工房の来訪者①
「ベリ助じゃーん!久しぶりー☆」
工房に戻ると突然姿を表した少年にユーシィさんは特に驚きもせず話しかける。
久しぶりという事は知り合いなんだろうな。
でも、何で工房の中に入れてるんだろう?
合鍵でも渡しているのだろうか?
「見覚えのない人間がいるみたいだけど、いつから助手を雇うようになったんだい?ユーシィ」
「あはははは!アタシが助手なんて必要とする訳ないっしょ~!彼女は研究の被検体だよサンプル」
「なんだ、てっきり数百年の間に心変わりでもしたのかと思ったよ」
す、数百年の間……?
そんな前から知り合いなのこの二人?
「それなら、新しく出現した『究極魔原子』には全くもって興味なし?」
「うん!まっっったく!!!だって魔原子って""ただ""の莫大な魔素の塊じゃーん」
「魔原子を指しながらそんな余裕ぶったことを言えるのはこの世界で"ユーシィ"くらいだよ」
「それに、魔原子から生み出せれる『極魔神』もただ他の魔神より抜きん出て強いってだけで全然面白くないからさ~、それならここで属性の違う魔素を複合させる遊びをずっとしてる方がよっぼど楽しいっしょ!」
「それはユーシィだけじゃないかな、でも君が興味を持たない事は初めからわかっていたよ」
「なんだ。じゃあ、なんでウチ来たの?」
「この近くに『召喚門』が開く反応があってね、他世界からシステムによって召喚された転生者を保護しに来たんだけど……引き渡してくれないかな?彼女」
少年はそう言うと何故か私に指の先を向けた。
「えっ!私……!?」
「君、別世界から来たでしょ?」
少年が私に顔を向けて問う。
よく分からないけど、ここは正直にそうですと答えるべきなのだろうか?
「でもさ~、別に『極魔神』を倒して『究極魔原子』を封殺する為なら別に他の転生者がやればよくない?門が開くのって1箇所だけじゃないっしょ?」
私が返答を言い淀んでいるとユーシィさんが割って入った。
「随分とこの子を気に入ってるみたいだね、"モルモット"として」
も、モルモットって……その言い方はあんまりじゃないですか?
「うん、"おもしろい"反応を見せてくれるから、これから色々と試そうとしてるってワケ、だから彼女は渡せない。新しい『究極魔原子』の対応は他の転生者に頼んでよ」
ユーシィさんもモルモット発言スルーしないでくださいよ!!
「それが、今回は召喚門二つしか見つかってないんだ」
「じゃあ、そのもう一つの門から来た転生者に頼めば良くない?」
「もう既に頼んでるんだけど、その転生者は魔神オシリアスのエリアに入った後負けたのか撤退してね。撤退しただけなら良かったんだけど、撤退後は記憶を失っている上に戦意も失ってしまったんだ」
「へ、へぇ~……」
「上級魔法使いが記憶の消失を解く為に『記憶呼び』の魔法を掛けたんだけどね、何故かまるで効き目が無かったんだ。ただの記憶喪失なら一発で戻る筈なんだけどね」
「な、なんだか不思議な事もあるもんだねぇ!」
「キミの仕業だろ?」
「えっ!?そ、そそそんなわけないでしょーはははは……」
「まあ、いいや何でも。という訳だから、彼女を渡したくないんなら転生者が掛かってる忘却魔法を解いてくれ」
「わかったよ解けば彼女を渡さなくて良いってことでオーケー?」
「本当は戦力的には二人とも欲しいけど、まぁいいよ」
どうやら、問題は解決しつつあるみたいだ。
いや、本当にこのまま解決していいのか?
もしかしたらこのままこの流れで解決したら大きなチャンスを私は逃してしまうのでは無いだろうか?
私が『転生者』としてその『究極魔原子』の対応を引き受ければ、今生で味わったことの無い、美味なる痛みを食らえるのではないだろうか?
「ちょっと待ってください!」
気づいたら私は2人へ向けて咄嗟に、制止の言葉を発していた。
「極魔神の魔法は他の魔神より強力ですか?」
「いや、もち……ふごごぶご!?!?」
少年の口が話している途中で急に開かなくなった。
「あ、あんま大した事ないよー」
遮るようにユーシィさんが私の質問に答えた。
いやいや、絶対そんなわけないでしょ。
少年の口を封じたのはユーシィさんだな。
でも、これでハッキリした気がする。
『極魔神』の攻撃を受ければ、オシリアスさんの所で体感した以上のダメージを体感出来るに違いない。
「私、その『極魔神』と戦ってみたいです」
私は率直に二人へ意思表明した。
本音を言うと戦う事自体には興味無いし、ただ「極魔神の攻撃によるダメージを体感したい」だけだけど……。
「戦いたい」と言うのが結局のところ率直に伝える分には一番安牌な表現だろう。




