『次はお前らな?』と彫って書き残したからである。

 また、ビルの破壊具合や男達の死体の様子が人間業ではなく、書き置きがあることから探索者による犯行ではないか? と意見が出たからである。

 そしてその意見の否定材料はなく、しかし真実味のある仮説が出たのだ。それは、ダンジョンまとめサイトであり、魔石研究所に鑑定の魔道具を誰にもばれずに寄与されたこと。それら全て同一犯じゃないのか? と誰かが言った。

 そして、それが可能な人物は当時の自衛隊にはおらず、現在確認できる探索者の中にもいないことが調査の結果分かっていた。


 これを受けて、やはり一般人にダンジョンに立ち入らせるのは危険だ、と意見が大きくなり『禁止する』の声が大きくなっていったのだ。しかしながら世間はダンジョンに夢中であり聞く耳を持たなかった。



「禁止されてたらメンドくさかったからよかったよ。お? 今日ボスに挑むんだ。勤勉だねぇ俺は怠けている方が絶対にいいや」



 空の視線の先、宙に浮く画面には大きな扉の前に立つ大勢の人の姿があった。

 彼らは自衛隊と探索者の混合チームで、現段階で最強のレイドだ。

 ボス戦は通常広い空間で行う。その際の人数制限はなく、何人同時にでも挑戦可能であった。

 彼らが挑むのは『サイクロプス』と言う魔物で、高HP・STR、加えて高い再生力を持ち、AGIは低い。物理攻撃が主体で、手に持つ木の棍棒で攻撃をしてくる。また、魔法も少し得意としており火の魔法を使ってくる。そしてHPが低くなると暴走し、STRが倍になり動きも素早くなる。


 彼らには強敵だ。そもそもサイクロプスについてここまでの情報はなく、手探りで戦っていくしかない。



「さて、久々に見物でもさせてもらおうかな」



 彼ら一行は扉の中に入っていった。


 扉の中は体育館ほどの空間で、謎の光によって明るく照らされている。所々に岩などがある程度でその他には何もなく、荒地のようでであった。

 そして探索者の反対側には大きさがあ5メートル弱の巨人がのっそりと佇んでいた。


 ある者は支援魔法を味方全体にかけ、ある者は大盾をドッシリと構え、ある者は身の丈程の大剣を手に取る。



『ウガァァァァァァ!!!!!』



 サイクロプスが咆哮をあげ、ドン……ドン……ドン……大地を軋ませる音と共に探索者達に近づいていく。

 そして、巨大な棍棒を振り上げ、大盾を持つ探索者にそれを叩きつけた。



『グハッ!』



 あまりにも強い衝撃だったのか棍棒を受けた探索者は、潰れこそはしなかったものの、口から血を吐いていた。

 そこにすかさず回復魔法がかけられ、受けたダメージ分が回復した。



『攻撃が強すぎる! MPがそう長く続かないぞ‼︎』



 回復魔法を放った男が言う。『後どれくらいだ』とリーダーらしき者が問うと、『俺が持っているだけの魔法薬を全部使ったとして、後20が限界です! 他のヒーラーと合わせても60が精々です!』その言葉にリーダーは苦渋の顔を浮かべる。



『クソ! お前ら! 極力攻撃に当たらずに攻撃をしろ! でなきゃ死ぬと思え!』



 リーダーの気合の入った声と共に、アタッカーの探索者がサイクロプスに襲いかかっていく。

 剣、槍、鎌、大槌、鞭、様々な武器が交互に、そして魔法も混ぜられてサイクロプスにダメージを負わせていく。


 しかし――



『お、おい……こいつ傷が塞がっていってないか?』



 探索者は気付いてしまった。みるみるうちに治っていくサイクロプスの姿に、そして今までの攻撃が全て無駄だったかのようにあざ笑う魔物の姿に……。

 彼らはそれに少なからず動揺してしまい、その隙を突かれて盾を構えた者達が横薙ぎの棍棒によって吹き飛ばされた。



『お前ら‼︎ くっ………少しの間こいつは俺が抑える! その間に立て直せ!』



 そう言ってリーダーらしき大剣を肩に担いだ男がサイクロプスに突撃して行く。



『た、隊長!!!!』



 探索者達は一人戦地に向かう隊長を横目に、まずは傷を負った者に回復魔法をかけ、切れていた支援魔法とMPを全開にしてサイクロプスの方に向かっていった。



『大丈夫ですか隊長! う、腕が……』

『へっ、大したことじゃねぇ! それより死人はいなかったか⁉︎』

『は、はい! 全員無事であります!』

『そうか……お前ら! 勝つぞ!!!!!』



 それからの戦いはジリ貧ながらもサイクロプスのHPをジリジリと削っていき、しばらくして暴走が始まったが、冷静に状況を把握し死人一人と出さず、探索者側が勝利を収めた。


 そしてそれを一から終わりまで見ていた空は――



「……長い。とにかく長い、同じ事の繰り返しで見所がなかった……。強いて言えば盾持ちが吹き飛ばされたとこだけど、普通に回復してたし……はぁ」



 時間の無駄だった、と空。ボス戦が始まって終わったのはその2時間後、その間面白くなるよね? と思いながら空は見ていたのだが、そんなことには一切ならなかった。



「サイクロプスはダメだな……回復力が高けりゃいいってもんじゃない、ノッテクラスだと最凶なんだがな」



 それと比べられてはサイクロプスが可哀想すぎる。ノッテはSSSランクでサイクロプスはDランクの魔物なのだ。流石に差がありすぎだ。その上、ノッテを相手にするには同じSSSランクでさえ苦戦する程なので、結論ノッテが規格外過ぎるのだ。



「はぁ、日課のダンジョン増殖でもしようかな、偶然見たらフィールドとオブジェクトとか、それに魔物の種類が一気に増えてたからな、てか今も増えてるし……」



 ある日、ダンジョンをそろそろ増やそうか、と適当なところにダンジョンコアを設置し、いつものように魔物を配置し、第六階層はどんなフィールドにしようかと空が色々と見ていたら、なぜか選べるものが増えていたのだ。



「月面環境って……戦いにくくてどうしようもなくないか? そもそも適応している魔物いるのか? 謎だ……」



 その他にも深海や高高度など宇宙区間なんてものもあった。

 色々あるものなんだな、と新ダンジョンを作っていった空であった。



 そしてその数週間後……『神の位を獲得しました』と抑揚のない機械的で男性とでも女性とでも取れる声が空の脳内に響いた――――

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