表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精に愛された亡国の王女、少年として軍に潜む  作者: 月焔 レイ
第三章(3) 旗を上げるとき
63/69

第六十三話 攫われた王女


 太陽が真上に差す、穏やかな昼時だった。


「ちょっとお手洗い行ってくるね」


 昼食を取るために立ち寄った街で、ルシアは一人、お手洗いのために席を立った。


「見つかった!?」


 リアの叫び声が店内に響く。


「駄目だ、居ない」

「ちょっと外に聞き込みに行ってくる!」

「ミアは!?ミアはいる!?」

「ミアも居ない!」


 アルグレイ隊の誰もが取り乱していた。

 

 ほんの数分──

 それだけで、ルシアは消えた。


 ──まさか。

 その考えがよぎった瞬間、全員が弾かれたように動き出した。


 

 周辺へ聞き取りに回り、目撃情報がないかをくまなく探す。


 王都まであと1日ほどまで来た、街でのことであった。


「一人で行動させるのではなかった……

 店内だからと油断した……」


 大佐の口から漏れる声は、苦渋に満ちていた。

 誰もが、数分前の自分を悔やむ。


 ルシアは、忽然と姿を消した──


 ⸻⸻


「ん……」


 目を開けようとしても真っ暗で、視界は塞がれていた。口には布を噛まされ、声が出せない。


 身体は揺れ、足元からは木の軋む音が響く。

 ──馬車だ。どこかへ運ばれている。


「気がついた?」


 耳元でミアの声がして、ほっと息を吐いた。


「ん」


 僅かに動く首を動かし、頷く。


「どこかに運ばれているみたい。攫ったのは軍人みたいね」


 ミアの声に、ぞくりと悪寒が走った。

 思い浮かんだのはヴァイスさんの囚われた姿。


 覚悟はしていた。

 矢面に立つことで、攫われる可能性があることを。選んだのは自分だった。


 だが、いざ直面してみると動くことができない。


 ──どうする。どうする。


 思考が空回りする。

 焦りだけが募り、何一つ決められない。


「おい、確認しろ」

「ルシア!気を失ったふりをして!」


 ミアの言葉に反応することができず、眩しい光が差し込み思わず目を細める。


「おい、目が覚めてるぞ」

「眠らせておけ。魔術を使われたら面倒だ」


 野太い男の声と共に、太い腕がルシアに迫る。


 ──やだ。


 声を出そうにも、出せない。

 後ろにずり下がろうとしても、背中には壁が当たる。


「大人しく寝とけ」


 男の手には、布が握られていた。

 ツンとする匂いと共に、ルシアの意識は遠のいた。


「ルシア!ルシア!」


 ミアの叫び声が、遠くからぼんやりと聞こえた気がした。


 ⸻⸻


「おい、起きろ」


 頬を強く叩かれ、ルシアは顔を顰めた。

 

 ──痛い。

 目を開けると、視界がぼんやりとしていて周りがよく見えない。


「久しぶりだね、ルシア少尉。

 いや、ルミナリア姫か」


 ゆっくりと合わさった焦点の先にいたのは、忘れもしない、マレディア国王。その人だった。


「な……んで……」

「なんでだと?お前らのせいで、我が国マレディアにどれだけの被害を被ったと思っている」


「鼠の生き残りが……よくも生き延びたものだな。

実に、反吐が出る」とマレディア国王は心底穢らわしそうに吐き出している。


 そんなに嫌いなら、放っておけばいいのに……。とルシアは思ったが、口には出さなかった。


「それもここまでだ。お前を囮にしてお前の弟も捕まえよう。姉弟揃って反逆罪だ。おまけでお前の大好きなアルグレイ隊も付けてやろうではないか」


 クツクツとおかしそうに笑う国王に、ルシアの顔色が変わる。


「それは……っ!」

「その顔が見たかったんだ。自分のせいでと絶望しておけ。だが、お前は魔術が使えるからな。使われたら迷惑だ。

 公開処刑の日まで──眠らせておけ」

「はっ!」

 

 命令を受けた軍人が近寄ってくる。


「や、やだ……」


 魔術を使おうと思うが、うまくマナが集まらず霧散する。ミアの姿を探すが、どこにいるか分からなかった。


「ごめんな、ルシア……」


 ふわりと、懐かしい香りがした。

 鼓膜を震わせた優しい声。


 その声の持ち主に、ルシアは目を見開いた。


「アッシュ……なんで……」


 それが、ルシアが最後に見た光景だった。

 

 苦しげに細められたその瞳は──

 ルシアだけを、見つめていた。

ここまで読んでくださりありがとうございます!


ブックマークやいいねしていただけると励みになります!

今週末完結予定です。

最期までお付き合いいただけましたら幸いです。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