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258  作者: Nora_
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07

「先輩もちゃっかりしていますね」

「まさか待っていてくれるなんて思わなかったよ」

「それで喜んでしまったわけですか、めめさんの言っていた通りの人ですね」


 めめが帰ってきても、抱きしめられていても出村さんは冷たいままだ。

 ちなみに、いまその七戸さんは再度一緒にいられるようになった男の子と仲良さそうに話している、それを僕らは少し離れたところから見ている状態だった。


「そもそもなゆ先輩もらしくないことをします、これまでのなゆ先輩なら『どうせ帰ってくるから大丈夫』とか言ってすぐに帰っていたところでしたのに」

「ああ、それは僕次第でめめが帰ってくるかどうかが変わってくるからだよ」

「そうですかね、私はそう思えませんが」


 ありがたいけど申し訳なかったから僕が消えてもこれからは家で待っていてもらいたいと思う。

 めめならちゃんと連れていくから、家にいてもらって見せないなんて意地悪をするつもりはない。


「だけど意外だな」

「意外、ですか?」

「うん、ひよりさんなら同じように待っていそうだったのにさ」

「ああ、私は――」

「話は終わったよ、みんなでご飯を食べにいこう」


 答えを聞ける前に七戸さんがやってきて終わった。

 ご飯を食べにいくという話は昼休みの内にしてあるから唐突に、なんてこともない。

 依然として出村さんにくっついているめめと七戸さんが並んで歩き、僕は少し後ろをさく君と一緒に歩いていた。


「ひよりは厳しいね」

「うん、だけど女の子ならあれぐらいでいいんじゃないかな」

「でも、めめもそうだけど謎にツンツンされても疲れちゃうだけだからやめてほしい」

「ははは、言うね?」

「玄太だって分かるはずだよ」


 こちらの場合は一緒に過ごした長さの違いから勘違いをすることにならないのはいい。

 あとはやっぱり僕の中ではめめとさく君が全てだと思っているから、全てのきっかけが二人という風にすれば楽だった。


「中華もいいよね」

「ファミリーレストランでいいと思いますけどね」

「私はがっつりお肉が食べたい」


 仲がいいのに今日の気分は合わなかったか。

 隣にいた彼には僕が聞いてみると「僕も合わせる」と、大人だ。


「仕方がないから大人の女として譲るよ」

「それなら私もめめさんに合わせますよ」

「え、えーいいの?」


 お肉ががっつりと食べられるお店も近くにあると言えばあるけどファミレスでもある程度は食べられるからそこにさせてもらった。

 お肉があればいいみたいで「これならひよりさんにも合わせられたね」とめめも嬉しそうにしていた。

 ただ、


「そうやってすぐにひよりに合わせようとするよね」


 と、彼女からは言葉で刺されてしまったけど……。


「ごめんね玄太、私に合わせると強制的にお肉になっちゃうね、だけど流石に私やさくの分まで頼んでもらうのは負担が大きすぎるから……うん」

「合わせる気がないならそもそもここを選んではいないよ、だから気にしなくていいんだよ」

「そっか、そういうところは好き」

「はは、ありがとう」


 僕以外がメニューと睨めっこ、それでも約五分ぐらいが経過した頃にみんな決まって注文を済ませた。

 うーん、だけどけちけちせずにそれぞれの分を頼んでおくべきだったのかもしれない、僕のからとなるといちいち気にしてしまいそうだ、あとは量的に二人が満足できない可能性もあるから。

 それとドリンクバーについてはずるをしている気分になってくるので僕は飲まずに二人に飲んでもらうことにした、しゅわしゅわが好きで本当に楽しそうに飲むからそれを見ているだけでも満足できるのだ。


