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第一七話 武力介入


 観戦を始めてから十分ほどが経過して。

 魔物同士の戦闘は、俺の予測とは異なる展開によって均衡が崩れた。


 それまであまり積極的な攻勢を見せなかったトカゲが、大技を繰り出したのだ。

 いきなり棹立ちになったかと思うと、前足で勢いよく地面を踏み叩いた。


 ズゥン!

 轟音と共に、地面が激しく揺れる。


 俺とイリル、蝙蝠共は空中にいたため影響はない。

 だが地に立つ者たちは……


 ファイターは流石と言うべきか、体勢を多少崩した程度で踏ん張っている。

 シャーマンもバランスを大きく崩してはいるが、何とか立てているようだ。

 しかしコボルトたちは全員、尻もちをつくか倒れるかしていた。


 その隙を魔物たちは見逃さなかった。

 トカゲの大技ヘビースタンプによってスタン状態に陥ったコボルトたちめがけ、頭上から蝙蝠共が殺到する。


 ……あれは致命的だな。


 他人事のように内心で呟いた俺の視線の先で、コボルトたちのパーティは悲惨な状態に陥った。


 まず、シャーマンが毒蝙蝠の強烈な降下攻撃をまともに食らい、地面に叩きつけられた。

 それだけで死んだとは思えないが、倒れたまま動かないところを見ると気絶したらしい。

 用心深いのか、毒蝙蝠は追撃をせず空中へと戻ったが、獲物が行動不能と見ればすぐさま止めを刺しにくるだろう。


 コボルトたちも、それなりの被害を受けていた。

 蝙蝠に降下攻撃を食らい、六体のうち一体が行動不能になったようだ。

 首と背中から大量に血を流し、倒れている。


 残ったコボルトも無傷ではない。

 降下攻撃後に集ろうとした蝙蝠たちを、武器や腕をめちゃくちゃに振り回して追い払ったはいいが……

 全員が例外なく重軽傷を負ったようで、全身から血を流している。

 回復要員であるシャーマンが倒れた以上、この怪我は大きなハンデとなって更なる不利へと繋がるだろう。


 破局は近い。

 そう予感した直後、ほぼ同時に複数の事が起きた。


 仲間が複数倒れた事に動揺したのか、動きに精彩を欠いたファイターがトカゲの尻尾攻撃の直撃を受けて吹っ飛んだ。


 コボルトの一体が倒れたシャーマンを庇って毒蝙蝠の急降下攻撃を背中に受け、動かなくなった。


 獲物が弱った今が好機とばかりに一斉攻撃を仕掛けてきたムカデを捌ききれず、倒れていた個体含め二匹が餌食となった。


 これでコボルト側で健在なのは、ファイターとコボルト三匹。

 パーティの中核だったシャーマンが倒れている今、戦力は元の半分以下といったところだろう。


 大局は決した。

 あとはもう、コボルト側が魔物側に逐次狩られてゆくだけだな。

 そろそろ武力介入すべき頃合か。


 そう判断した俺は、イリルに指示を出す。

 内容は〝俺が魔法攻撃した後、あの蝙蝠たちを倒せ。ただし無理はせず、自己保身を最優先とせよ〟だ。

 今のイリルのステータスなら、イビルバット複数が相手でも優位に戦える。

 毒蝙蝠だけはちと厄介だが、あれは俺が仕留める。


 ――さあ、行くぞ!


 俺は《マナボルト:Lv1》を使用し、魔力の矢を生成する。

 そして来るだろう好機を待ち――今だ!


 倒れているシャーマンを狙い、毒蝙蝠が三度の急降下攻撃を敢行したタイミングで矢を射出する。

 それは狙い違わず、コボルトに爪を立てた瞬間の毒蝙蝠に全ての矢が命中。

 そして矢が破裂して生み出された衝撃波によって、毒蝙蝠の肉体が粉々に吹き飛んだ。


《魔法スキル【マナボルト:Lv1】がLvアップしました》

《敵対者を討伐しました。経験値248を獲得しました》

《インプ【名称未定】はLvアップしました。Lv16⇒Lv17》


 よっし、皆中!

