↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/31

第四話 式部さんと図書委員会

 今日は、待ちに待った図書委員会の日だ。

 私は、意気揚々と図書室に足を踏み入れた。


 図書委員会が始まらないと、図書室を利用できないのだ。

 本が読みたくて、ずっとうずうずしていたところだった。


 二年二組は……例年と同じだと、この席か。

 学年とクラスごとに座る場所が決まっているので、わかりやすい。


 席に座り、バッグを置いて、早速本棚に駆け寄った。


「ああっ、これは『蜻蛉日記』、そしてこれは『古今和歌集』。昔の文学も美しいし、参考になるかも……」


 特に、ヒカルくんたちの愛憎劇だと……などと考えていたら、「式部さん、式部さん」と私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。


 楽しいところだったのに、と思って振り向くと、声の主は眼鏡をかけた男子。


「何してるんですか。座りますよ」


 冷めた瞳でこちらを見つめる彼は、真面目キャラらしい。

 『源くんの学園生活物語』のキャラで、真面目な立ち位置のキャラを出せないだろうか。


 ……と、近頃の私はいつも小説の勉強をしてしまっていけない。

 私は不満を顔に出さないようにしながら、その男子――同じ図書委員の世尊寺行成(せそんじゆきなり)くんについていった。


「読書、好きなんですか?」


 座るなり早速、世尊寺くんに聞かれる。


「もちろんです」


 私は即答した。


 だが、しまったな。

 私の脳内では、一人反省会が始まる。

 普段大人しくしている私の即答に、世尊寺くんは驚いてしまっているようだ。

 学校生活というのは、小説と違って上手くいかないものだな。


 まあ、ヒカルくんもまあまあ上手くいっていないのだが。


 ある、雨夜のお話。

 葵ちゃんのお兄ちゃんであり、ヒカルくんの親友でもある冬夜(とうや)くん。そして、その他のお友達。

 彼らはチャットアプリで男子会のようなものを始めた。

 たとえば、お金持ちか貧乏、付き合うならどっち? みたいな話が思いの外盛り上がる。

 その中間くらいが良いのでは? というようなことを話す、いわゆる恋バナだ。作者である私は、したことがないのだが……。

 そこで冬夜くんは、元カノがいたことを明かす。

 常夏――古語で撫子のこと、のような女の子だったらしい。

 でも今カノがいじめて、彼女とは連絡がつかなくなったそうな。


 そんなヒカルくんは、葵ちゃんという彼女がいながら、なんと浮気をしてしまう。

 相手は、その「お金持ちと貧乏の中間」くらいのお家の女の子。

 学校では目立ったところはなく、彼氏持ち。

 なのに、ヒカルくんは強引に……といったところだ。

 その子の弟くんを使ってやりとりをするも、つれない返事ばかり。

 そんな返事が、ますますヒカルくんの心を刺激していくのだった――!


「はい、では活動を始めましょうか」


 えっ、もう委員会が始まる時間ですか?


 ―――


 反省会から、いつの間にか妄想の世界に浸ってしまっていた私だったが、仕事はきちんとした。

 委員長を決めたら、今日は主に、学級文庫の選定だ。


 世尊寺くんも私も図書委員経験者ゆえ、手際よく終わらせていく。

 だいたい、どこにどの本があるかわかるから、手際が良いのだろう。


 私はドサッと本を置くと、世尊寺くんが選んだ本を見てみる。


「えっ」


 思わず、声が漏れた。

 『和歌の秘密』、『めざせ古文マスター!』、『綺麗な字を書きたい君へ』……。

 マニアックすぎないか。


 私が選んだ本を見る。

 私は無難に、『ロミオとジュリエット』、『シャーロック・ホームズ』、『怪人二十面相』などなどだ。

 趣味を感じさせない程度がちょうど良いと思うのだが……まあ、いいか。


「式部さん、終わりましたか?」


 その本を選んだ張本人は、何食わぬ顔で眼鏡のブリッジを持ち上げる。

 私は本で顔を隠すようにして、「は、はい……」と頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。