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第五話 納言さんと委員会 後編

「女子の学級委員に立候補するのは、藤原だけでいいのか?」


 ピンと手を挙げた定子さま。

 が、定子さま以外は誰も手を挙げていなかった。

 も、もしや、定子さまの不戦勝?

 私は、定子さまの方を見て、ドキドキと胸が高鳴った。

 でも、私よりも定子さまご本人の方が緊張しているでしょう。

 そう、私の何倍も。

 その数秒が、数分、数時間にも感じられる。

 その間、手を挙げた者は定子さま以外いなかった。


「締め切るぞー。じゃあ、女子学級委員は、藤原で決定!」


 …………!

 私は、思わず全力で拍手をして、胸が熱くなった。

 定子さまは、ホッとされたご様子だ。


「じゃあ藤原、前で意気込みを話してくれ」


「はい」


 定子さまが、カツ、カツと静かな教室に小さな足音を響かせながら、前に歩いて行く。

 そして、綺麗なお顔を嬉しさでより輝かせながら、口を開いた。


「学級委員になった、藤原定子です。私は、このクラスを規則を守りつつ、楽しめるクラスにしたいです! これから、よろしくお願いします!」


 パチパチパチパチ!

 大きな拍手に包まれ、定子さまは形のよい唇の端を上げた。

 私も、興奮でほとんど自我を保っていない心で、定子さまをお祝いした。

 ここから、始まるんだ。

 私たち、一年一組の一年が――。


 ―――


 そのあと、無事に決まった学級委員のお二人が司会に。

 そして、他の委員会も決めることになった。

 小学校では必ず入らなくてはいけなかった委員会だが、この中学校では強制ではない。

 でも、定子さまがこんなに頑張っているのだ。

 私も、なにかしてみたい。

 ということで、私もなにかしらの委員会に入ろうと思っている。

 男子の学級委員に決まった一条さんが、黒板に丁寧に委員会の一覧を書いていく。

 生活委員、環境委員、保健委員、給食委員、体育委員、図書委員。

 各委員会に、男女ともに一人ずつだ。

 私は、どの委員会に入るか、事前に考えてきていた。

 私は読書が好きだ。

 なので、図書委員に入ろうと思っている。

 たぶん、被ったらじゃんけんだ。

 図書委員は人気がありそうだ。

 小学校のときも、いつも入ろうとは思っていたが、じゃんけんに負けて一回しか入ったことがない。

 その頃とは色々と変わったから、どうなるかはわからない。

 入れるといいな。

 さっき黒板に書かれた順に、定子さまが希望を聞いていく。

 その順番だと、図書委員は最後だ。


 生活委員女子、決定。

 環境委員男女、決定。

 保健委員女子、決定。

 給食委員男女、決定。

 体育委員男子、決定。


 次々と決まっていく様子を眺めながら、まだかまだかと順番を待つ。


「次、図書委員をやりたい人ー!」


 来たー!

 ここぞとばかりに手を挙げる。

 ぐるりと教室を見渡してみると、男子は一人、そして女子は私を含めて――二人。

 これは、じゃんけんになりそうだ……!


「じゃあ、二人でじゃんけんをして決めてください」


 そう仰った定子さまの方を見ると、自意識過剰かもしれないけれど、「頑張って」と仰ってくださっているように見えた。

 私ともう一人の女子は、お互いに進み出た。

 もう一人の立候補者と向かい合い、拳を出す。

 その女子とは、まだあまり喋ったことがない。

 が、そんなことはどうでもいい。

 私は、彼女に勝って、図書委員になる!


「最初はグー、じゃんけんポン!」


 私はチョキを出した。

 さあ、勝敗は――。

 彼女の手元に目を向ける。

 彼女が出していたのは――、パーだった。


「やった! 勝った!」


 ガッツポーズをすると、定子さまが柔らかいお声で話しかけてくださった。


「では、図書委員女子は納言さん、男子は世尊寺(せそんじ)くんにお願いします」


 私は、席に戻りながらもう一人の図書委員に目を向けた。

 世尊寺、か。

 真面目で堅そうで、なんだか上手くやれるか不安だ。

 まだあまり話したこともないし、どうしよう。

 まあ、そんなことはどうでもいいか。

 こうして、定子さまは学級委員に、私は図書委員になれたのだから。

 残りの委員会を決める声が、私の耳に心地よく響いた。

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