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トイレのぺろりんさん  作者: 田中たんばりん
第1話 ぼくとトイレのぺろりんさん
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6/17

ぼくとトイレのぺろりんさん06

その日の夜、ぼくはぺろりんさんにお礼をいいに家のトイレに入った。


だれかに助けてもらったらお礼をいう。

これは、ぼくのおばあちゃんがいつもいっていることだ。

助けてもらったお礼をいえば、また困ったことがあっても、まただれかが助けてくれるということらしい。


ぱん! ぱん! 

便器の前で柏手かしわでを2回打って、「雨森あまもりたれるです。しずくの兄です。ぺろりんさん、きょうはありがとうございました」といって、おじぎをした。


すると、「しずくの~お兄ちゃ~ん、ぼくは~神様じゃないよ~」と声がして、したがぺろっと出て来た。


「うわっ!」


ちょっとドキッとしたけど、ぺろりんさんはこわい妖怪じゃないと思ったせいか、さいしょみたいにおどろかなくなっていた。


挿絵(By みてみん)


「あ、ぺろりんさん。昼間はありがとう」


「どういたしまして~。困ったことが~あったら~またいってね~」


「……ちょっといい? あのさ、ぺろりんさんってなんなの? 妖怪?」


ちょっときょうみがわいたので、ぼくは、おそるおそる聞いてみた。


「よくわからない~。ぼくは~ぼくだよ~」

舌はぺろっと便器の中に消えていった。


しずくがいっていたように、ぺろりんさんはじぶんのことについて「よくわからない~」ことが多いようだ。

そして、なんでぺろりんさんがいるのかなんて、どうでもよくなっていた。

ぺろりんさんは、たしかにいるのだ。


挿絵(By みてみん)


トイレから出るとお父さんが立っていた。


「たれる、トイレでだれかと話をしていたか?」


「ううん、ひとりごと」


「そうか、だったらいいんだ。また変質者へんしつしゃでもいたのかと思ったぞ。いいか、へんなヤツがいたらお父さんにいうんだぞ」


「うん」


お父さんのうしろで、しずくが口をおさえてわらっていた。

お父さんがいなくなったあと、しずくがいった。


「これで、お兄ちゃんもぺろりんさんとお友だちだね」


「ちがうよ。お礼をいっただけで、友だちじゃないよ」


「ううん。お話ししたら、お友だち!だよ」


「なんだよ。そのお話ししたら、お友だちって。そんなにかんたんに友だちになれるわけないじゃん。まったく、しずくのお友だち理論りろんにはついていけないよ」


「えー、お友だち理論って何?」


「なんでもかんでも友だちになっちゃうってことだよ」


「いいじゃん。みんなお友だちで! ぺろりんさんとおっともだちー!」

ぼくのあとをしずくがはしゃぎながらついてくる。


「うるさいなあ、もう」


挿絵(By みてみん)


そうはいったけど、どうなんだろう? ぼくはぺろりんさんと友だちなのかな?

だいたい、今ふつうにぺろりんさんと話ができちゃったもんな。

ぺろりんさんと友だちなのかも?ってぼくは思った。


それより、ぺろりんさんにお礼をいったら、こんどはデーブにもお礼をいわなくちゃいけない。

でも、デーブに話しかけるのはこわいなあ……。

しずくのお友だち理論によるとお話ししたらお友だちだから、デーブと友だちになっちゃうのかなあ。

ん~、それこそそれはないな。


デーブには、ある伝説があった。それは小学3年生で中学生をぶっとばしたという話だ。


あるヤツが公園のトイレにいった時、中からあわてて出てきたデーブとぶつかりそうになったそうだ。

そいつが中に入ってみると3人の中学生がたおれていたという。

どうやらトイレに入っていたデーブを中学生たちがからかったみたいで、それにおこったデーブが中学生をぶっとばしたんじゃないかということだった。


その話は、あっというまに学校じゅうに広まり、デーブをおこらせるとこわいということになった。

それから、みんながこわがって、デーブにあまり近づかなくなってしまったんだ。


挿絵(By みてみん)


つづく

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