第二十三話 初めての進化
ようやく奴をここまで追い詰めた。
だが油断は禁物。
獣は手負いの時が一番危険だからな。
実際、俺を睨む奴の瞳からはまだ戦意は失われていない。
隙を見せれば一瞬で形勢逆転、なんて事もありうる。
とはいえ、すでに局面はほとんど詰みに近い。
時間は十分に稼いだ。
そろそろイリルの魔法が――
と、思った瞬間。
突然、視界の全てが完全な闇で覆われた。
予期していた事態なので驚きはない。
というか、この闇こそがイリルに指示して使わせた魔法――【ダークネスト:Lv1】の効果なのだから。
ちなみにこの魔法で生成された闇は、光のみならずあらゆる視力を遮断する。
今俺が見えなくなったように、暗視能力も役に立たなくなる。
そしておそらくは、魔眼すらも……
策が成った事で半ば勝利を確信しつつ、俺は即座に移動を開始。
なるべく足音を立てないよう走り、予め目星を付けておいた岩場の陰に身を隠す。
もちろん闇のせいで地形など見えてはいない。
多少の不安はあったが、記憶を頼りにして移動したのだ。
ここで躓いたり壁にぶつかったりしなかったのは僥倖だった。
隠れて一息ついたところでイリルに心話を繋ぐ。
バジリスクの位置情報について確認するためだ。
その結果、奴は少しずつ移動している事が判った。
移動方向からすると、シャーマンを狙っているようだ。
この状況を活かし、弱い敵から倒すつもりなのだと思われる。
物は見えずとも、聴力や嗅覚で多少の位置把握はできるだろうし。
さすがに狡猾だな。
というか、この異常事態に慌てもせず合理的に行動するとか、精神がタフすぎるだろ。
ともかくシャーマンがピンチだ。
急がないと。
俺は脳内で《進化するぞ!》と強く念じた。
するとすぐに【事象の声】アナウンスが脳裏に響く。
《インプ【名称未定】は進化できます》
《上位種進化に要する時間は6秒です。進化しますか?》
する! 今すぐ進化させてくれ!
そう願った途端、体に変化が訪れた。
体内を循環する魔力が急激に膨張したかと思うと、メキコキと音を立てて肉体が造り替えられてゆく。
客観的にその様が見えていた訳ではないが、全身に走る名状しがたい感覚からそうだと解った。
アナウンスの予告通りその状態は数秒ほど続き、そして唐突に終わった。
《進化が完了しました》
《【名称未定】は悪魔種・ワイズデモナーに進化しました》
《進化覚醒により、新たな固有スキル【ソウルイーター】を取得しました》
《種族スキル【翼飛行(遅)】が発生しました》
《種族スキル【悪魔の小角】が発生しました》
《種族スキル【自在魔爪】が発生しました》
《種族スキル【四肢再生(小)】が発生しました》
《攻撃スキル【ダイブアタック:Lv1】を会得しました》
《攻撃スキル【全力ひっかき:Lv3】がLvアップしました》
《攻撃スキル【尻尾鞭:Lv1】がLvアップしました》
《防御スキル【魔力障壁:Lv1】を習得しました》
《特殊スキル【気殺隠行:Lv1】を習得しました》
《特殊スキル【金切り声:Lv2】がLvアップしました》
《特殊スキル【気配察知:Lv1】がLvアップしました》
《魔法スキル【ヒンダーチェック:Lv2】を習得しました》
《魔法スキル【カースドペイン:Lv1】を習得しました》
《耐性スキル【精神耐性:Lv1】を体得しました》
《耐性スキル【魔乱耐性:Lv1】を体得しました》
《耐性スキル【魔耐性:Lv1】がLvアップしました》
《耐性スキル【物理耐性(打):Lv1】がLvアップしました》
《一般スキル【魔族言語:Lv3】を習得しました》
《一般スキル【魔衣創造:Lv1】を習得しました》
《一般スキル【外見偽装:Lv1】を習得しました》
《一般スキル【尻尾触手:Lv1】がLvアップしました》
うぐぐ、流れたアナウンスが多すぎて頭がくらくらする。
だがその数だけスキルが増強され、一気に強くなった。
進化って凄いな。
ステータスの方はどうだ?
