ぼくとトイレのぺろりんさん15
「こら、しずく! デーブじゃない、出井くんだよ」
「えー、みんなデーブってよんでるよ」
いやいや、みんなかげでデーブってよんでいるんだ。本人を前にしてよんではいないぞ!
「あー、ふたりでココアのんでずるい。わたしももらってこよっと」
しずくはランドセルをじぶんのつくえにおくと、そそくさとココアをもらいにへやから出ていった。
ぼくはデーブとふたりきりになってなんだか気まずい。
「ごめん、出井くん。いもうとが変なこといって」
「……いや、デーブでいい。ふん!」
「え?」
な、なんだ? デーブってよばれていやじゃないの? おこったりしないの?
おれ、あだ名でよばれてみたかったんだ。
みんな、おれのことをデーブってよんでいるんだ。
なんだよ、水くさいな。気やすくデーブって声をかけてくれたらいいのに。
デーブかあ、おれはデーブなんだ。ふふん!
「出井くん? どうかした?」
「いや、べつに。ふふん!」
デーブの目がわらっている。なんだか、こわい。
ココアを持ったしずくがもどってきた。
「なんだよ、しずく。あっちでのめよ」
「ここでのんだって、べつにいーじゃん」
「出井くんだって、おまえをじゃまだと思っているぞ」
「おれは、いっしょにココアをのんだってべつにいいよ。ふん!」
「え……」
ふうふう、ズズズッ……。3人でだまってココアをのむ。
ぼくは、変なきんちょう感がただようこの場がたえられなかった。
ココアをのみおわったら、デーブにはすぐに帰ってもらおう。うん、そうしよう。
「お兄ちゃんとデーブって、お友だちなの?」
とつぜん、しずくのばくだん発言がさくれつした。
「な、な、何いっているんだよ! しずく!」
友だちって、急に何をいい出すんだよ!
少しはデーブのことがわかってきたけど、まだ友だちってわけじゃないじゃん。
ぼくは心の中でしずくにツッコんだ。
「友だちかって聞かれても困るよねえ。出井くん」
ふとデーブを見ると、デーブがぼくを熱い目でじっと見ていた。
「うわっ!」
さっきからデーブのようすが少し変だぞ。
おお、雨森のいもうと、ナイス発言。
おれは、こいつと友だちでもいいかなと思う。っていうか、友だちになってほしい。
おれには友だちとよべるヤツがいない。だから、学校のクラスで班分けになると、いつも困るんだよ。
いつもさいごに空いている班に入ることになっちゃうんだよなあ。
そして、だれとも話をしないまま班の課題が進んでいって、いつのまにかおわってるんだ。
べつにいやがられるわけではないからいいんだけれど、できればだれかにさそわれて班に入りたいし、さそいたいんだよな。「おーい、いっしょにやろうぜー」っていってみたい。
雨森と友だちになれば、とりあえずふたりで班が作れるようになるからいいな。ふふん!
「しずくはなんで、ぼくと出井くんが友だちだって思うんだよ」
「おうちにあそびにくるくらいだから、お友だちでしょ?」
「いや、今日はじめてうちにきたんだよ」
またしずくのおともだち理論だ。
だいたい、あそびにきたわけじゃなくて、気をうしなったのをはこんできただけだし。
話をしたらお友だち、家にあそびにきたらお友だちって、なんでそんなにおおざっぱなんだよ、しずくのお友だち理論。
「ふ~ん……。そうなのお……」
つづく




