ぼくとトイレのぺろりんさん09
その時、足のあいだから何かがシュッと飛び出した。
「え? 何! ふん!」
足のあいだからひものようなものがドアの外に出てうごめいている。
ンベロベロベロベロベロベロ! ベチャベチャベチャベチャベチャベチャ!
「あわわわっ!」
「あぎぎぎっ!」
「あひひひっ!」
ンベラベラベラベラベラベラ! ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ!
「んがっ……!」
「んぐっ……!」
「んごっ……!」
バタバタバタ!
聞いたことがない音とさけび声がして、何かがたおれる音がした。
足のあいだにあったひもがシュッとひっこんだ。
「トイレを~こわしちゃ~ダメ~」すわっている便器の奥のほうから声が聞こえた。
「ひっふん! だ、だれ? ふん!」
足のあいだをのぞきこんで耳をすましたけど、何も聞こえなかった。
「こ、声が聞こえたけど気のせい? ふん!」
外がしずかになっていたので、おそるおそる出てみた。
すると、そこには3人のヤンキーみならい中学生がたおれていた。
どうしてだかわからないけれど、体じゅうべとべとになっている。
「さっきたおれたのは、この中学生たち? それにこのべとべとは、いったいなんだ? ふん!」
「あの~」
うしろから声が聞こえたのでふりむくと、便器から長い舌が出ていた。
「ひっふん!?」
びっくりしていきをのんだ。
な、なんだ? あれは! 舌のように見えるけど、ずいぶん長いな。
さっき便器から飛び出したひものようなものは、あの舌だったのか?
よだれがだら~って出てて、なんかすごくぶきみだ。こ、こわい。
中学生たちの体についていたべとべとは、あのよだれなのか?
「だれにも~いわないでね~」
トイレの便器から出ているぶきみな舌にそういわれ、おれはあわてて口をふさいで何度もうなづいた。
「いわない。だれにもいわない! ふん!」
そうするうちに舌はさっと便器の中に消えていった。
そーっと便器をのぞきこんだけれど、中には何もいなかった。]
あれはいったいなんだったんだろう? おばけ? 妖怪?
だれにもいわないで」っていっていたけど、このことをだれかにいったらどうなっちゃうんだ? のろわれちゃうのか?
……きっとそうだ。あれは、のろいの舌だ。このことをだれかにいうと、べとべとにされておれはのろわれるんだ!
こわくなったおれは、トイレから飛び出して家にいそいで帰った。
びしょぬれで、おしりもふかないままだったけど気にしていられなかった。
どうやら、おれがトイレから飛び出していくのを見かけたヤツがいたらしい。
そいつがトイレに入ったら中でたおれている中学生を見つけた。
そして、そいつはその時トイレから出てきたおれが中学生をぶっとばしたとかんちがいしたんだ。
こうしておれの中学生ぶっとばし伝説は生まれたんだ。
それから、おれはトイレののろいの舌との約束を守り、本当のことをだれにもいっていない。
本当のことをいえば、中学生をぶっとばしたのがおれじゃないことがわかるけど、あの舌にのろわれるからいえるわけがない。
そして、おれは思わず本当のことをいってしまわないように、あまりみんなとしゃべらないようにした。
すると、みんなは無口なおれのことを勝手にこわがるようになったんだ。これが伝説の真実だ。
ちなみにトイレをこわしたヤンキーみならい中学生たちは、トイレの修理代をべんしょうすることになったそうだ。
もちろんじぶんたちにははらえないので、かわりに親がはらうことになった。
そして、そのお金をおこずかいやお年玉から親に少しずつかえしていて、それは今でもつづいているらしかった。
つづく




