歌姫がいる街ディーバ
歌姫がいる街ディーバ
西の大陸と東の大陸マールンドの境目付近で暮らしていた健司とルメは、旅をしながら魔女を救う目的で、家を出発して、東へと森を歩いていた。
ルメは相変わらず美人で、背中まで伸びる紅い髪に、赤いローブを着ていた。
何故ローブを着ているかというと、魔女は魔法を発動する時に、属性で色が分かってしまい、それを隠す為に、あえてローブで隠している。
逆に言えば、魔女だと示しているものだが。
火なら赤、水なら水色、みたいに。
健司はどこに向かっているのか分からないので、ルメに聞いてみた。
「ねぇ、どこに行くの?魔女がいる所?」
健司が不安を感じているのを感じたルメは、
「今から行くのは、このまま東に行くと、歌姫がいるとされる街ディーバ。そこは、歌姫がいて、聴くとみんな安らぎのような顔をして、眠るらしい。」
健司はまさか、という顔で
「まさか、魔女?しかし、歌姫なら、害がない?」
ルメは、健司の言葉を否定するように向き合った。
「いえ、害があるよ。強制的に歌を聴かせるみたいね。まぁ、魔女だからね。だから、私達はそこに向かう。」
健司は目を伏せて悲しそうな顔をした。
「悲しいですね。そんな魔法があるなら、みんなを楽しませる事ができるのに。」
ルメは健司の頭を撫でながら、
「大丈夫よ。健司にはおそらく、人の心が読める。魔女を癒していけばいいのよ。」
健司は笑顔になった。
「そうか!なら、その魔女も助けられるんだね。」
ルメは頷きながら、東の方向にある街ディーバへと歩いていった。
健司もその後についていくように、歩いていった。
だんだんと、重い空気を感じてきた。
何だろうか、この空気は魔力?
ここまで重いとは、これが魔女だというのか?
健司はだんだん息苦しさを感じた。
「ルメ、もしかして!これが魔女の魔力なの?」
ルメを冷や汗をかいた。
ここまでの魔力は想定外ね。昨日今日なった魔女ではないね。おそらく、数年は魔女になっている。
健司には、にが重いかもしれない。
「着いたわ。ここが歌姫がいる街ディーバね。確かに、ここまでの魔力はやばいね。街全体から感じるドス黒い魔力、魔女で間違いないわ。」
健司は吐きそうになった。
「うっ。何か感情が流れてくる。歌を憎んでいるような感情が。これは魔女のトラウマ!」
ルメは驚いた顔をした。
「健司、すごいわ。私には分からない。けど、もしそれがトラウマなら、つけ入る隙があるわ。」
2人は慎重に街に入った。
そこは、あらゆる歌が聴こえてくる街だった。
辺りを見回していると、悲しそうな顔を寝ている者、すごく喜んでいる顔、安らぎをしたような顔をしている者、さまざまな感情の顔をして寝ている者が多かった。
健司はこの街の住人に警戒をし始めた。
「ルメ、もしかして、魔女にこの街は支配されている?」
ルメもいつになく、真剣な顔をした。
「そうみたいね。さぁ、早く魔女を見つけて、元通りにしましょう。」
そう話している内に、ある声が聞こえた。
「皆さん、聞いてください!今日はあの有名な歌姫、ミイナさんによる歌の歌唱があります。場所は、ディーバの最大広場です。」
すると、歌声が聞こえなくなり、寝ていた住人が目を覚まして、広場へと歩いていった。
「ミイナ様の歌が生で聴ける。行かなきゃ。」
そう言い、住人は広場へと進んでいった。
ルメは健司の方を向きながら、
「健司、魔女を見つけたね、行くよ!」
健司はルメの手を引っ張り、
「待って!歌を聞いたら、この街の住人みたいに正気を保てなくなっちゃう。」
ルメは健司の肩に触り、
「安心して。私の魔法で防ぐから。」
すると、ルメの魔法が発動し、透明な膜みたいなのが健司達を覆った。
何だろうか、音が遮断されて、何かに包まれている感覚だった。
「ルメ、もしかして、ルメの魔法!しかし、どういう魔法なの?」
ルメは健司に詳しく魔法を説明した。
「この魔法はフィールド。あらゆる魔法を防ぐことができるわ。多少の魔法なら、この魔法で防いでくれるわ。」
健司は驚いた顔をして、
「すごい!もしかして、バリアを使えるの?」
ルメはすぐに否定した。
「私の魔法は模倣。この魔法も人が使っているのを真似しただけ。」
健司は信じられない顔をした。
ありえない、魔法は唯一無二じゃないの?模倣なんて、人を普段から見てないと、真似なんてできない。しかし、ルメの魔法が模倣なら、トラウマが真似!
なら、ルメもいつか僕が救ってあげる。他の魔女と同じように。
2人はフィールドの膜を張りながら、広場へと歩いていった。
すると、100人くらいすでに集まっていた。
そして、その前方に、金髪で美しい背の高い美人がいた。
彼女こそが歌姫であり、魔女であるミイナだ。
「みんな、ありがとう。たくさん、来てくれて。歌を聴いて欲しくて、私、いい歌を考えたの。聴いてね。」
ミイナの歌が始まった。
天使のような歌声で、寝てしまうような歌だ。
住人はすぐに眠ってしまった。
天国に行ったような顔だ。
「ふふふ、みんな寝たようね。」
ミイナは見下したような目をしていた。
歌なんて、所詮歌っている人次第で評価される。
ここの住人も同じ。見た目が綺麗な私を見に来てくれている訳。
この場から立ち去ろうとした時、1人の声が聞こえた。
「そんなことありません。素晴らしい歌だったです。あなたの歌を聴きに来たんです。」
健司は声を張り上げた。
ミイナは健司の方を見た。
少年?青年か。私の魔法が効かないなんて、あり得るのかしら。
「ふふふ、あなた、誰?」
健司はミイナの目を見て、答えた。
「健司です。あなたを助けに来ました。」
ミイナの魔力が跳ね上がり、健司にきつい視線を浴びせた。
「助ける?あなたでは何もできないよ、健司君。」
これが健司と魔女の初対面だった。




