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妖精に愛された亡国の王女、少年として軍に潜む  作者: 月焔 レイ
第二章(3)国内─ノースブルク
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第四十二話 隠された特級魔法使い


 ノースブルク山脈の中腹に、アルグレイ隊の姿はあった。


「大佐の結界便利!」

「便利扱いするんじゃない!」

「痛いっ!暴力反対!」

 

 冷たい風が、刺すように身体を冷やす。あまりの寒さに、痛みすら感じるほどで、途中から大佐が、風除けとして結界を展開してくれたのだ。

 アルグレイ隊は風の冷たさから解放された。そして、いつものように調子に乗ったリア先輩が、ヴァイスさんに頭をはたかれている。


「本当にこっちなんですか?」

「ミアー、ドワーフたちに聞けるー?」

「ちょっと待ってて!」


 ルークがミアに問いかけると、ミアは再びドワーフたちを集めてくれる。

 ミアが呼びかけると、ドワーフたちが木々の間からわらわらと現れた。ドワーフたちも、暖かそうな服を着ていてとても可愛い。

 

 現在、アルグレイ隊はある人物を探し、山の中に入っていた。

 その人物は、王国内でも六人しかいない特級魔法使いの一人で、元ルミナリア王族専属の魔法使いでもあった。その縁を頼りに、力になってもらえないかと、ルシアたちは探していた。

 

 しかし、その魔法使いは現在行方不明だった。そして、ノースブルクの山の中腹に凄腕の魔術師がいる。という噂を旅の途中で耳にし、その人物ではないかと目星をつけ、ここまで探しに来たのだ。


「ふんふん。その人かもね」

「なんか分かった?」

「結界で見えなくしてるみたいよ。人を避けているみたいね。ドワーフたちが入り口までは案内してくれるって」

「それは助かるな。いくら風がなかったとしても寒すぎる」

「早く行くのじゃ!」


 一行は、ドワーフとともに、先導するミアの後ろを足早についていった。


 ⸻⸻


「ここみたい!」


 ミアが止まった場所は、大きな木の麓だった。

 少し開けた場所ではあるが、特に何かあるようには見えない。

 これでは、誰かが来ても気づかないはずだ。

 見事な結界だ。魔法使いの実力は相当なものだろう。


「早く開けるのじゃ!」


 寒さに耐え切れないのか、フェルが元の大きさに戻る。

 「一度声をかけてから」と注意する間もなく、フェルは大きな遠吠えをひとつ上げてしまった。すると、"パリン"という音と共に、小さな家が目の前に現れる。


 突然現れた家に驚いていると、わずかに家のドアが開いた。

 

「ひっ!軍人!!」


 男の顔が覗いたかと思うと、悲鳴とともに、ドアは閉められてしまった。

 軍人に怯えているようだ。姿を眩ましている理由と関係しているのかもしれない。


 どうしようか。と一同が悩んでいると、スタスタとフェルがドアの前まで歩いて行った。声をかけようとした瞬間、


「こら、早く開けろ。お前はどこまで不義理を働くつもりだ。殺すぞ。」


 聞いたこともないほど低い唸り声をあげ、フェルが家の主に話しかける。


 ……怒ってる?


 だが、フェルが怒る理由が分からない。


「どうしたの?フェル、なんで怒ってるの?」

「ふん。自分で言わせろ。我からは言わん。」


 鼻を鳴らし、フェルはそっぽを向く。何か事情を知っていそうだが、それ以上語るつもりは無さそうだ。


「あの、うちの子がすみません。少しお話をしたいんですが」


 沈黙が落ちる。返事のない家の主人に、「駄目か……?」と思ったその時、"キィ"という音を立てて扉が開いた。

 

 開いた先には、誰も立っていない。


 ──入ってこい。


 そう言っているようだった。

 顔を見合わせた一同は恐る恐るドアをくぐる。

 

 全員がドアをくぐると、"バタン"と、ひとりでにドアが閉まった。


 中は、外見からは想像もできないほど広い空間だった。


 リビングには暖炉があり、"パチパチ"と音を立てながら薪が燃えている。敷かれた絨毯は厚く、重厚な雰囲気を漂わせていた。


 その部屋の奥に、家の主は佇んでいた。


「何をしに来た……」


 温かな部屋とは対照的に、冷えきった声。

 

 その目には、暗い光を宿している。

 とても、歓迎されているようには見えなかった。

 

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