第一五話 害虫駆除
状態異常の脅威は去った。
その事に内心で胸を撫で下ろしつつ、敵への対処を考える。
ランク的には格上だが、身体能力はほぼ互角。
だが精神や魔力は俺の方が高いし、戦って負けるとは思わない。
というか【イグニスフィア:Lv2】を直撃させればそれで終わる。
とりあえず戦うとして、近接戦は避けた方が良さそうだ。
殴り合いでも勝つ自信はあるが、毒や麻痺攻撃に気をつけながら戦うのは面倒だからな。
それに近接戦だとダメージを受けやすいから、その回復でMPの消耗も大きくなる。
というわけで、遠距離から魔法で攻撃しよう。
初手は【イグニスフィア:Lv2】だ。
俺は魔力を操り、頭上に火球を二つ生成する。
その現象に驚いたのか、ラークセンチピードがビクッとして鎌首を仰け反らせた。
今さら警戒しても遅い。
俺は魔法を完成させ、ムカデへと火球を撃ち出した。
《魔法スキル【イグニスフィア:Lv2】がLvアップしました》
お、魔法Lvが上がった。
習得率補正があるおかげか、Lvアップが早いな。
天井の岩肌に火球が炸裂し、大きく炎を撒き散らす。
しかしその範囲内に標的の姿はなかった。
避けられた。
動いて躱せるタイミングではなかったのに。
その疑問の答えは、下へと落ちてゆく黒い影に気付いた事で得られた。
ムカデは咄嗟に天井から落下する事で己を救ったようだ。
敵ながら、見事な機転である。
あるいは吃驚した拍子にうっかり足を滑らせ、落ちてしまっただけという可能性もあるが。
冷静に分析しながら、俺は次の手を打つ。
前方に右掌を突き出し、その先に三本の魔力の矢を生成。
ちょうどムカデが地面に激突したタイミングで【マナボルト:Lv1】を撃ちこんだ。
墜落によるダメージでろくに身動きの取れないムカデに、それを避ける術はなかった。
三本の矢のうち二本が直撃、一本が至近に命中する。
そして着弾と同時に、矢は音もなく破裂して周囲に衝撃波を撒き散らす。
ムカデの体がビクン、と大きく痙攣した。
……死んだか?
いや、アナウンスがこない。
まだ生きてるな。
とはいえ、行動不能レベルの大ダメージを与えたようだ。
ムカデはピクリともしない。
これは好機だ。
イリルに止めを刺させよう。
というわけでイリルに念を送る。
指示内容は直接攻撃ではなく、【シャドゥーム:Lv1】による追撃である。
いくら相手が死に体とはいえ、油断はできないからな。
イリルに格上相手の接近戦をやらせるつもりはない。
先のコボルト戦の二の舞はごめんだ。
イリルは素直に指示に従い、【シャドゥーム:Lv1】を発動させる。
ムカデの全身を吸命の闇が包んだ。
さて、ムカデはあの中でどれくらい生きていられるだろうか。
【シャドゥーム】の魔法は効果持続型だが、魔力時間消費型ではないのでそう長くはもたない。
イリルの魔力値とスキルLvからして、二十秒もつかどうかだ。
それで殺しきれなかった場合は、俺が止めを刺そう。
などと考えつつ、十秒ほど待ったところで。
《敵対者を討伐しました。経験値219を獲得しました》
《インプ【名称未定】はLvアップしました。Lv15⇒Lv16》
《攻撃スキル【尻尾鞭:Lv1】を会得しました》
《耐性スキル【物理耐性(突):Lv1】を体得しました》
《耐性スキル【痛覚耐性:Lv1】がLvアップしました》
《一般スキル【尻尾触手:Lv1】を体得しました》
無事、ムカデを倒せたようだ。
そしてLvもアップ。
ついでにスキルもいっぱい増えた。
耐性スキルはさておき、【尻尾鞭:Lv1】に【尻尾触手:Lv1】か。
名前からして、尻尾による攻撃や作業を可能にするスキルだろう。
いつかは覚えるだろうと思っていたが、予想より早かったな。
便利そうだし、今後はどんどん使っていこう。
【シャドゥーム】の闇が晴れた後には、先ほどと寸分変わらない体勢でムカデが屍を晒している。
その光景を目にした俺は、ふとした切なさを感じた。