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《種族》悪魔種・ワイズデモナー
《名称》-
《性別》♂
《年齢》0
《状態》良好
《能力》
Lv:16/29+3
HP:1390/1390
MP:4680/4680
筋力:183
耐久:139
敏捷:182
精神:249
魔力:468
カルマ:551
ランク:☆☆☆
固有スキル:
【聖闘気】【成長限界突破】【悪魔の品格:憤怒】
【ソウルイーター】
派生スキル:
【聖気治癒】【成長操作】
種族スキル:
【状態確認】【事象の声】【悪魔の目】
【魔翼飛行(遅)】【翼飛行(遅)】【悪魔の小角】
【自在魔爪】【四肢再生(小)】
技能スキル:
【格闘:Lv1】【短剣:Lv1】
攻撃スキル:
【全力ひっかき:Lv4】【尻尾鞭:Lv2】【ダイブアタック:Lv1】
防御スキル:
【機動回避:Lv1】【反射回避:Lv1】【魔力障壁:Lv1】
特殊スキル:
【金切り声:Lv3】【以心伝心:Lv2】【血の契約・眷属化:Lv1】
【気配察知:Lv2】【小悪魔の悪戯:Lv1】【気殺隠行:Lv1】
魔法スキル:
【サイネス:Lv1】【ミーズ:Lv1】【ディグダス:Lv1】
【メディテート:Lv2】【ヒンダーチェック:Lv2】
【イグニスフィア:Lv3】【マナボルト:Lv2】【プロテア:Lv1】
【ルノーマ:Lv1】【カースドペイン:Lv1】
耐性スキル:
【火耐性:Lv3】【聖耐性:Lv3】【魔耐性:Lv2】
【物理耐性(斬):Lv2】【物理耐性(突):Lv1】【痛覚耐性:Lv3】
【物理耐性(打):Lv2】【毒耐性:Lv1】【精神耐性:Lv1】
【魔乱耐性:Lv1】
一般スキル:
【尻尾触手:Lv2】【魔族言語:Lv3】【魔衣創造:Lv1】
【外見偽装:Lv1】
称号:
【慈悲の体現者】【小魔の主】
説明:悪魔種・デーモンの幼生体であるデモナーの特別種。
一般的なデモナーを大きく超える知性や魔力を備えている。
多くの魔法や魔法的スキルを使いこなすため、戦闘力はかなり高い。
悪魔種だが賢く理性的であり、道理や利益を示せば話が通じる場合も多い。
人種の子供に近い容姿・体格をしているため、人族が使い魔にしているケースもある。
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Lvは下がってるが、ステータスは上昇している。
平均して一割弱アップってところか。
劇的パワーアップってほどじゃないが、スキルも増えたし十分だ。
他にもHP・MPが全快してるのが素晴らしい。
そのうえ翼の損傷も治ってるみたいだし。
どうやら進化すると肉体・魔力的に完全回復するようだ。
進化のタイミング次第では危機的状況を打破する一手になるな。
スキル説明や種族説明なんかもじっくり読んで把握しておきたいところだが、今はそこまでしている暇がない。
俺は岩場の陰から出て跳躍し、【魔翼飛行(遅)】で空中へと上がる。
新たに覚えた【翼飛行(遅)】も試しに使いたいところだが、静音性重視につき我慢だ。
魔法を使おうとすればどのみち位置はバレるだろうが、ギリギリまで気付かせたくない。
俺は空中を滑るように進み、ある程度近づいた所で静止した。
バジリスクの位置情報はイリルからリアルタイムで貰っている。
それによるとバジリスクとシャーマンの距離はまだそれなりに離れている。
これならバジリスクに攻撃魔法を撃ち込んでも、巻き込む心配はないだろう。
さあ、ようやくこの戦いに終止符を打つ時が来た。
俺は一度深呼吸して精神を集中し、【イグニスフィア:Lv3】の構築を開始する。
直後、バジリスクの移動がぴたりと止まった。
魔法使用による魔力を感じ取ったのだろう。
こちらの位置も把握したと思うが、同時に高みを飛ぶ俺に手が出せない事も理解したはず。
となれば……
一瞬の停滞の後、バジリスクが速度を上げてシャーマンへ迫る。
――そう来るよなぁ!!
バジリスクの行動を予期していた俺は、火球を真下に発射しつつ叫ぶ。
「壁をッ!!」
《魔法スキル【イグニスフィア:Lv3】がLvアップしました》
火球が地面に着弾し、バジリスクの進路を塞ぐようにして炎の壁が現出する。
あいにく魔法の闇に遮られて見えはしないが、足元まで届く熱波によってその光景が想像できた。
そしてバジリスクが炎の領域に突っ込んだ瞬間、ズゴッ! と激しい音がして空気を震わせた。
《敵対者を討伐しました。経験値1012を獲得しました》
《ワイズデモナー【名称未定】はLvアップしました。Lv16⇒Lv18》
《新たな称号【格上殺し】を取得しました》
《善行【縁なき弱者を義侠心によって守護する】を確認しました》
《善行により、功徳が上昇しました。カルマ値+18》
《新たな称号【弱き者の守護者】を取得しました》




