表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/80

9-1

 目の前に置かれたパソコンのモニターに山田さんが映りました。


「お、映った映った。聞こえるー? ……って、可愛い服だな」

「言わないでよ。用意されてた服全部こんなんなんだよ。山田さん元気?」

「元気元気」

「宿題終わった?」

「……そっち叔母の家なんだろ。どんな所?」

「どんなって言われても、言葉も文字も分かんないからずっと家に引きこもってる。でも叔母さんは良い人だよ。服はちょっと合わないけど」


 あれから数日が経って、私はしばらく遠くにあるお母さんの妹の家にいることになりました。赤ちゃんの時に会ったことはあるそうですが、覚えていないのでほぼ初対面の人でした。


「なあ……こっち、帰ってくるんだよな」

「うん。夏休みが終わる頃にはお母さんも色々整理が終わるみたいだから。引っ越しはするだろうけど学区は変わらないよ」

「そっか、そう……いやぁ、ゆりあが持ってきた菓子折りお前の分も預かってるから、賞味期限切れるくらいなら食ってやろうかと思ってたのにな」

「お菓子ばっかり食べてると太るよ。ゆりあさんどうだった?」

「普通だったぞ。元々怪我も大したことなかったらしいし」


 ゆりあさんの家は、突然の遺産相続問題に巻き込まれて安全の為に身を隠していたそうです。居場所が漏れないようにと誰にも言わなかったせいで混乱させてしまったと、謝る必要もないのに謝罪して回っているそうです。


「そうだ、三日月さん目を覚ましたんだよね」

「知念の話だとリハビリは必要たけど日常生活は問題ねぇだろって」

「良かった。ねぇ、事件のことどうなってる? 私ニュースで流れてくるのしか分からなくて」

「私も分かんねぇよ。あの男結局だんまりだし、外はさらにマスコミやら野次馬やらで訳わかんなくなって迂闊に出れねぇし。あー、でもちゃんと祠は綺麗にしに行ってるぞ。今日もアイスを供えてやった」

「何てことしてんのよ」


 ニュースによると、沙那さんがさらわれた理由は芝原さんの遺体を運んでいるのを目撃してしまったからだそうです。場所はお化け屋敷の隣の空き家でした。そこから沙那さんはお化け屋敷に逃げ込んで、捕まったのだそうです。


 和兎くんの体は、沙那さんが監禁されていた部屋の隣から見つかったそうです。ただ、その部屋からはあってはいけないものも大量に見つかってしまい、どんどん別の事件にまで話が広がって私にはもう理解できなくなっていました。

 芝原さんはまだ見つかっていません。何故か新しく建った建物を壊してその下を捜すかどうかという話になっているそうです。


「この辺は三日月ママの証言頼りだけど、この人も嘘吹き込まれてるだけかも知れねぇし」


 芝原さんは事故死でした。振り払ったらバランスを崩して転倒し、頭の打ちどころが悪かったとかいう推理ものに良くあるものでした。

 ただし、芝原さんが倒れた後に三日月さんのお母さんは一度も芝原さんに近づいていないので、死んだと思ったのは大家さんがそう言ったからだそうです。本当にその時死んでいたのか、そうじゃなかったのかはまだ分からないそうです。


 結局バーベキュー場の火事に大家さんが関わっているのかも分かりませんでした。でも松岡くんが考えたように、気づかれない程度に燃えやすいガスを満たした部屋に酔っ払いや沙那ママ達がイタズラをするよう誘導したところで、そんな運任せ人任せな作戦が本当に上手くいくと思っていたのでしょうか?

 松岡くんは、あの人は考え方や優先順位が人と違う人だと言っていましたが、全然分かりません。大家さんの最優先って何だったのでしょうか? 大家さんは一体何がしたかったのでしょうか?


「そうだそうだ、坂本にもまた会っちまってさー。あいつネチネチしつこく訊いてくんだよ」

「夢で見た場所に行ったら本当に居ましたじゃ納得してくれないよね」

「でも本当のことなんだから仕方がないじゃん……なあ、あれからあの夢見たか?」

「ううん。あれ以来一度も見てない」


 山田さんを助ける為にみんなで話し合った夕立ちの中の夢以来、私はあの不思議な世界の夢を見ていませんでした。毎日のように見ていた夢が急に見れなくなって私は戸惑いました。もしかしたら、あれっきり二度と見ることができないのかもしれません。それは……寂しいです。


「私も三日月もあれっきりなんだよな。せめて作戦成功したぞーって言いたかったんだけどな」

「結構作戦からズレてた気がするけど、まあ良いか」

「あーもうこんな時間? 時差めんどくせぇな。じゃあな芽生、またな」

「うん」


 そう言いながら、山田さんはカメラを切り忘れていました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