年齢とランクからしてコイツは、この岩窟では長生きかつ強者の部類だっただろうに。
弱肉強食が世の摂理とはいえ、ポッと出の俺に殺されるとはな。
戦いに身を置く者は、何時かより強い者の手にかかって果てるが運命という事か。
明日は我が身、という言葉が心に重くのしかかる。
そうならない為にも、今を全力かつ慎重に生きていくしかない。
感傷的な物思いに区切りをつけ、移動を再開する。
今度は奇襲を受けないよう、天井側にも注意を払いながら進む。
そうして数分ほど気を張って移動していたら、
《特殊スキル【気配察知:Lv1】を会得しました》
タイミング良く索敵系スキルを覚えた。
【気配察知】、これは索敵の要となる超重要なスキルである。
当然、勇者時代にも習得していたし頻繁に使ってもいた。
今回、すぐに覚える事ができたのはそのおかげだろう。
これもまた前世の遺産というわけだ。
何はともあれありがたい。
これで少しは奇襲される可能性が減った。
気分を良くして進んでいると、T字路に突き当たった。
イリルナビに従って右折する。
それから少しばかり進んだところで、開けた場所に出た。
奥行きのある長方形型の空間で、俺たちが元いた部屋の十倍くらい広い。
見れば手前と奥側の先で何本かの通路と繋がっている。
岩窟内における交通の要になってそうな場所だ。
言わば天然のターミナルか。
獲物を待つ狩りをするならここでやるのが良いだろうな。
もっともそれなりの戦力がないと無理だろうが。
そんな俺の感想、もとい意見を実践してる連中がいた。
連中、と言っても人ではない。
コボルトだ。
広間の奥の方で、数体のコボルトと多数の魔物が戦っている。
しかも大乱戦状態。
地面のそこかしこには、魔物の死骸が幾つも転がっていた。
魔物側(コボルトも魔物だが)で戦っているのは、イビルバットとムカデが沢山に、あとでかいトカゲが一匹。
トカゲの方は初見だが、たぶん勇者時代に戦った事のある奴だ。
たしか名前は……ヘビーリザードだったか?
ともかく、魔物たちの能力を見てみよう。
まずは魔物連合(?)の方からだ。
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《種族》魔獣種・ヘビーロックリザード
《名称》-
《性別》♂
《年齢》10
《状態》良好
《能力》
Lv:20/25
HP:2386/2450
MP:1140/1140
筋力:197
耐久:245
敏捷:132
精神:121
魔力:114
カルマ:-29
ランク:☆☆☆
固有スキル:
派生スキル:
種族スキル:
【体表岩化】【四肢再生(小)】【超嗅覚】
【暗視】【強力消化】【治癒阻害唾液】
技能スキル:
攻撃スキル:
【噛みつき:Lv5】【体当たり:Lv4】【薙ぎ払い(尾):Lv3】
【ヘビースタンプ:Lv3】
防御スキル:
【丸まる:Lv1】【機動回避:Lv1】
特殊スキル:
【同族連携:Lv2】【迷彩潜伏:Lv3】【悲痛な呼び声:Lv1】
魔法スキル:
耐性スキル:
【土耐性:Lv2】【物理耐性(打):Lv4】【物理耐性(斬):Lv4】
【物理耐性(突):Lv2】【石化耐性:Lv2】【毒耐性:Lv3】
【麻痺耐性:Lv2】
一般スキル:
【待ち伏せ:Lv4】【隠れ身:Lv2】【穴掘り:Lv1】
【岩掘:Lv3】
称号:
【闇夜の捕食者】
説明:岩場に生息するヘビーリザードが環境に適応して進化した種。
体格が一回り大きくなり、筋力や耐久力も大きく向上。
しかし敏捷さに欠け、動きが鈍重という欠点は変わっていない。
また、体表の大部分を岩で鎧っており、物理攻撃に対してはかなりの堅牢さを誇る。
戦闘においては、その体格と自重を活かした戦い方で敵を圧倒する。
基本肉食だが、定期的に岩も食べる。
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トカゲの正体はほぼ予想通りだが、進化種か。
それだけに相当強い。てか硬い。
