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8-5


 ぱっと目が覚めました。ザァーっという雨の音がします。


「あ、起きた」


 お母さんが優しく微笑みかけてきます。時計を見ると、和兎くんの言っていた通り数分しか経っていません。

 私はすぐに山田さんにメッセージを送ります。反応はありません。電話をかけます。電源が入っていないらしいアナウンスが流れます。


「どうしたの?」


 不思議そうに見ていたお母さんにお願いします。


「山田さん、何か誘拐犯捕まえるとか言ってたんだけど、今連絡取れなくて。中学生くらいの男の人が犯人云々のこと知ってるらしいんだけど、誰だか分からなくて……念の為に捜せそうな人に連絡してくれない? 山田さん目立つから会ったことない人でも分かると思うし、私は友達とかに訊いてみる」


 一気に話を広めて、ついでに山田さんの嘘に信憑性を持たせます。これで「あの人」の情報を訊かない限り山田さんの命の危険はない……と思いたいです。


 また嘘をついてしまいましたが、山田さんの命を護れるのなら私は良い子じゃなくてもいいのです。私にとっては山田さんを助けられない方が悪いことです。


 アミラさんにも知らせると、アミラさんも大慌てで色んな所と連絡を取り始めました。私も一通りメッセージを送ってから病院内を捜します。


「佐倉!」


 知念くんの方から声をかけてきました。


「何か流れてきたんたけど、これ本当か?」

「そのことについて話があるから、人の居ない場所に移動したい」


 中央の中庭が見える、やや狭い通路へ移動しました。ここら辺は普段は使われないらしい部屋があるだけなので滅多に人は通りません。


「今から言うことは信じてもらえないかもしれないけど、取り敢えず最後まで聞いて欲しい」


 私は夢の世界の話をしました。夢の中に二十五年前に行方不明になった男の子が出てきたこと、山本沙那さんの監禁場所と誘拐犯が分かったこと、山田さんも夢に出てきて誘拐犯に襲われたということを一気に話しました。


「それ、本気で言ってる?」

「本気だよ」

「夢を見たっていうのは信じるけど」


 やっぱり信じられないようです。私だって急にこんな話をされても戸惑います。


「去年の三日月さんの誕生日、みんなの前でプレゼントした誕生日プレゼントの他にこっそり指輪もあげたんだよね。手作り体験で作ったやつ」

「え」

「三日月さんの父親が再婚する時、不安になってた三日月さんに『嫌になったら俺が匿う』って言ってクローゼットを人が住めるように改造してたんだってね」

「ちょっと待って」

「一昨年みんなで行ったキャンプの時、パンツ忘れたの三日月さんにフォローしてもらったんでしよ」

「待て待て待て、何で知ってる。それは三日月しか……」


 大慌てする知念くんが、すっと真顔に戻ります。


「まさか、夢に三日月も?」


 私は頷きました。


「いや、でも……」

「私は信じるよ」


 はっとして振り返ります。姫ちゃんが立っていました。


「いつから聞いてたの?」

「最初から。二人とも怖い顔してたから中々出れなくて。で、私は芽生ちゃんの話信じるよ。れおれおは?」

「俺は……」

「いいよ、姫は芽生ちゃんについて行くから」

「待てって。何する気が分かんねぇけど、女の子二人だけで行かせられねぇよ。俺も行く」


 姫ちゃんが、こっそり私にウインクをします。これが小悪魔系というやつなのでしょうか?


「で、どうするんだ」

「もう一人、協力を頼みたい人が居るんだけど」


 私は松岡くんに電話をかけます。松岡くんは山田さんの強い推薦でした。


「信じるよ」


 信じてもらえないかもまで言ったところで、松岡くんはそう言い切りました。


「まだ何も言ってないけど」

「佐倉さん、こんな時に変な冗談言わないでしょ」


 はっきり言われてしまうと気恥ずかしいです。取り敢えず簡単に説明しました。電話越しの松岡くんの声は困惑も呆れもせずに、むしろ嬉しそうに聞こえました。


「ああ、そうだ。僕、お昼前に山田さんに会ったけど」

「うん聞いてる。手帳に書かれてた人について訊かれたんだよね。犯人その人」

「何か役に立ちそうなもの持って行くね」


 松岡くんを待っている間に、お母さん達に山田さんと昼前会った子に話を訊いてくると断りを入れます。知念くんと姫ちゃんが一緒だったからか不審に思われることはありませんでした。少し心がチクッとしました。


「一応匿名で通報もしてみるけど、すぐ動いてくれるか分からないから行ってみる。のんびりしてたら山田さんも危ないし、沙那さんも手遅れになるかもしれないから」


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