【外伝・大学生編】第4話『記録の扉、その先へ』
薄暗い資料整理室。
澪の手の中には、埃をかぶった小さな木箱があった。
金の蝶番。剥がれかけた封蝋。
そして、蓋の中央に浮かび上がるように彫られた紋章――
それは、王国ルヴィエールの王家に代々受け継がれた“印”だった。
「……間違いない。これ、あの人の……」
澪がゆっくりと蓋を開けると、そこには一通の古びた手紙が入っていた。
『記録者へ』
そう、たった一言だけが書かれた封筒。
中を開くと、まるで今この時代に書かれたかのように綺麗な文字が並んでいた。
“君がこの手紙を読んでいるということは、
王都ルヴィエールの記録が、確かに現代へ届いたということだ。
私たちは遠い昔、魔王と共に世界の命運を担った。
君の名が《澪》であるなら――きっと、その魂は知っているはずだ。
どうか、私たちの物語を継いでほしい。
未来に生きる君に、この願いを託す。”
差出人の名はなかった。
けれど澪には、確信があった。
──これは、“あの子”たちの誰かが書いたもの。
リアム? フィリア?
それとも、もっと後の、誰かが。
彼女たちは、あの世界で「未来に記録が届くように」と、手紙を託したのだ。
澪は震える手で手紙を胸に抱きしめる。
「……継ぐよ。私が、全部。あなたたちの記録を」
もう一度、あの世界に行けなくても。
もう一度、あの人の手を取れなくても。
でも、“記録”としてなら――澪は、その扉を開けられる。
◆
翌日。
澪は天海准教授に、正式に“記録研究室”への所属を希望した。
「私は、誰かの物語を綴りたいです。
歴史じゃなくて、“生きていた”人たちの、その声を――」
准教授は一瞬目を見開いたあと、静かに頷いた。
「なら、きっと君は……継承者だよ、如月さん」
──次回、第5話『語られるは、君の声』
澪は卒業研究として“異世界王国ルヴィエールの非公記録”を執筆し始める。
教室で、彼女の物語を聞く学生たちが現れ始める――
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