「それだけでいいんですか? もしかして普段もそうやってめめさんやさくさんにあげているとか?」

「あんまり食べる方じゃないからね」

「はぁ……だからそんなに細いんですね」

「少なくとも太っているつもりはないよ」


 身長も高くないからせめてそこだけはと気を付けている状態だった。

 こういうことを言うと怒られるかもしれないから内に留めておくけど、頑張って食べても肉がつかないことを知っているからでもある。

 中学生のときは部活に入らなければならなくてそのときにもっと食べろと言われてやってみた答えがそれなのだ。


「大人の女としてあげよう」

「私も、先輩はもっとしっかり食べてください」

「なんかごめん、特に七戸さんには合わせてあげられなかったのにこんなこと」

「普段お世話になっているからいいよ」


 いや……まだなにもしてあげられていないけど、たまたまが重なって二人がいてくれているだけでね。


「今回のこれは私とさくが悪いけど、普段の玄太はちゃんとやらなくて困っているんだよ」


 毎日しっかり三食食べていても駄目とは厳しい子だ。

 それにふりかけご飯で終わらせてしまうとか、調理をしない日が連続した、なんてこともないのに。


「あとなにが不満かってすぐに寝ちゃうところだよね、二十一時半頃にはもう夢の中なんだよ?」

「ふふ、めめちゃんのそれはただ勝呂君に構ってもらいたいだけだよね」

「ち、違うよっ」


 感情的になってはいけない、相手にいつまでも自由にやられてしまうだけだ。

 違うなら違うと冷静に、相手に指摘されたことが本当のことだったら開き直っておくぐらいがいいだろう。


「さくさんに付き合ってもらうことはできないんですか?」

「……さくも玄太に合わせて寝ちゃうから駄目、それにさくってみんなで集まるときはすぐに黙るからね」

「そういえばそうですね、遠慮をしてくれているんですか?」

「ううん、ただ出しゃばる必要もないなってだけ、あと玄太が遠慮をするから一緒にいないと駄目なんだよ」


 僕に対する不満がいっぱいだあ……。


「結局先輩が原因、ですね?」

「みんな勝呂君に構ってもらいたいんだね」


 プラスに考えるならそうとも言えるか。

 向こうからはともかく僕からしたら悪いことではないから特になにかを言ったりはしなかった。




「今日は二人ともいないんですね」

「うん、七戸さんと出かけるんだって――って、出村さんは誘われなかったの?」

「誘われましたけど断りました、こういうときでもないと先輩に言いたいことを言えないので」


 そ、そうだろうか、彼女は結構ずばずばと言ってきていたと思うけど。


「よく分かりませんが不満があります」

「そ、そうなんだ?」


 〇〇だから不満だとは言われたことがあるものの、よく分からないからというのは初めてだった。

 あと物凄く嫌そうな顔をしている、ただ存在しているだけで相手がこうなるのは僕ぐらいではないだろうか。


「めめさんに優しすぎます」

「支えてくれた子だからね」

「あとは……この傷ですね」

「見えないように隠しているから格好つけていたりしないよ?」


 というか、これを晒していたら無駄に心配されそうだった、心配されなかったらそれはそれでなんかあれなので引き続き隠していくだけだ。


「……もう痛くないんですよね? でも、これだけはっきり残っているので気になるんです」

「夏はどうしようか」

「ずっと薄長袖でいる男の子もいますからそれでなんとか乗り越えるしかないでしょうね……って、なんで話を逸らしたんです?」

「一応傷関連の話だよね?」


 それに彼女自身も夏は薄長袖でいたり、日傘をさしていそうだった。

 まあ、まだ十二月でこれから真冬がくるわけだから話を逸らすなと言いたくなってもおかしくはないのかもしれない。


「そういう心配をしているのではなく……」

「でも、出村さんが悪いわけじゃないから。これがきみとか七戸さんを守った結果の傷! ならよかったんだけど違うからね」

「あなたのおかげでめめさんやさくさんといられているわけで、守ってくれたのはその通りではないですか?」

「え、違うよ」


 彼女の言う通りに考えるなら彼女達を守ってくれているのはめめとさく君だ。

 言葉で攻撃してきてばかりの子よりはいいかもしれないけど謎に高評価なのもやっぱりよくない。

 褒めてもらいたくて彼女といるわけではないし、せっかく二人きりなのだからもっと言いたいことを言えばいいのに。


「む、先輩はすぐそうやってっ」

「落ち着いて、あと言いたいことがあるならちゃんと言えばいいよ。多分、逃げないで聞くよ」


 人間だから感情的になることもある、だから前のめめもほとんど変わらない存在だったということか。

 彼女に関してはそれでもこの勢いを利用してそれ以上なにかを言ってくることもなく僕の腕を掴んでいるだけだった。


「あの」

「うん? あ、君はこの前の」

「はい、先輩も七戸先輩と一緒にいましたよね」


 男の子だけど可愛らしい見た目をしているから気に入る人も多くいると思う。

 昔に友達だったあの子ならもう放っておかないだろうな~なんて想像をしてすぐにやめた。


「出村さんに用があったんだよね? 僕は少し離れているから――出村さん、離してくれないとこの子が話せないよ?」

「今日はどうしたんですか?」


 なんか捕まえられているのって微妙だなあ。


