オシリアスの海 その3
「どうだった?喰われ心地は?」
桶にオシリアス海の海水を入れて浜に上がってきたアヤノにユーシィが聞いた。
しかし、アヤノは顔を真っ赤にしながら抱えている桶で衣服が破けて恥部がち露わになった身体を隠しながらユーシィにこう返した。
「すみません……その前に衣装ボロボロになっちゃったので何か着させて貰えませんか?」
「いいよ〜ほいっ」
大魔女ユーシィがパチッと指を鳴らすとアヤノの首から下の身体の周りにキラキラと光が舞って次に身体中が一瞬白く光った後に衣装が元通りの状態になった。
「ありがとうございます……」
「へぇ……アヤノって裸見られるのちゃんと恥ずかしいんだ」
「わっ……私をなんだと思ってるんですか!?」
「ほら、今までは全裸になっても割と恥ずかしげ無さそうだったし」
「あれは痛みに酔ってて羞恥心に神経が回ってなかっただけですぅ!」
「あぁ!そういえばそうだったね! ん?てことは……今のは酔う程じゃなかったってこと?」
「は……はい……正直大いに期待しながら襲われに行ったので肩透かし感がありました……雷撃もすこしビリビリするくらいで、ちょっとだけ気持ちいいと思えたのが一番大きい魚に噛みちぎられた時、牙から注入された毒だと思います。でも、それもほろ酔い程度の気持ちよさしか感じられなかったです」
「マジ?」
「はい、マジです」
「ロドズンが持ってる猛毒は通称『神犯しの毒』って呼ばれるくらいとんでもない毒なんだけどなぁ……」
「そ、そんな凄い毒だったんですか!?」
「うん、オッシーでさえも対策無しで噛まれたらひとたまりもないよ。 しかも毒の効き方がこれまた悪質でさ、注入された瞬間にフルスロットルの痛みが全身に駆け巡ってからジワジワと毒に犯され全身が徐々に崩壊して行くんだって しかも、崩壊して行く間も毒による痛みはどんどんエスカレートするらしいよ…うへー想像するだけで恐ろしくない?」
「う……羨ましい……」
「あ、ごめん。 アヤノの場合は"そう"だよねー」
「でも……じゃあなんで私にはその毒全然効かなかったんでしょうか……」
アヤノは本来味わえたであろう"快楽"を想像した事により少し口元から零れたヨダレを拭いてからユーシィに聞いた。
「多分だけど、何度も殺されてたから耐性がついちゃったんじゃない?刺激に対する 。 アタシに何回か殺されたあと、ここ来る前にオッシーの"空間魔法"で何十回か殺され痛めつけられたじゃない?それでもう慣れちゃったんだよ」
「そ、そんな〜!!何かありませんか?その……例えば、体に感じる刺激を千倍にする魔法とか……」
「アヤちゃんねぇ……そんなピンポイントな魔法あるわけ……」
「そうですよね、そんな局所的な魔法あるわけ……」
「いや……そういえば、あったな」
「ほ、本当ですか!?そもそもよくありますね、そんな魔法」
「うん、本来は拷問用の魔法なんだけどね」
「あっ………あぁ〜……」
「まさか、こんな用途で使う事になるとは思いもしなかったよ」
「で……ですよね……」
「ちょっと引いてない??? べっ……別にアタシ拷問が趣味じゃないからね!アレだから!収集してる魔導書に載ってたから知ってるだけだから!!」
「あー!な……なるほど!」
アヤノはユーシィが拷問趣味の残虐な魔法使いかと思い少し怪訝な顔をしていたが、ユーシィがすぐ訂正を入れた事によりその誤解は解けた。
その一方で拷問趣味があってくれた方が利害関係としてはちょうど良いのでは無いか?とも思った。
「で、ではさっそくかけて貰えますか?」
「おっけ〜」
「………」
「………」
「え?」
アヤノは目を閉じて数秒巻魔法がかかるのを待っていたが何も感じない。
そっと目を閉じて開けるとユーシィも右腕の人差し指を上げて目を閉じたまま静止している。
「ごめっ……そういえば呪文を覚えてなかった」
ユーシィは顔の前で両手を合わせてアヤノにヘコヘコと頭を下げた。
「そ……そんな……」
「工房に戻って書いてる魔導書を探さないと掛けれないや………」
「し……仕方ないですよ……ね……」
「めっちゃ残念そうな顔するじゃん……ごめんて」
大魔女ユーシィとアヤノはオシリアス海から領域の主である魔神オシリアスが住んでるエリアに戻ると、ワープ魔法で工房内へと戻った。
「そういえば、ここからさっきの所までどれくらいの距離があるんですか?」
「そりゃめっっっちゃ離れてるよ、ここって世界の極地だから、そもそも近い世界が存在しない」
「そう、だから辿り着くのに一苦労だったよ〜」
アヤノの耳に聞き覚えのない少年の声が聞こえた。
声が聞こえた方向に振り向くと、そこにはおかっぱ頭の銀髪碧眼の少年が工房のユーシィの椅子に座っていた。
「お邪魔してます」
小さい来客は椅子から立ち上がりペコリと挨拶した。




