ぼくとトイレのぺろりんさん05
それから数日後、ぺろりんさんとのしょうげきの出会いをわすれかけたころ、ぼくは困ったことになっていた。
「トイレットペーパーが……ない」
学校のトイレに入り、うんちをすませたところでトイレットペーパーがないことに気がついた。
家につづいて学校でもトイレットペーパーがないとは、とことんぼくは運がない男かもしれない。
いや「うん」は今ぼくのおしりにある。
これをなんとかきれいにして真の「うん」のない男にならなければいけない。
「なんで、トイレットペーパーがあるかどうかたしかめてから入らなかったんだろう」
学校のトイレは、シャワートイレじゃないから、このままだとおしりにうんちをつけたままになる。
におうのは、やだな。だからといって、だれかをよんで、トイレットペーパーを持ってきてもらうのもちょっとはずかしい。
なにより、うんちをしていたことがクラスの話題になってしまう。
とくに男子は「うんち」というだけで大爆笑がとれる。
男子は「うんち」にやたらこうふんするのだ。
ギャクがすべってもさいごに「うんち」といえば大爆笑。話の流れなど関係ない。
そう、さいしょから「うんち」とさけびつづければいいのだ。
だから、うんちをしていたのがばれると、からかわれて、わらわれることになるのだ。
「うんち」「うんち」「うんち」頭の中をうんちがぐるぐるまわる。
ああ、男子のトイレも女子のトイレみたいに個室だけなら、おしっこかうんちかわからなくていいんだけどなあ。
「困ったなあ……」
シュワーッ!
すると、とつぜんシャワーがおしりをあらってくれた。
「え? いつからシャワートイレになったの? でも、これできれいになったぞ」
さあ、シャワーを止めようと思って、まわりを見たけどシャワーのボタンなんかない。
「まさか……」
そーっと足のあいだから便器をのぞくと、ちろちろと動く舌が見えた。
「きれいに~なったよ~」便器の中から聞きおぼえのある声がした。
トイレのシャワーかと思ったのは、ぺろりんさんが口からふき出した水だったのだ。
「で、出たーーっ!」
ドンガラガッシャーン!
ぺろりんさんとのしょうげきの再会におどろいたぼくは、おしりをまる出しにしたままトイレからころげ出てしまった。
「うんちしていたの、たれるかよ!」
運わるくトイレにクラスの同級生がいた。
ぼくがうんちをしていたのが、ばれてしまった。ああ、うんちしてたのをいいふらされる……。
「こっちはだれだ~?」
ぼくのとなりでもだれかがうんちをしているらしい。
だれか知らないけど個室に入っているきみ、今は出てこないほうがいいよ。
「ふん!」
バン! 大きなはないきとともにいきおいよくドアが開いた。
中から出てきたのは、おなじクラスの「デーブ」こと出井武だった。
デーブは、みんながおそれるある伝説の持ち主だ。
らんぼうではないが、あまりしゃべらないのとその伝説のせいで、デーブのことをよく知らないのにみんなが勝手にこわがっている。
特長ははないきがあらいこと。
「おれもしてたぜ、うんち。ふん!」
デーブは、のっしのっしとトイレから出ていった。みんなその場に固まり、だれも声が出なかった。
その日、ぼくが学校でうんちをしたことをだれも話題にしなかった。
話をすれば、ぼくといっしょにうんちをしていたデーブににらまれるかもしれないからだ。
ぼくは、うんちをつけたままじゅぎょうを受けそうになるところをぺろりんさんに、「うんちたれる」というあだ名がつきそうになるところをデーブに助けられた。(おしりまる出しだったけど)
ぼくを助けてくれたぺろりんさんは、しずくがいうようにこわい妖怪じゃないなのかもしれない。
つづく