 ついでにLvもスキル諸々上がった!


 一方、コボルトたちや蝙蝠共には動揺と混乱が生じている。

 まあいきなり敵/味方個体が粉々になったのだから無理もない。


 俺とイリルの存在自体は連中、特に余裕のあった蝙蝠共には気付かれていただろう。

 だが俺たちは外見的に言ってコボルト側の存在ではない。

 どころか、蝙蝠共にとってはお仲間に見えただろう。

 戦闘に介入する気配もないし、大して気にも留めてなかったはずだ。

 距離が離れていたおかげで、俺が魔法を使う際の魔力に感づいた様子もなかったしな。


 ともあれ、敵が混乱している今が好機だな。


 ――行くぞイリル!


「キー!」


 俺とイリルは同時に飛び出し、戦場の真っ只中へと突入する。


 飛翔しながら俺は【マナボルト:Lv2】を行使し、適当に目を付けた蝙蝠共へと発射する。

 スキルLvが上がったおかげで倍の六本に増えた魔力の矢が、混乱して動きに精彩を欠く蝙蝠共に突き刺さり、肉片へと変える。

 ただし一匹だけは即死せず、片翼が吹き飛んで墜落した。


《敵対者を討伐しました(x5)。経験値250を獲得しました》

《インプ【名称未定】はLvアップしました。Lv17⇒Lv18》


 お、連続でLvアップか。

 いささか不謹慎な感想だが、美味しい狩りだな。

 この調子でさっさと蝙蝠共を片付けてしまおう。


 ごく短時間のうちにボスである毒蝙蝠と多くの仲間を屠られた蝙蝠共は恐慌状態に陥っていた。

 俺やイリルに攻撃を仕掛けてくる事もなく、右往左往している。

 ここでもう一撃食らわせば、おそらく算を乱して逃げ散るだろう。


 とか考えているうちにイリルが早速一匹に噛み付き、首筋を引き裂きながら地面に叩き落とした。

 うわぁ、元同胞相手なのに容赦ないな。

 (けしか)けた俺が言うのも何だが。


 っと、マズイ。

 イリルの攻撃が引き金になって、今にも蝙蝠共が逃げ出しそうだ。

 しかし逃がさん。


 俺はイリルに心話で〝無差別スキル使用につき注意!〟の意図を伝え、大きく息を吸う。

 使うのは微妙に久々【金切り声:Lv2】。


「キィィィィイイイイッッッ!!」


 俺の叫び声が岩壁に反響して何重にも響き渡った。

 直後、蝙蝠共の動きが目に見えて鈍る。

 混乱具合もより酷くなっており、ただ目的もなくふらふら飛んでいるだけという感じだ。

 さすがは蝙蝠共の天敵スキルと言ったところか。


 おっと、イリルは大丈夫だろうか……問題なさそうだ。

 普通に飛んで他の蝙蝠に噛み付いている。

 状態異常を受けた様子は微塵もないな。

 やっぱ眷属だから影響を受けないんだろうか?


 ともかく、蝙蝠共を倒すなら今のうちだ。

 俺は三度【マナボルト:Lv2】を発動させ、蝙蝠共を狙い撃つ。

 今度はさすがに全弾命中した。


《敵対者を討伐しました(x6)。経験値293を獲得しました》

《インプ【名称未定】はLvアップしました。Lv18⇒Lv19》


 またまたLvアップ。

 ほんと効率いいな。


 てかそろそろ進化が視野に入ってきた。

 あと2Lvアップで進化……するんだよな?

 Lv限界到達以外に進化条件がなければいいんだが……。


 まあ先の事はその時が来たら考えるとして。

 今は戦闘に集中しよう。


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