ミイナの涙
健司は、ミイナと対峙していた。
ミイナのきつい視線を浴びながらも、健司は毅然とした態度で、自信を持った顔をしていた。
ミイナはすぐに笑顔に戻っていた。
「私の魔法が効かないなんてね。驚きだわ。もしかして、魔法かしら。魔女がすぐにいるんでしょ?出てきなさい。」
ルメは魔法を解きながら、自信あふれた顔をして、
「私よ。私はルメ。あなたを助けに来たわ。」
ミイナは一瞬だけ、顔色が変わった。
嫌悪感を見せたようだった。
助け?無駄よ、あの人達のいう通り、人間はどこまでも自己中だから。それに、あの魔女、紅い髪の美人、私ですら目を奪わせる美貌、まさか!
「あなた、もしかして、はぐれの魔女かしら?この大陸マールンドでは、魔女はなりたての魔女以外は、どこかしらの組織に属しているわ。聞いたことがあるわ。4人ほど、はぐれ魔女がいる、と。」
健司は信じられないように驚いた。
はぐれ魔女?4人とは、ルメ達のことだ。しかし、組織に属しているとなると、厄介だ。
ルメは、ふっ、と笑った。
「確かに私のことだね。でも、それだけ自由だってことだよ。あなたとは違う。あなたみたいに自分を信じてない人に。」
ミイナは、ドス黒い魔力が放出して、手のひらを健司達に向け、
「黙れ!自由とは、力あるものだけが使える。おまえ達の言っている自由は、身勝手な事だ。もういい。おまえ達にも、眠ってもらう。私の魔法でね。」
ミイナのドス黒い魔力が放出して、健司たちに向かった。その魔力は魔法となり、眠くなるような歌が聞こえ
、健司たちに魔法で攻撃した。
「どう?これが私の魔法 ベスウーズ。これを聞いたものは眠くなるのよ。そして、私の歌からは逃れられない。」
しかし、ルメと健司はミイナの魔法ベスウーズをルメの魔法 イミテーションで防いだ。
ミイナは驚いた。健司達が全然眠らないから。
私の魔法が効かない?なぜ?魔法?
一体どんな魔法なの?
「一体何をした?それにどんな魔法なの?」
ルメは勝ち誇ったような顔して、
「私の魔法はね、模倣よ。イミテーション。あなたの魔法ベスウーズを使って、相殺したわ。」
ミイナは、絶望したような顔して動揺した。
「え?ありえない、そんな魔法聞いたことないわ。模倣だなんて、一回見せただけなのに。」
健司は、ルメの魔法がすごいと感じた。
すごい!一回見ただけなのに、模倣ができるなんて!
それに、あのミイナさん、動揺している。
真似されたから、もしかしたら彼女のトラウマは真似された?なら、助けられるのかもしれない。
その時、健司の頭の中にあるイメージが流れてきた。
ミイナさんと同じ歌を歌っている女性は、ミイナさんよりも美しかった。そして、1番評価されてるのはその女性。なら、これがトラウマなのか?一か八かもしれないが。
健司はミイナの目を見て、核心をついた。
「ミイナさん、あなたは過去に真似されて、ひどく傷ついたのでは?何だろう、過去にミイナさんと同じ歌を歌って、その女性の方が美しく1番評価されたのではないのですか?それがあなたを深く傷つけている、違いますか?」
健司の言葉を聞いて、ミイナは動きが完全に止まってしまった。
ありえないわ。私の過去を言い当てるなんて。これを知っているものはもういないはず。健司と言う男、末恐ろしい、警戒すべきだったのは、この男の方だったか。
「確かに、あなたの言う通り、私の方が評価されなかった。それが何?私、今では何とも思っていない。現にここの住民は、私の歌を聞きに来ている。」
健司は彼女が本心から言っているのを信じなかった。
どうすればいいんだろうか?
彼女のトラウマは根深い。
その時、ルメが、ちらっとこっちを見てきた。
そうか、僕の魔法、イメージで、彼女に見せればいいんだ。
「僕の魔法イメージであなたを変えてみせます。本来のあなたに。」
健司は目をつぶり、脳内でイメージをした。
ミイナさんが楽しく歌っている姿を、周りにはたくさんの人が集まっている。
このイメージを具現化し、この場にいる人たちに見せた。
本来のミイナさんが楽しく立っている姿、周りにはたくさんの人が集まっている。
それが現実に現れた。
ミイナはあたりを見回しながら驚いた。
「なにこれ?これは私?あの笑顔、笑っている私が?そうか、私忘れていたよ。1番初めに歌を始めたのも、最初はあんな感じだったね。そうだ、評価なんて気にしなければよかったんだ。」
これには、ルメも驚いた。
「さすがにここまでやるとは、健司大したもんだね。健司、彼女は救われたよ。あなたの魔法でね。」
こうして、健司とルメは、初めて魔女を救う第一歩となった。ミイナの顔は、清々しい顔だった。救われたんだなと、健司は感じた。
―――――――ミイナの視点――――――――――――
私はミイナ。歌で人々を元気にするため、日々活動していた。
最初は順調だった。歌を歌うごとに、観客も増えていった。
だが、ある時、私よりも美しく歌もうまい女性がいた。
その女性は、始めはライバルだと思っていた。しかし、悲劇なことが起きた。
私が歌っていた歌を彼女が歌っていたの。
次第にそれを聞いた観客たちは、あの女性の方へ行くようになってしまい、私は全てを失った。
それ私の曲だよ、なんで?そうね、歌なんてどうでもいいんだ、必要なのは歌う人。なら、私は歌が嫌いだ。
その時に、歌がトラウマとなり、魔法使えるようになり、彼女は魔女となった。
そして、魔女となった私は街をさまよい、ディーバと言う街に着いた。
そこにはある魔女がいた。
「ねぇねぇ、この街を支配してみない?あなたの魔法で!」
私はすぐに了承した。人間なんて、すぐに心変わりするから。
その日から、私はこの街ディーバを支配した。
しかし、健司の言葉を聞いて、私は1番最初に夢を見ていたことを思い出した。
人々を歌で元気にすること。
でも、魔女である私がこの街を支配してしまったから、住人から許されないよね。
その時、広場にいた眠っていた住人たちが目を覚まし、ミイナに
「ミイナさん、いつも素敵な歌ありがとうございます。あなたが歌う歌のおかげで私たち眠れるんです。」
ミイナはポロポロと、涙が自然と出てきた。
「ありがとう、みんな、私こそとても感謝しているよ。」
それを見ていた健司とルメは、互いに喜んだ。
「やったね、健司。」
「そうだね、ルメ。魔女を救えてよかったと思ってるよ。」
これが始まりに過ぎない事が、健司達にはまだ知るよしもなかった。




