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第一四話 探索開始


 瞑想を始めてから数時間が経過し、ようやくMPが全快した。

 その間、何も起こらなかったかというと、そんな事はなかった。

 二度にわたって魔物が広間に侵入してきたのだ。


 早くも〝死の臭い〟が薄れてきたのか。

 あるいは前半休息時の数時間はたまたま運が良かっただけ、という可能性もある。


 なお侵入してきた魔物は15匹程度のグラトニーラットの群れと、イビルバットのペア(2匹)

 前者は育成のためイリルに多めに狩らせ、後者はお互い一体ずつ打ち倒した。


 その結果、イリルがLvアップした。

 俺の方は成長なしだが、イビルバットとの戦いで空中戦(ドッグファイト)の経験を積めたのは良かった。

 敏捷差があるおかげか、一対一なら十分に相手の動きについていけたし、最後は【マナボルト:Lv1】の偏差射撃で撃墜できた。

 ただまあ、戦闘効率を考えるなら空中はイリルに任せ、俺は地上から魔法で対空した方が良さそうである。


 戦闘以外でも収穫というか成長はあった。

 長時間の瞑想の結果、【メディテート:Lv1】のスキルLvがアップしたのだ。

 それと通常成長(・・・・)で魔力値が1ポイント上がった。


 この〝通常成長〟とは、読んで字の如く、通常の成長である。

 この世界ではLvアップによって能力が大きく増大するが、当然それ以外でも成長はする。

 加齢によって成長・老衰すれば能力値は増減するし、体を鍛えれば身体能力が上がる。

 ただその成長具合はLvアップほど劇的ではない。


 今回の俺の件で言えば、転生後半日ほどしか経ってないとはいえ、その短い間にかなり魔力を酷使した。

 言い方を変えれば自然と鍛えられた。

 それゆえの成長である。


 ちなみに素の能力値が1000を超えるくらいになると、一回二回戦闘しただけでも数値が伸びたりする。

 もちろん、戦闘の質というか内容にもよるが。


 これは数値的な比率で考えれば、そうおかしな事でもない。

 仮に能力値10の一般人が百回戦闘して1ポイント筋力値が伸びるなら、一戦当たりの成長率は0.1%である。

 それなら能力値1000の戦士は、一回戦闘しただけで1ポイント成長する計算になる。

 これは数学的根拠に基づいた当然の道理と言える。


 実際は個人の資質や種族特性など他の要因も大きく絡むから、ここまで単純ではないだろうが。


 さてさて、ここからは行動の時間だ。

 すでにやるべき事は決めてある。

 この岩窟の探検だ。あとついでにレベリング。

 できれば外への出口を把握しておきたい。


 なお休息中にイリルから多少の情報は得ている。

 ずっと瞑想してると飽きてくるので、時々中断してイリルとお話をしたのだ。

 イリルは言語を解さないので、やりとりに少々難儀はしたが。


 だが長時間、心話をしたおかげで【以心伝心:Lv1】のレベルが上がった。

 さらにイリルとの親睦もより深まったように思う。


 まあそれはいいとして。

 イリルからもたらされた岩窟内の情報についてだが……


1.イリルは岩窟内の構造をおおよそ把握している。岩窟の出口がどこにあるかも知っている。なお出口は二箇所ある。


2.岩窟内には大きな水溜りがある(池か地底湖?)。


3.コボルトの住処(集落?)が岩窟出口の近くにある。なのでそっち側の出口には近づかない方が無難。


4.岩窟内の深部には強い魔物(ボス?)がいるので行くのは危険。


5.少数のコボルトがたまに岩窟内で狩りをしている。


6.イリルの元同族であるイビルバットは岩窟(深部以外)と外で狩りをしている。


7.グラトニーラットは岩窟内のどこにでもいる。


8.岩窟内には長くて硬い虫(の魔物)もいる。不味くて食えない。


9.岩窟内より外の方が危険(魔物が強い)。


 以上の情報と今後の予定をすり合わせた結果、


 情報1・2、イリルにナビを頼んで現地まで行く。

 情報3・4、君子危うきに近寄らず。でもいつかは挑む。

 情報5~8、勝てそうなら狩る予定。無理そうならスルー。

 情報9、外出はもうちょっと強くなってから。具体的にはランク4くらい?


