ぼくとトイレのぺろりんさん10
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン!
しゅうぎょうのベルがなった。
みんなそれぞれグループになりながら帰っていく。
でも、デーブだけはひとりでのっしのっしと歩いていく。
ぼくは、お礼をいうためにデーブのあとをつけた。
しずくがぺろりんさんと出会った公園のよこまできた時、ちょうどまわりにだれもいなくなった。
「よし、今だ!」
ぼくがデーブに近よると、デーブが公園の中に入りトイレのほうに向かっていった。
「あれ? おしっこでもしたくなったのかな?これはこれでチャンスだ。トイレでふたりきりになれるから、ほかの人に見られなくてすむぞ」
ぼくも公園の中に入っていった。
雨森に話しかけられてあののろいの舌のことを思い出したおれは、公園のトイレにいってみることにした。
あれから何年もたつけど、こわくて公園のトイレには一度もいっていない。あの舌はどうしているだろう? 気になるな。見に行ってもだいじょうぶだよな。
そういえばあれって、今みんながウワサしているべろんってヤツなのかな? それも気になるな。
デーブがトイレに入っていった。ぼくもあとからついていく。
デーブは個室のほうを気にしているようだ。
うんちがしたいのかな? だったら、もらしちゃうとわるいから、さっさと話をすませちゃおう。
人に対する気使いがたいせつだとお父さんもいっていた。
ただ、お母さんが、お父さんの気使いはよくからまわりするっていっていた。
「あの……、出井くん」ぼくはそっと声をかけた。
「ふん?」デーブがふりむいた。
「あ……」
うっ、こわっ。しんぞうがバクバクする。
でも、だまっちゃダメだ! お礼をいわなきゃ! よし、いうぞ!
「……き、きのうは助けてくれてありがとう。じゃあ!」
よし、おわった! いそいで帰ろう! さあ帰ろう! すぐ帰ろう!
お礼をいいおえたぼくは、ダッシュでトイレから出ようとした。……でも、つまづいてコケた。
「だあっ!」
ドテッ!
「いて~」
「きのうって、おれ何かしたか? ふん!」
デーブが話しかけてきた。見あげるとデーブの顔が目の前にあった。ひょえーっ!
「うわわわ! いやいや、べつにそんなたいしたことじゃ……」
あわてて立ちあがろうとしたけれど、思っていたよりも強くひざをうったのか、うまく立てなくてしりもちをついた。
ドスン!
「あいた! いたたた~。あー、ズボンやぶれちゃったよ。お母さんにおこられるかなあ。困ったな」
「たれる~だいじょうぶ~」
そこにぺろりんさんの舌が、しんばいそうに便器から出てきた。
「ぎゃーっ! 出たーっ! ふんがふーん!」
とつぜん、デーブがさけび声をあげた。
「だ、だれにもあのことは、いってないよ! いってないから! のろわないで! ふふん!」
デーブは大さわぎをしている。
ぺろりんさんの舌を見てびっくりするのはわかるけど、こんなにさわぐことはないんじゃないかな?
よく見ると、さわぐというよりもこわがっている感じだ。
「やめてー! やめてー! ぶわわーん!」
ついにデーブは泣き出した。
はな水をたらしながら、大泣きしている。
いったいどうしたんだろう? ぺろりんさんって、そんなにこわかったっけ?
「出井くん、おちついて」
「ぶわーん! 助けてー! ぶわわっ!」
はな水をまきちらしながら、デーブがぼくにだきついてきた。
デーブの怪力にぼくはしめあげられる。
「ぐ、ぐるじ~……」
「助けて、ぶわーん!」
助けてほしいのは、ぼくのほうだ。
デーブにしめあげられ、じたばたしていると、ぺろりんさんの舌がデーブをちょんとつっついた。
「力を~ぬいて~」
「ぶわぎゃーーん!」
ぺろりんさんにさわられて、ものすごいさけび声をあげたデーブから力がぬけた。
どうやら、デーブは気をうしなったみたいだ。
ぼくは、ぜんぜん動かないデーブにおしつぶされている。
デーブの怪力にしめあげられるのもくるしいけど、デーブにおしつぶされるのもくるしい。
力がぬけた人間ってこんなに重いんだ。すごいなあ……。
いやいや関心しているばあいじゃない。このままじゃ、いきができない。
「だ、だれか、だずげで~」
すると、それまで重くのしかかっていいたデーブが急に軽くなった。
「たれる~だいじょうぶ~?」
ぺろりんさんの舌がデーブを持ちあげて、ぼくの上からどかしてくれた。
「助かったあ。ぺろりんさん、ありがとう」
「どういたしまして~」
「んしょっと」
体についたどろをはらいながら、ぼくは立ちあがった。
デーブにお礼もいったし、家に帰ろうかと思ったけど、気をうしなったデーブをこのままにしてはおけない。
「どうしよう。ぼくの家につれていくにしても、デーブをぼくひとりじゃはこべないし……。う~ん、困ったな」
「まかせて~」
ぺろりんさんの声が聞こえた。
つづく