「あ、お姉ちゃんがこの前のお礼にご飯を食べにいかないかって」

「でも、お手伝いのお礼として五百円を受け取りましたからね」


 一回五百円か、地味に大きい数字だから僕だったら何回でも受け入れたいところだ。

 そうすれば僕にとっての必要な勉強道具などは自分で買えるようになる……って、意味もない妄想だけど。

 しかもこれは彼女だからこその値段だろうしね。


「過剰になってしまうので断っておいてください」

「ただ食べにいくのはどう?」

「それなら……別に誰に迷惑をかけているわけではありませんからね」


 おーいおい、それよりもこっちだ。

 確かに彼も遠回りなやり方だけど彼女ももう少しぐらいは気づいてあげるべきだ。

 あと、気になる女の子を誘うときに余計なものがいて本当に申し訳ないと思う。


「そうだ、僕もそろそろ家に帰ってご飯でも作らないとなあ」


 本当なら彼女がいきたいところにでも付いていって十九時頃ぐらいまで遊んでくるらしいめめ達といられない時間をなんとかしたかったけどこれは仕方がない。

 空気が読めない存在にはなりたくないのだ、彼女だってそれぐらいは分かってくれるはずだ。


「それじゃあまた、出かけるなら気を付けてね」


 よし、帰るっ。


「ただ今日急にというわけにはいかないので今度の土日のどちらかにしましょう」

「うん、じゃあお姉ちゃんに言っておくね」

「はい」


 おかしいなあ、全く進めていないなあ。


「先輩、邪魔をしてすみませんでした、出村さんのことをお願いします」

「え、あ、ちょ」

「それでは!」


 おーいおい、君もそれでいいのか。

 まだ自分だけではなんとかできないからお姉ちゃんのことを出してなんとかしようとしてくれていた方がマシだった。

 あれではまるで本当に頼まれたから伝えに来ただけみたいじゃないか。


「まったく、なに変なことをしているんですか。すぐに勘違いをする癖、なんとかした方がいいですよ」

「い、一応聞いておくけどさ、出村さんとあの子は物凄く仲がいいとかそういうのはないの?」

「仲は悪くありませんけど凄く仲がいいなんてことはありませんよ、どちらかと言えばあの子のお姉さんとの方が仲がいいぐらいです」

「そ、そうなんだ」

「はあ~」


 それこそ物凄く大きいため息だった。


「なにか食べにいきませんか? あ、今回は絶対に先輩のいきたいところにいきますが」

「いま断ったのにいいの?」

「今日は先輩と一緒にいたので先輩が優先される日なんです」


 ありがたいけど積極的にお金を消費するのは避けたいところだ。

 本当にわがままで申し訳ない、でもお小遣いとして貰っているわけではないからあんまり豪遊もできない。


「あーだけどごめん、食べたばかりでいくのはあれだから今日は帰るよ」

「それなら私も先輩が作ったご飯が食べてみたいです」

「じゃあ一緒に食べようか」


 そういうことなら大歓迎だ、父とだって最近はろくに話せていないけどナイスだと言ってくれるはず。


「い、いいんですか?」

「うん、出村さんがいいならいこう」


 ほっ、外で食べなくて済んだ。

 あれは楽でいいけど慣れてしまうともっと作らなくなってめめに言葉で刺されるようになってしまうから気を付けなければならない。


「せっかく出村さんが来てくれるんだからいまからなにか買いにいこうか」

「あの……」

「うん、なにか食べたい物がもう出ているのかな?」


 ありがたいな、スーパーで悩むと本当に時間だけが溶けていくからこれならすぐに帰って調理に取り掛かれそうだ。

 長くうろちょろしたせいで万引きをするために来ているとか思われても嫌だし、見られていないとしても気になるものは気になるから、うん、本当にありがたい。


「ひより……でいいですよ」

「一人でいいですよ……じゃなくて名前で呼んでいいってことだよね」

「はい」


「いまの面白いと思っているんですか?」とか言われなくてよかったあ。

 しかし……これは最近の子特有のことなのだろうか? 一人で慌てることにならなかったことだけが救いと言える。


「じゃあ、ひよりさん」

「呼び捨てでいいです」

「いや、ここはさんをつけておくよ」

「そうですか? まあ、先輩がそうしたいならいいですけど」


 プラカードを持っている人がいて全てが仕組まれたことだったと分かるような展開ではないよね?

 たかが名前呼び程度でと慣れている人からは言われてしまうかもしれないけど不安になってしまった。


「なに情けない顔をしているんですか」

「夢オチとか……いたずらの類とかじゃないよね?」

「いたずらでこんなことは言いません、あとこうして」

「いたたっ!?」

「はい、起きていることが確定しましたね、めでたしめでたし」


 これはもう不満が溜まっていたからつねることで解消させたかっただけではないだろうか。

 ただ、余計なことを言おうものならもっと酷くなりそうなので急いで帰って調理タイムへ。


「慣れているんですね」

「最近はさく君がいるけど当時はめめしかいなくて凄く頑張ったからね」

「はい、他の女の子の名前を出さないでください」


 む、難しいな。

 でも、結局手伝ってくれることになって仲良く二人で作れたのはいいことだった。

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