精霊魔法
精霊魔法
シーリンとルナの戦いが今にも始まろうとしていた。
ルナは黒いローブを着ていた。
魔女らしい服装だ。それにルナの手には黒い魔法が今にも放たれようとした。
黒い塊の魔法がシーリンの目を塞ぎ、シーリンは何も見えず、その場に立ちすくんだままだった。
シーリンはただ、驚いた。
「これは!何も見えない。」
ルナはシーリンを嘲笑した。
「ははは。これが私の魔法 ユニノース。目を塞ぐ魔法だ。人は暗闇に恐怖を覚える。そして、人は孤独に耐えられない。」
健司は今のルナの言葉を聞いて、ある推測をたてた。
魔女はトラウマから発生する。
なら、ルナのトラウマは孤独。この魔法を使える理由は、彼女自身が過去に経験したこと。暗闇!
そうか、彼女は暗闇を感じた時、孤独を感じたんだ。
僕がすることは…………。
健司はルナに優しく言った。
「あなたはもしかして、暗闇を経験した時に、そばに誰もいないと恐怖を感じたのではないですか?違います。あなたの側にはいるんです。もう1人のあなたが。」
ルナは健司を最大限警戒した。
この男、何故いい当てる事ができる?
心を読まれた?
いや、ただの偶然だ。何もできやしない。
「お前、それがわかったところでどうしようもない。私の魔法を破るのは不可能だ。それに人間、お前はただいるだけの存在だ。」
シーリンからブチっと、何か切れるような音がした。
同時に何か、寒気を感じた。
ルメははっきりと感じた。
シーリンから流れてくる異様な魔力を。
シーリン、切れてるね。健司の悪口は禁句。シーリンが普段優しいのは、健司がいるから。それだけ、健司を大切に思っている事だね。
シーリンは目を黒い魔法で閉じられているにも関わらず、余裕がある雰囲気だった。
「こんな魔法、大したことないですね。すぐに分かることでしょう。」
シーリンが手を合わせて、拝むように祈りを捧げた。
「精霊、精霊よ。光をてらしたまえ。」
すると、光が現れて、シーリンの目を塞いでいる黒い魔法が消えた。
ルナは訳がわからない顔をした。
「は?ありえない。私の魔法が消えるなんて!」
シーリンは諭すように言った。
「ありえない?魔法は無限の可能性があります。あなたは、そこが限界と諦めていませんか?私の魔法 ルミリア。光の精霊が光をてらしたのです。」
ルナはシーリンが精霊を使うと聞いて、ろうばいした。
精霊だと!精霊の使う魔女なんて、聞いたことがない。
いや、前に聞いたことがある。クロエさんに聞いたことがある。
東の方に自然と暮らす組織がいる、と。
まさか、その組織の一員なのか?
だが、こんなところで負ける訳にはいかない。
デスソシエは、裏切り者を許さない。あの組織は恐怖で成り立っている。
ここが落とされると、必ず耳に入ってしまう。
それだけは避けなければ。
「いくら精霊魔法が使えるといっても、所詮は守りのための魔法だ。私の魔法は止めやできない。」
ルナが再び、両手に黒い魔法が集まり、圧縮して魔法がシーリンに向けて放たれた。
この圧縮魔法は徐々に広がり、シーリンを包むように広がった。
ルナは勝ちを確定したかのように、
「ははは。この魔法は、コンプレノア。この魔法に包まれたものは空気すら、通さない。終わりだ、シーリン!」
健司は呼吸ができないシーリンを心配した。
「シーリンさん!」
健司は駆け寄ろうと動くが、ルメはスッと手で制した。
「大丈夫よ、健司。シーリンの強さが見れるよ。」
健司は黙って見てるしかないのか、と思い、
「わかったよ、ルメ。」
と、答えるしかなかった。
しかし、予想外の事が起きた。
ルナのコンプレノアの魔法が急に止まったのだ。
全然動かなくなったのだ。まるで何かの壁があるかのように。
すると、次の瞬間、黒い魔法はばらばらとなり、粉のように消えてしまった。
みんながシーリンの方を見ると、シーリンを覆う光の壁がうっすらと見えた。
シーリンはうっすらと笑みを浮かべた。
「分かりましたか?私の魔法ミュデミリア。光の壁が常時私を守っています。」
ルナはシーリンの言葉に理解出来ず、困惑した。
「は?嘘だ。そんな長い時間、魔法が続く訳がない。」
シーリンはさらに微笑んでいた。
「ふふふ。確かに、そんな長い時間は出来ません。だけど、この魔法は広範囲に広がる事ができるのです。例えば、この街くらいには。」
ルナは愕然とした。
ばかな、それではまるでクロエさんと同等の強力な魔法ではないか。
負けたな、私ができることはもう……。
「はは、私の負けだ。」
と、力なく地面に座った。
その時、黒い闇が健司達を覆うように広がっていた。
健司は闇が広がっていくのを見て、
「これは!最初に街を覆っていた時の。ルナさんの魔法ではないのか?」
ルナは力なく答えた。
「これはクロエさんの魔法。私はただ、広範囲の魔法が使えないんだ。」
シーリンが何かを考え込むようにして、急にシーリンを覆っていた光の壁が広がり、健司達と街を覆っていた闇を消し去り、光が溢れていた。
シーリンは晴れ晴れとした顔で、
「逃げていきましたか。おそらく、ここをもともと支配していた魔女ですね。クロエとかいう魔女でしょ。」
ルナは健司達を見て、悟った。
魔女でもこんな奴らがいるんだな。
ただ、この街ダサンを失った事で、デスソシエの組織は彼女達を狙うだろう。
それにクロエさんが動いたという事は、組織は切り捨てたに違いない。
また、1人か。
ルナから哀愁感が漂っていると感じた時、健司は優しく声をかけた。
「ルナさん、1人じゃないですよ。あなたのこと、住人から聞きました。魔女に反発して、連れ去られたと。みんなのためにやった事が誰も手を差し伸べてくれなかったんですね。孤独、それがあなたのトラウマですね。だったら、友達になりましょう。」
健司はルナに対して、手を差し伸べた。
ルナは最初躊躇ったが、こんな私でも友達になってくれるなら、と、ルナは健司の手を取った。
デスソシエの組織では、ボスの言う事は絶対。
組織の一員ですら、疑心暗鬼に陥っていた。
ただ1人、クロエさんだけは優しくしてくれた。
そのクロエさんですら、見限った。
でも、健司は優しくしてくれる。
「変わった奴だな。けど、健司なら信じられる。ありがとう。」
ルナは優しい笑顔を浮かべた。魔女になる前の笑顔だと健司はそう感じとった。
ルメとシーリンは、そんな健司を見て、
「まったく優しいだから。」
「ええ、それが健司さんの魅力ですからね。」
闇が覆っていた街ダサンは、光によって、本来の輝きを取り戻していた。




