第四十二話 隠された特級魔法使い
ノースブルク山脈の中腹に、アルグレイ隊の姿はあった。
「大佐の結界便利!」
「便利扱いするんじゃない!」
「痛いっ!暴力反対!」
冷たい風が、刺すように身体を冷やす。あまりの寒さに、痛みすら感じるほどで、途中から大佐が、風除けとして結界を展開してくれたのだ。
アルグレイ隊は風の冷たさから解放された。そして、いつものように調子に乗ったリア先輩が、ヴァイスさんに頭をはたかれている。
「本当にこっちなんですか?」
「ミアー、ドワーフたちに聞けるー?」
「ちょっと待ってて!」
ルークがミアに問いかけると、ミアは再びドワーフたちを集めてくれる。
ミアが呼びかけると、ドワーフたちが木々の間からわらわらと現れた。ドワーフたちも、暖かそうな服を着ていてとても可愛い。
現在、アルグレイ隊はある人物を探し、山の中に入っていた。
その人物は、王国内でも六人しかいない特級魔法使いの一人で、元ルミナリア王族専属の魔法使いでもあった。その縁を頼りに、力になってもらえないかと、ルシアたちは探していた。
しかし、その魔法使いは現在行方不明だった。そして、ノースブルクの山の中腹に凄腕の魔術師がいる。という噂を旅の途中で耳にし、その人物ではないかと目星をつけ、ここまで探しに来たのだ。
「ふんふん。その人かもね」
「なんか分かった?」
「結界で見えなくしてるみたいよ。人を避けているみたいね。ドワーフたちが入り口までは案内してくれるって」
「それは助かるな。いくら風がなかったとしても寒すぎる」
「早く行くのじゃ!」
一行は、ドワーフとともに、先導するミアの後ろを足早についていった。
⸻⸻
「ここみたい!」
ミアが止まった場所は、大きな木の麓だった。
少し開けた場所ではあるが、特に何かあるようには見えない。
これでは、誰かが来ても気づかないはずだ。
見事な結界だ。魔法使いの実力は相当なものだろう。
「早く開けるのじゃ!」
寒さに耐え切れないのか、フェルが元の大きさに戻る。
「一度声をかけてから」と注意する間もなく、フェルは大きな遠吠えをひとつ上げてしまった。すると、"パリン"という音と共に、小さな家が目の前に現れる。
突然現れた家に驚いていると、わずかに家のドアが開いた。
「ひっ!軍人!!」
男の顔が覗いたかと思うと、悲鳴とともに、ドアは閉められてしまった。
軍人に怯えているようだ。姿を眩ましている理由と関係しているのかもしれない。
どうしようか。と一同が悩んでいると、スタスタとフェルがドアの前まで歩いて行った。声をかけようとした瞬間、
「こら、早く開けろ。お前はどこまで不義理を働くつもりだ。殺すぞ。」
聞いたこともないほど低い唸り声をあげ、フェルが家の主に話しかける。
……怒ってる?
だが、フェルが怒る理由が分からない。
「どうしたの?フェル、なんで怒ってるの?」
「ふん。自分で言わせろ。我からは言わん。」
鼻を鳴らし、フェルはそっぽを向く。何か事情を知っていそうだが、それ以上語るつもりは無さそうだ。
「あの、うちの子がすみません。少しお話をしたいんですが」
沈黙が落ちる。返事のない家の主人に、「駄目か……?」と思ったその時、"キィ"という音を立てて扉が開いた。
開いた先には、誰も立っていない。
──入ってこい。
そう言っているようだった。
顔を見合わせた一同は恐る恐るドアをくぐる。
全員がドアをくぐると、"バタン"と、ひとりでにドアが閉まった。
中は、外見からは想像もできないほど広い空間だった。
リビングには暖炉があり、"パチパチ"と音を立てながら薪が燃えている。敷かれた絨毯は厚く、重厚な雰囲気を漂わせていた。
その部屋の奥に、家の主は佇んでいた。
「何をしに来た……」
温かな部屋とは対照的に、冷えきった声。
その目には、暗い光を宿している。
とても、歓迎されているようには見えなかった。
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