感情の魔法
感情の魔法
アウレリアは、シーリンが言っていたあの国について考えていた。
(あの国ね。確かにあの国には、恨みはある。ただ、あの国には、あのお方がいる。あのお方は、光みたいな人。あのお方の前では、私ですら美しいと思えるほど。私達の目的は…………)
アウレリアは、シーリンをにらみつけるように、話した。
「それが何?私達は、復讐などはしない。復讐なんて無意味だからね。健司君は、故郷を追われたことはある?」
「いや、ないですけど。でも、生きてさえいれば、またいくらでもやり直せます。アウレリアさん、もうやめてください。」
アウレリアは、健司の考えを馬鹿馬鹿しいと思い、笑った。
「あははは、それは幻想というものよ、健司君。夢は叶わないものよ。」
シーリンとハレッサは健司の前に立ちはだかるように、健司を守った。
「ふふふ、健司さんはそれを可能とすることができる唯一の人物です。」
「健司君は、あなた達を救う。アウレリア、あなたもわかるはずよ、南の山ノースリエで見たはずよ。」
アウレリアは、確かに健司の魔法を見て、驚いた。
しかし、それでもこの世界には、敵わない魔女達がいる事を健司達は知らない。
「あなた達は、何も知らない。圧倒的な魔法を。それにこの世界は複雑よ。あなた達は、この先も自分の意思を貫く事ができるかしら?」
健司は、アウレリアの言う圧倒的な魔法が何なのかを知らなかった。
健司は、シーリンに、アウレリアの言う圧倒的な魔法について聞いてみた。
「シーリンさん、圧倒的な魔法とは何なんですか?」
シーリンは、健司の疑問に考察を交えながら答えた。
「噂では、北の方に5つの国があるらしいです。その5つの国は非常に仲が悪く、いつも争っているらしいです。おそらく、アウレリアがいいたいのは、その国に対しても同じ事が出来るか、みたいですね。」
健司は、訳がわからなかった。
魔女にどうして国が関係があるのか、と内心感じていた。
「どういう事ですか?国と魔女の関係性がよくわからないのですが。」
ハレッサは悲しそうな目で健司を見た。
「代理戦争よ。何で勝敗を決めてるのか、というと、魔女の勝敗よ。それで常に争っている場所がある。魔の五芒星。そこが戦闘地域よ。」
健司は、魔女が道具みたいに使われている事の事実に少し怒りを覚えた。
「ひどいです。魔女を道具みたいに使うなんて!」
その時、アウレリアが笑った。
「ふふふふふふ。健司君、始まりは違うのよ。ある魔女が国に売り込んだのよ。使ってくれと。当然、他の国も魔女を使わざるをえない。こんな世界でも、意思を貫けるかしら?」
健司は、アウレリアがどうしてこの話をしたのか、何となく分かってしまった。
(彼女は助けを求めているんだ。この世界を変えてくれ、と。)
健司は、強い意思を持って、答えた。
「助けますよ、その魔女もあなたもね、アウレリアさん。だって、それが僕の願いであり、ルメの願いだから。」
アウレリアは、健司の助けるという言葉に少しイラッとした。
「できるかしら?それにルメだっけ?彼女の素顔って、どんな姿なのかな?」
アウレリアは、試すような言葉で健司に聞いてみた。
健司は強い意思で、アウレリアに反論した。
「たとえ、どんなルメだって、信じます。だって、家族ですから!」
アウレリアは、健司の言葉にいちいち気になってしまう。
(何か、ムカつくわね。いつもみたいに受け流せばいいのに。何でかしら?)
「そんなに言うのなら、見てみる?ルメの本当の姿を。」
健司、ハレッサ、シーリンは、幻影にとらわれているルメを見た。
ルメの目には、信じられないような姿が見えた。
健司がハレッサ、シーリン、エルフェリアと仲良くしている姿だった。
ルメは、手を伸ばして、叫んだ。
「待って!私を置いてかないで!」
ルメがそう叫んだ瞬間、健司から返ってきた言葉は残酷だった。
「だって、いつも偽りの姿を見せてるルメに、僕らは必要じゃないよ、ルメ。」
健司は、そう言って、ハレッサ、シーリン、エルフェリアをともなって、去っていた。
ハレッサ、シーリン、エルフェリアは、そんなルメを見て、無関心な顔で去っていた。
ルメは膝をついて、力なく呟いた。
「みんな、待って。私は、1人になりたくない。ぐす、ぐす。」
ルメは、泣き崩れた。
そんなルメを後ろから見ているものがいた。
感情の魔女 ダリアだ。
彼女は、感情を自在に相手に使う魔女だ。
本来のルメなら、こんなことで泣いたりしない。
だが、泣いているのは、ダリアの魔法 エモーションだ。
エモーションは、色んな感情を与えて、増幅させる魔法だ。
ダリアの表情は、勝ったような顔をしていた。
(勝ったな。こうも簡単にいくとは。ルメ、模倣の魔法をいつ使うか、警戒したがたいしたことないな。)
ダリアは、右手に真っ黒い魔法を宿していた。
ダリアの魔法 エモーションブレイク。
感情を奪う魔法だ。
ルメはだんだんと顔が無表情になってきた。
ダリアは、ルメの顔を覗き込んだ。
「んー、成功したみたいだね。こうなったら、誰もあらがえない。ルメ、お前はどうでもよくなる。」
ダリアは、ルメから離れて、ここから去ろうとした。
しかし、ありえないことが起きた。
ルメが立ったのだ。しかし、いつもと様子が違う。
感情豊かなルメではない。
まるで、仮面が取れたような。
ダリアは、後ろからおぞましい魔力を感じた。
身震いするような感じがした。
「何だ、この魔力は?まるで、闇の中にいるような。」
後ろを振り向くと、ルメが静かに立っていた。
ルメの顔を見ると、口元だけが笑っていた。
ダリアは、生まれて初めて、不気味な人間を見た。
このルメは一体なんなのか。