 という行動方針を定めた。


 とりあえずそんなわけで、俺とイリルは広間の外へと第一歩を踏み出したのである。




 そこそこ幅が広く、天井も高い随道を【魔翼飛行(遅)】を使って進む。

 MPが減るが、地上より空中の方が安全だし、何より速い。

 MP消費量も、巡航速度(適当)なら五秒に1減るくらいだから大して気にならない。


 今回の探索行の目的地はこの岩窟ダンジョンの出口だ。

 もちろんコボルトの集落がない方の、である。

 イリルのナビがあるため、最短ルートで迷うことなく辿り着けるはずだ。

 先のコボルトハンターのような強敵に出くわさなければ、だが。


 とりあえず探索というか移動を開始して数分といった所だが、今のところ魔物と遭遇する気配はない。

 いないならいないで面倒がなくていいが、レベリングはしたいという二律背反。

 ままならないものだ。


 そんな自分勝手な事を考えていたのが悪かったのか。


「キッ!」


 イリルが警告の声をあげたのとほぼ同時、頭上に気配を感じた。


 ――魔物かッ!?

 咄嗟に身を翻すも、少し遅かったようで翼に鋭い痛みが走った。


 やはり敵! そして攻撃を食らってしまったようだ。

 俺は全速で距離を取り、襲ってきた敵の姿を視界に入れる。


 ソレ(・・)は天井に張り付き、下方に向けて鎌首をもたげていた。

 その細長いシルエットから、一瞬蛇かと思ったが、違った。

 蛇は胴体から多数の足が生えてたりしない。

 コイツは――


 ムカデだ。

 しかも結構でかい。

 パッと見、体長2mくらいはありそうだ。


 奴はこちらを餌食にせんと、顎をカチカチ鳴らして好戦的な態度を見せている。

 その姿からは凶悪さより、おぞましさの方をひしひしと感じた。


 俺を攻撃したのは奴で間違いなさそうだ。

 おのれ害虫。

 すぐに駆除してやる。


 だがまずは情報収集だ。


=====================================

《種族》魔虫種・ラークセンチピード

《名称》-

《性別》♀

《年齢》4

《状態》良好

《能力》

Lv:14/23

HP:1060/1060

MP:550/550

筋力:104

耐久:106

敏捷:112

精神:61

魔力:55

カルマ:-26

ランク:☆☆☆


固有スキル:


派生スキル:


種族スキル:

【体色適応】【鎧甲殻(軽硬)】【四肢再生(小)】

【暗視】【多足機動】【毒腺】


技能スキル:


攻撃スキル:

【噛みつき:Lv4】【毒牙:Lv5】【麻痺毒牙:Lv4】

【巻き付き:Lv2】【落下重撃:Lv3】


防御スキル:

【丸まる:Lv3】【機動回避:Lv3】


特殊スキル:

【迷彩潜伏:Lv4】【気配察知:Lv1】


魔法スキル:


耐性スキル:

【物理耐性(打):Lv1】【物理耐性(斬):Lv2】【土耐性:Lv1】

【毒耐性:Lv3】【麻痺耐性:Lv2】


一般スキル:

【壁走り:Lv5】【天地無用:Lv4】【天井接地:Lv4】

【待ち伏せ:Lv4】【隠れ身:Lv3】【穴掘り:Lv1】

【岩掘:Lv2】【土中潜動:Lv2】


称号:

【闇夜の捕食者】【壷蟲の毒】


説明:ヒュージセンチピードの進化種。

他のセンチピード種と同様、強い毒性を有している。

また、生息環境に多い色や模様に体色を変化させる適応能力をもつ。

その迷彩能力によって地形や自然風景の中に紛れ、待ち伏せして獲物を襲う。

知能がそれなりに高く、敵や獲物を毒や麻痺毒で弱らせてから仕留めるという狡猾な戦い方が得意。

閉所では天井や壁に張り付き、下方を通る獲物を狙って飛びかかるというヒルのような行動を取る事が多い。

=====================================


 センチピード進化種、しかもランク3か。

 先のコボルトほどではないが、若干格上の強敵だ。


 イリル情報にあった長くて硬い虫ってのはコイツの事か。

 それと|上位種《|ラーク》がいるって事は、下位種のヒュージセンチピードもこの岩窟に生息してるな。


 勇者時代にもコイツとは戦った経験はある。

 種族説明にもあったが、ダンジョンなどでは頭上から奇襲してくるので面倒な相手だった。

 しかも毒持ちである事が厄介さに拍車をかけていた。


 ん、毒?

 ……あっ。


=====================================

《種族》悪魔種・インプ

《名称》-

《状態》毒・麻痺

《能力》

Lv:15/19+2

HP:665/700

MP:2499/2530

=====================================


 ぎゃー!

 さっきの一撃で毒と麻痺をダブルで入れられてた!


 あっ、なんか体が痺れてきた。やばい。


 慌てて俺は習得したばかりの【ルノーマ:Lv1】を使う。

 すると体が一瞬淡い光に包まれ、それから体の痺れが消えた。

 自覚症状はないがたぶん毒も。

 いやはや、覚えてて良かった状態回復魔法!


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