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妖精に愛された亡国の王女、少年として軍に潜む  作者: 月焔 レイ
第二章(3)国内─ノースブルク
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第四十一話 北の街"ノースブルク"

短編投稿しました。

読んでいただけたら嬉しいです。

【 悪霊に憑かれた私、神様(猫)に巫女にされて怪異を祓う日々が始まりました】


「寒い!春じゃなかったの!?」


 列車の終着駅。王国の北、隣国"ノルドガルド "の国境近くの街、"ノースブルク"へ、アルグレイ隊の一行は降り立った。

 あまりの寒さにリア先輩が叫ぶ。その声にルシアも必死に頷いた。


「ノースブルクは基本的に寒い。春でもフェルンベルクの冬の気温だ。私が春まで待った理由が分かるだろう?」


 吐き出す息は白く、寒さに歯が震える。長時間外にいては凍えそうだ。一行は宿までの道を急いだ。


 宿に向かう途中、ふと浮かんだ疑問をルシアは大佐にぶつけた。


「ノースブルクの人には挨拶しないの?」

「ノースブルクに大きな軍事基地はなくてね。基本的に王都から派遣された役人が管理しているだけだから大丈夫だ。」

「なんでないの?ノースブルクも外国に面してるよね?」

「ノースブルクと接しているノルドガルドの間には深い渓谷があってね。その渓谷には魔獣が非常に多い。だから、北から攻められる危険性が極めて低いんだ。

 その代わり、魔獣に対応できるための最低限の軍人や、魔獣を倒して生活を賄っている冒険者たちは居るがな」

「たまに大きな剣を背負った人とか見かけたけど、冒険者なんだ」

「そうだ。その魔獣の魔石を使った魔術具の開発も盛んだな。」

「へー。見てみたい。」

「明日にでも店を覗いてみるといい。高価だが、なかなか面白いぞ。」


 王国は広く、地方によって気候がまったく違う。それぞれの土地の色を生かした特産があり、なかなか興味深かった。


「じゃ、とりあえず明日は街の探索?」

「ここに来た用事は探索ではないが、それもいいだろう。明日くらいは観光しよう」

「やったー!観光ー!」


 両手を挙げたリア先輩に皆の顔が綻ぶ。最近気を張ることも多かったから、たまには息抜きも必要だ。

 束の間の休息に、ルシアは心を躍らせた。


 ⸻⸻


「すごい!」


 ノースブルクの名物である、雪でできた"スノードーム"と呼ばれる小屋にアルグレイ隊一行は観光に来ていた。


「意外と温かいな」

「ココアが体に沁みますね」

「マシュマロが美味しいのじゃ」


 どういう原理なのかは分からないが、スノードームの真ん中には焚き火が設置され、温かい飲み物やマシュマロなどを焼いて食べることができた。

 先程からフェルは串に刺したマシュマロをグレインさんに焼いてもらい、美味しそうに頬張っている。


「なによ、私だってこのくらい小屋作れるわ」


 ぶつぶつと呟いているミアは何やら不満そうだ。

 ルシアは熱々のココアに息を吹きかけながら、ご機嫌取りのマシュマロと作り出した金平糖をミアへ差し出す。途端に満面の笑みを浮かべ、蕩けるような表情を浮かべるミアはやはり単純だ。


「いいですね、こういうのも」


 ヴァイスさんの呟きに、ルシアも頷き同意する。


 のんびりとした時間が流れる。

 パチパチと木が破ぜる音がし、焚き火に照らされた顔が温かい。


 特別なことは何もないが、みんなで過ごせるこの時間が幸せだ。身体と共に心も温められているような心地の良い空間が、アルグレイ隊を包んでいた。


 ⸻⸻


 そろそろ宿に戻るか、とルシアはいつまでもここに居たいと叫ぶ気持ちから目を背け、渋々腰を上げる。

 

 そろそろ日が沈み始める時刻だった。ノースブルクの昼間の時間は短い。宿へ早く帰らなくてはならない。

 小屋へ来るまでに魔道具の店にも寄ったため、宿を出てからは結構な時間が経っていた。


 小屋を出たところで、フェルがミアをおちょくり始めた。大方、寒いので八つ当たりだろう。フェルは毛皮に覆われているくせに、寒いのが嫌いなのだ。


「だからぁ!私は出来るの!」

「ふん、そんなこと言ってできんのじゃ。」


 どんどんヒートアップする言い合いに、「どうしたの?」というルシアの問いかけると、「フェルが小屋なんて作れないくせにうるさいって文句言うの!私は作れるのに!」とミアが答え、頬を膨らませている。


「もういい!それなら作るもん!ルシア!許可ちょうだい!」

「いいけど……あんまり派手にしないでね。」

「それはフェルに言って!!」


 ミアたちは、ルシアたちの許可があれば魔法を使えるらしい。そういえばこの間遭遇した妖精も使っていたな、とその説明を受けた時に思った。


 妖精たちは秘密が多いのだ。聞かなくては教えてくれないことも多い。聞いても教えてくれないときもあるが。


「見てなさいっ!いでよ!城!」

「城!?ちょっと待て!」

「無理ー!もう使っちゃった!」


 ケタケタと笑うミアに、アルグレイ隊は顔色を変えた。

 なんてことをしてくれているんだ、とルシアは焦る。


 辺り一面を眩いばかりの光が満ち、光が消えた時には立派な氷の城がそこには鎮座していた。

 沈みかけた夕陽を浴びてキラキラする様子は、一種の芸術品だ。見事である。


……ここが、ノースブルクの街中でさえなければ。


「どうするの、これ…」


 巨大な氷の城は明らかに邪魔である。口が開いて閉まらないルシア達は、誰も動くことができない。


「なんだなんだ!?」


 突然現れた氷の城に、瞬く間に人が集まり、好奇心旺盛な魔術具の開発者である魔法使いたちは城の中へ入っていく。中も相当作り込んだのだろう。歓声が上がっている。


「ミア」


 ルシアが怒りを込めて名前を呼ぶと、「ごめんなさーい」とてへっと舌を出して謝っているが、今回ばかりは駄目だ。人の迷惑を考えさせなければならない。そもそも、妖精たちが人の迷惑を考慮するかは置いておいて。


「どうされました?これは」


 遂にはノースブルクを預かる役人までやってくる事態となり、ルシアたちは平謝りする。しょうがないからルシアが悪戯でしたこととなり、とんだ迷惑である。

 だが、大佐からは「飼い主の責任もある。」と言われ、ぐうの音も出ない。ミアがやらかすのは今に始まったことではないからだ。


「これは見事な城ですな…このまま観光資源に使えそうです。ノースブルクなら溶けることもないでしょうし。」


 役人はしきりに感心し、城の中の確認を始めた。どうやら、怒られることは免れそうだ。

 ルシアの消しますという申し出は却下され、"特急魔法使いが建築した氷の城"という看板まで立てられてしまった。


 真っ青になっているルシアの様子を見て、アルグレイ隊の皆はニヤニヤしている。あまりにも腹が立ったため、ノエルの脛を蹴飛ばしておいた。


 こうして、ノースブルクに新たな観光名所が生まれた。

 

 この城は、のちに"氷の姫の城"と呼ばれ、多くの魔術師が再現を試みたという。

 だが、同じ城を作れる者は現れず、氷城は魔術師たちの目標となったのであった。



ここまで読んでくださりありがとうございます!


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毎日21時頃に投稿しています。

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