ぼくとトイレのぺろりんさん14
「おい、雨森。おれが泣いたことやこわがったことは、だれにもいわないでくれよ。おれのお願いだ。ふん!」
「うん、わかった。だれにもいわない。でも、ぼくだって泣き虫でこわがりだよ」
「え、おまえもそうなのか。それって、だれにも知られたくないことじゃないのか? なんで、じぶんからいっちゃうんだよ。ふん!」
「だって、ほんとうのことだもん。べつにだれかに知られたからって気にしないよ。でも、泣き虫でこわがりなのを弱虫だってからかうヤツはきらいだな」
「泣き虫でこわがりなのは弱虫とちがうのか? ふん!」
「ぼくはちがうと思っているよ」
「どうちがうんだよ。ふん!」
「泣き虫でこわがりだって勇気はあるよ。だから、弱虫じゃないよ」
「勇気? 赤信号でおうだんほどうをわたっちゃうとかか? ふん!」
「そんなの勇気じゃないよ。赤信号でおうだんほどうをわたるなんて、だれかにすごいっていわれたいだけで勇気があるわけじゃないし、そもそもすごくもなんともないよ」
「ふふん、ふん!」
「たとえばさ、電車やバスで人に席をゆずるとき、話しかけるのにドキドキするでしょ。どうぞって声をかけるほうが勇気がいるよ。困っている人を助けるほうが勇気がいるって、ぼくは思うんだ」
「そうか。じゃあ、おれにも勇気はあるかな? ふん!」
「あるよ。だって、ぼくを助けてくれたじゃん」
「そうそう、それなんだけど、おれ何をしたんだ? ぜんぜんおぼえてないんだけど。ふん!」
「い、いや、むりに思い出さなくてもいいんじゃないかな……」
デーブにぼくのおしりまる出しのすがたを思い出されたくない。
ちょうどそこにお母さんがココアを持ってきてくれた。
「お待ちどうさま。はい、どうぞ」
「ありがとう、お母さん。ささ、出井くん、ココアをのもうよ」
おかげで、うまいぐあいに話をごまかすことができた。
「ただいまー!」ぼくとデーブがココアをのんでいると、しずくが帰ってきた。
ガチャ! へやのドアがいきおいよく開いた。
「あ、デーブだ。こんにちはー!」
ぼくはココアをふき出しそうになった。
うわーっ、ここでとつぜん「デーブ」が出てくるとは! やってくれたな、しずく!
つづく




