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世界がとてもキラキラしていました。
「芽生ちゃん」
目の前にしぃちゃんと和兎くんがいます。
「良かった、もう会えないのかと思った」
「しぃも会いたかった」
ギュッと抱きついてきたしぃちゃんの体温が心地良く感じました。忘れないように私もギュッと抱き返します。
「あの後すぐ三日月ちゃん達も消えちゃって、どーなったの? 上手くいったの?」
「うん。ちょっと予想外のことは起こったけど、沙那さんは無事見つかったし、山田さんも案外元気だったし、三日月さんも目を覚ましたよ。ただ……芝原さんはもう亡くなってた」
「……そっか」
和兎くんが寂しそうに笑います。その顔がふと別の方向を向きました。その先にはヒマワリ柄のワンピースの女の子が立っています。随分と前に山田さんから半分貰ったのと同じアイスを食べながらこちらを睨んでいます。
「芽生ちゃん、僕達もう行かないといけないみたいなんだ」
「行く? どこに?」
「分かんない。でも行かないと。だから芽生ちゃんとはサヨナラしないと」
何となくですが分かっていました。この夢を見るのはこれが最後です。
「途中まで一緒に行っていいかな。ギリギリまで見送りたいの。駄目かな?」
チラッとヒマワリ柄のワンピースの女の子を見ます。彼女は特に何も言わずに、プイッとそっぽを向いて何処かへ行ってしまいました。
「多分良いんじゃないかな」
しぃちゃんが嬉しそうに私の手を握りました。
「もうちょっと一緒に居られるね」
私達は歩き出しました。何処へ向かっているのかは分かりませんが、二人には道がはっきりと分かっているようです。周りはさらにキラキラと輝きを増して、遠くの景色が白く霞んで良く見えなくなっていきます。
「実は芽生ちゃんの家にあった卒業アルバム、気になって見ちゃったんだ。勝手にごめんね」
「良いよ」
「芽生ちゃんはあの箱の中、見たことあるの?」
「ううん、まだない」
「あのね、お父さん芽生ちゃんのこと、いーっぱい手帳に書いてあったよ」
「私が生まれてくる前にお父さん死んじゃったのに?」
「それだけ生まれてくるの楽しみにしてたんじゃないかな」
「……」
足が少しずつ重くなります。二人はそんなことないらしく、すたすた歩いています。
「ねぇねぇ、しぃ髪自分でできるようになったんだよ」
「これ自分でやったの? 凄いね」
全身に、水の中にいるみたいな抵抗を感じます。
「で、森野くんって子は謝ったんだ」
「三日月さんは許すって言ったんだけど、他の子達は許せないみたいで」
「大変だねー」
二人との会話も、声が少しづつくぐもって聞こえるようになってきました。
「じゃあ、そのお偉いさんがそのタイミングで急に事務所に行くって言ってなかったら三日月ちゃん危なかったってこと?」
「トドメ刺されてた可能性はあったって」
「ギリギリだったんだね」
感覚も鈍くなり、進んでるのか止まっているのかも良く分かりません。
「和兎くんの友達、元気になったって松岡くんが言ってたよ」
「僕のせいで大変な思いさせちゃったな」
「違うよー、悪いのは大家って人でしょー。和兎くん悪くないよ」
足がぴたりと止まりました。
「私、ここまでみたい」
「そっか、じゃあ……お別れだね」
しぃちゃんがまた抱きつきます。
「バイバイ。楽しかったよ」
「私も楽しかったよ。バイバイ、いつか……またね」
握っていた温かい手が、離れました。
二人がさらに先へと進んで行きます。視界が一層煌めいて人も建物もどんどん見えなくなっていきます。
二人の行く先に人影が見えました。とても遠くてはっきりとは見えませんが、三人立っています。
一人はとても髪の長い女性です。その横に芝原さんに体型の良く似た男性が寄り添っています。
そしてもう一人……私は目を凝らします。
ドキドキと心臓が高鳴ります。もっと良く見たいのに一歩も近づけないことがもどかしいです。その人はぼやけていて顔なんて全く見えません。でも、確信がありました。
「お父さん!」
お父さんが手を大きく振っています。私は両手で振り返しました。どんどん世界が白くなっていきます。しぃちゃんも和兎くんも芝原夫婦も見えなくなってきました。もうすぐ夢から醒めてしまう。涙で視界が悪くなるのが恨めしいです。
「お父さん、私、私……幸せだよ!」
もうほとんど何も見えません。それでも最後まで、この夢が終わってしまう瞬間まで、私は手を振り続けました。




