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8-1


 目が覚めましたが、しばらくは何も考えられずに呆然としていました。大家さんが犯人です。少なくとも沙那さんをさらった犯人です。でもそれを誰かに伝える方法が分かりません。夢で見たと言っても信じてもらえそうにありません。


 テーブルに座り並んだ朝食を眺めますが、中々手が出ません。


「食欲がないなら無理に食べなくてもいいからね」

「いえ、大丈夫です。……アミラさんは知ってたんですか? お母さんが誰かに怪我されられたって」


 アミラさんは首を振って否定します。


「誰かとぶつかったかもしれないから警察が入ってるとは言ってたけど」

「そうですか」


 食パンをかじります。味を感じませんでした。


 今日は昼過ぎから学校に居ます。学校は家に子供だけになってしまい不安な家庭の為に解放されたのですが、今日は緊急で開かれる保護者会があるので子供もたくさん集まっています。

 図書室から校庭を見ると、無邪気にボール遊びをしている子が居ます。その近くには険しい顔で辺りを警戒する先生も居ました。


「みんな集まったね」


 自警団のリーダーが顔を見せました。折角だから図書室で子供だけの会議をしたいと、彼女がみんなを集めたのです。集まっているのは私と山田さんと知念くんと姫ちゃん、それに松岡くんと堂本くん、後は自警団と関心のある子供達です。


「今の私達の考えは、黒姫さんとは旧姓小島万里さんへの嫌がらせで生まれたものでお化けでも何でもありません。そしてその万里さんは火事で亡くなっているが、それは嫌がらせをしていた四人と悪ふざけをしていた酔っ払いのせいではないかと考えている。この双方は己の罪を逃れる為に別の何かに責任を押し付けようとして祟りをでっち上げた……ここまで異論や質問はないか?」


 高学年の女の子が手を挙げます。


「なら本当に子供が消えていることはどうなんですか? 二カ月で四人ですよ? 普通じゃないでしょ。実際に消えてるんだらか嘘でも言いがかりでも気のせいでもないんじゃないですか?」

「消えたと言われている中島真利子さんは家の都合で引っ越したのが確認できています。もう一人、中川三日月さんは入院中で行方不明でも何でもない。そうだよね」

「はい」


 自警団のリーダーに目を向けられた知念くんが答えます。


「でもあとの二人は? 山本沙那が見つかったなんてニュースないし、瀬戸内ゆりあって子の話は何も聞かないんだけど」

「それは……確かに瀬戸内ゆりあさんに関しては何の情報もないし、山本さんは警察すら分かってないからどうしょうもないけど……誰か、瀬戸内さんについて何か知ってる人は居ない?」


 誰も返事を返しません。


「ほら、少なくとも二人は消えてるのよ。気のせいで放置して取り返しがつかなくなったらどうするの?」

「だからといってイタズラに騒ぎを大きくするのは……」

「子供が消えてんのに騒がない方がおかしいでしょ。あんた冷た過ぎない?」

「そうやって何でもかんでもこじつけて話を大きくして周りを混乱させるせいで、訳の分からない妄想で人に迷惑をかける人が増えるって言ってるの! これ以上被害者を増やさないで」


 議論というよりも言い争いのようになってきました。それでも周りの人達は二人を止められるほどの言葉も考えも度胸もないので、そわそわしながら見ていることしかできません。

 そんな中、すっと松岡くんが手を挙げました。


「僕はお化けや祟りのせいではないと思うし、こじつけや妄想でもないと思います。山本沙那は誘拐された。そして犯人が捜査を邪魔する為に元々あった怪談や噂を利用した。僕はそう思っているのですが、お二人はどう思いますか?」


 場がしんと静まり返りました。少ししてから、自警団のリーダーと争っていたお下げの女の子がやっと喋ります。


「じゃあ瀬戸内ゆりあさんも誘拐されたって言いたいの?」

「いえ、ゆりあさんはそもそも家族全員が居なくなってるんですよ。沙那さんというよりも中島さんに近い状況だと思いませんか? だから沙那さんとゆりあさんの失踪を一緒に考えるべきではないと思います」

「でも、それは君の推測でしかないし……」

「はい、そうですよ。僕がそう思っただけです。でもお二人の主張もそうですよね」

「……」

「間違いのない確かな情報は山本沙那さんが行方不明になったこと、昔沙那さん母親が参加した同窓会で死亡事故があったこと、その時の生き残りがドライヤーから吹き出す白い粉らしきものを見ていた。同窓会に出席してた人々の様子がおかしい……は確実な情報と言えるほどではないですね。芽生ちゃんの家に突撃した人は別だけど。それくらいですよね? だから誰の主張が正しいとかまだ言えないんですよ。確かな情報を増やさない限りは」


 松岡くんが話し終えるとまた、静かになりました。小学生がこんなにも集まっているのに雑談一つありません。知念くんが「お前……凄いな」と言ったくらいです。


「あの」


 堂本くんが勢い良く立ち上がります。


「昔の火事でイタズラしたと思われてるの、多分俺の伯母……なんだよな?」


 私の顔を見てきました。答えるべきか一瞬迷いましたが、頷きます。ここは隠しごとをする場面ではありません。


「俺の伯母は最近様子がおかしくて、なかなか子供ができないせいだと思ってたけど、それにしてもおかしなこと言うようになって……直接訊いてみる。このまんま、そっとしておいても悪くなってく一方だし」

「なら僕も一緒に行こうか」


 松岡くんが言いました。


「じゃあ俺達も行くか? 三日月の母親の所に」

「そっか、みかっちのお母さんもイタズラしたかもって思われてるんだっけ」


 嫌な予感がして、背筋がゾワッとしました。


「待って、まだ三日月さん事件か事故か分からないんでしょ? もし事件だったらどこで犯人が聞いてるか分かんないんだから、三日月さんの周りで探ってるみたいなことしちゃ危ないよ。万が一の時に三日月さん逃げられないんだから」

「そうだな」


 三日月さんのお母さんは山本沙那さんの誘拐に関わっている可能性が高いのです。刺激するのはあまりにも危険です。

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