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7-7

 家の鍵を開けて女の子を中に招きました。ただ、家の中はむわっと暑くてサウナ状態だったので少し玄関で待ってもらいました。


「一旦ブレーカー上げようぜ」

「クーラーって最初は窓開けといた方が良いんだっけ」


 家の中でバタバタとしている私達を、髪に花が絡まったままの女の子が戸惑った表情で見ています。


「取り敢えず椅子座れ。あー、私が山田でこっちがさくら。あんたは?」

「黒木です。黒木のえるです。」

「そもそも何があったんですか?」

「ええっと、私にも良く分からなくて、子供が来て悲鳴上げて花を投げてきて行っちゃった」


 改めて彼女を見ると、ウェーブのかかった長い黒髪に黒のワンピース、ワンピースは良く見たら制服みたいです。肌も日焼けしてなくて白いままです。もう一人の黒姫さんは彼女かもしれません。


「あの、これ湿布です。あと、この辺りの人ではないですよね」

「ありがとう。私は川向うに住んでて……あの、それで芝原さんのことなんだけど……」


 話しづらいというよりも、口にするのが嫌という不思議な感覚があります。息を整えて、緊張がバレないように話します。


「芝原さん、二月の終わり頃から行方が分からなくて。捜索とかもされてるんですけど、まだ何処に居るか分からないんですよ」

「え」


 黒木さんは驚いて固まってしまいました。


「あの、芝原さんへの用ってどんなものですか? 伝言なら預かれるかもしれませんが、いつ伝えられるかは分かりませんけど」

「えっと……どうしよう」


 彼女は不安そうに視線をキョロキョロと動かしています。しかし、急に目を丸くして一カ所をじっと見つめだしました。立ち上がり、おぼつかない足取りで視線の先へと吸い込まれるように進みます。黒木さんは、いつの間にか開いていた仏壇の前で立ち止まります。見ているのは父の写真です。


「さくらって、名字?」

「はい、佐倉芽生です」


 黒木さんがゆっくりとこちらを向きます。


「ごめんなさい」

「え」


 なぜ謝られたのか分かりません。黒木さんは声を震わせながら続けます。


「私が、私があんな所に隠れなければ……あなたのお父さんは死なずにすんだはずなにの」


 はっとしました。


「もしかして、サンサンバーベキュー場火事の時の……火傷した子供?」


 黒木さんが頷きます。白い肌が、さらに青白くなっていきました。


「私を助けたせいで逃げ遅れて……私のせいで」

「それはおかしいだろ!」


 山田さんが声を荒げます。


「自分からわざわざ危ないところに入って自分で決めて動いたことなんだから、助けられた側に責任押し付けるのは、何か……変だろ」

「でも私がいなければ芝原さんの奥さんだって助かったかも」

「そっちが居なけれは良かったって話にもなるだろ!」

「でも」


 二人の言い争いに割って入ります。


「そもそも!」


 大声を上げたせいで喉が痛いです。


「そもそも、火事が起こらなければ誰も死ななかった」

「……」

「火事が全部悪い。それともあなたが火事の原因を作ったんですか?」

「違う、違うけと……あ、あの、芝原さんには話たことなんですが」


 黒木さんは力尽きるようにその場に座り込んでしまいました。


「あの日のこと、私ずっと思い出せなくて。でもある動画を見たら一気に思い出して」

「動画?」

「ええっと、ちょっと待って下さい」


 スマホを取り出して何やら操作をしています。そしてパッと画面を見せてきました。海外の動画のようです。

 女の人がドライヤーを手にしています。その人がドライヤーのスイッチを入れた途端、真っ白い煙がドライヤーから吹き出します。画面が真っ白になる中、笑い声が聞こえました。


「これと全く同じだったの。芝原さんの奥さんがドライヤーを使った時、同じように真っ白になって」

「そもそも何なんだよ、この動画」

「海外のイタズラ動画。ドライヤーの中に粉を入れておいて、使う人をびっくりさせるやつ。昔、流行ったらしいんだけど、失敗もあって。これ」


 別の動画が再生されます。同じようにドライヤーから白いものが大量に吹き出していましたが、突然画面が炎に覆われてしまいました。黒木さんは顔をしかめて画面から目を逸らします。


「使った粉が燃えるものだとこうやって一気に燃え上がることがあるそうで、あの時もこんな感じで一気に炎が広がって」


 黒木さんはとても苦しそうな顔をしていました。どうやら誰かがドライヤーにイタズラをして、それが原因で火事が起きたようです。山田さんと目が合いました。きっと山田さんも同じことを思ったのでしょう。

 恐らくイタズラをしたのは沙那ママ達四人です。それだけ後ろめたいことがなければ、あんなに祟りのせいだと思い込み、気がおかしくなることはないでしょう。


「それ、誰かに言ったか? 親とか」

「芝原さん以外には誰にも。両親にはもう私の火傷て迷惑かけちゃってるし。でも黙っている訳にもいかないと思って芝原さんには話したんだけど、連絡がつかなくなっちゃって……私どうしたらいいのか分からなくて」

「親にも言った方が良いと思うけど……自警団って黒木さんが相談してもいいのかな」

「情報提供って名目なら良いんじゃね。それより坂本のが良くねぇか? 一応芝原と関係ある話だろ。火事の話訊いて回ってた直後に消えたんだから」

「それって、どういう」

「私らにも分かんねぇんだよ。ただこの町は今、滅茶苦茶きな臭いってことだよ。あんたもしばらくこっちに来ない方がいいぞ。あんた今、子供をさらうお化けだと思われてるから今日みたいに攻撃されるぞ」

「ええっ、何でそんなことに」


 私達は黒姫さんの噂と、今までにあった騒動を黒木さんに話しました。


「何か私、迷惑かけちゃったみたいだね。分かった、しばらく来ない。連絡先教えるから何かあったら知らせて欲しい……親にも相談する。黙ってちゃ駄目な気がするから。私にできることするよ」


 私達は連絡先を交換しました。


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