能力やスキル的に見て、完全に物理特化した魔物だ。
ガチで殴り合ったら、イリルと二人がかりでも瞬殺されるだろう。
まあ実際に戦うとなったら、奴の攻撃が届かない空中から【イグニスフィア】を撃ち込んで丸焼きにしてやるが。
体がでかくて重いせいでノロマなコイツは、俺にとって相性の良い相手だと言えるだろう。
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《種族》魔虫種・ヒュージセンチピード
《名称》-
《性別》♂
《年齢》2
《状態》良好
《能力》
Lv:10/14
HP:241/480
MP:230/230
筋力:45
耐久:48
敏捷:50
精神:25
魔力:23
カルマ:-11
ランク:☆☆
固有スキル:
派生スキル:
種族スキル:
【鎧甲殻(軽硬)】【四肢再生(小)】【暗視】
【多足機動】【毒腺】
技能スキル:
攻撃スキル:
【噛みつき:Lv3】【毒牙:Lv2】【巻き付き:Lv1】
防御スキル:
【丸まる:Lv2】【機動回避:Lv1】
特殊スキル:
魔法スキル:
耐性スキル:
【物理耐性(打):Lv1】【物理耐性(斬):Lv1】【土耐性:Lv1】
【毒耐性:Lv2】【麻痺耐性:Lv2】
一般スキル:
【壁走り:Lv3】【待ち伏せ:Lv2】【隠れ身:Lv2】
【穴掘り:Lv1】【土中潜動:Lv1】
称号:
【闇夜の捕食者】
説明:魔物になって巨大化したムカデ。
獰猛な性格と強い毒性を有しており、そのうえ硬くて素早い。
知能は低いが、同種と群れを作って狩りをしたり、待ち伏せして獲物を襲う程度には賢い。
低ランクとはいえ、侮れない脅威を備えた魔物である。
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こっちはさっき戦ったラークセンチピードの下位種だ。
能力的には大した事ないが、数が多いのは脅威と言える。
しかも毒持ちだから、肉弾戦はしたくないな。
イビルバットの方は……今まで戦ったのと大して変わらんな。
あ、でも一体だけ、一回り体の大きい個体がいる。
まさか進化種か?
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《種族》魔獣種・イビルポイズンバット
《名称》-
《性別》♂
《年齢》5
《状態》良好
《能力》
Lv:15/24
HP:680/680
MP:750/750
筋力:70
耐久:68
敏捷:112
精神:64
魔力:75
カルマ:-26
ランク:☆☆☆
固有スキル:
派生スキル:
種族スキル:
【超聴覚】【翼飛行(普)】【吸血回復(微)】
【反響定位】【毒腺】
技能スキル:
攻撃スキル:
【噛みつき:Lv4】【ダイブアタック:Lv5】【毒牙:Lv3】
【毒爪:Lv3】
防御スキル:
【反射回避:Lv5】【機動回避:Lv3】
特殊スキル:
【超音波:Lv5】
魔法スキル:
耐性スキル:
【闇耐性:Lv2】【毒耐性:Lv2】
一般スキル:
【天井接地:Lv4】
称号:
【闇夜の捕食者】
説明:主に魔界に生息するイビルバットの進化種。
進化によって毒を生成し武器とする能力を手に入れた。
空中を高速で飛び回り、獲物の隙を突いて攻撃し毒を与えるという一撃離脱の戦いを得意とする。
下位種であるイビルバットの群れを率いて行動する場合が多い。
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……やっぱり進化種だった。
しかも毒持ち。
相性的にはコイツが一番危険だな。
【金切り声】が効けばその限りじゃないが。
進化個体についてはともかく、コウモリ共も数が多い。
ムカデより沢山いるんじゃないか?
パッと見、魔物連合の総数は約30体ってとこか。
正確に数えた訳じゃないが、そう外れてはいないだろう。
相手をするには危険な戦力だが、勝てれば大きなLvアップが望めそうだ。




