第四話 式部さんと図書委員会
今日は、待ちに待った図書委員会の日だ。
私は、意気揚々と図書室に足を踏み入れた。
図書委員会が始まらないと、図書室を利用できないのだ。
本が読みたくて、ずっとうずうずしていたところだった。
二年二組は……例年と同じだと、この席か。
学年とクラスごとに座る場所が決まっているので、わかりやすい。
席に座り、バッグを置いて、早速本棚に駆け寄った。
「ああっ、これは『蜻蛉日記』、そしてこれは『古今和歌集』。昔の文学も美しいし、参考になるかも……」
特に、ヒカルくんたちの愛憎劇だと……などと考えていたら、「式部さん、式部さん」と私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
楽しいところだったのに、と思って振り向くと、声の主は眼鏡をかけた男子。
「何してるんですか。座りますよ」
冷めた瞳でこちらを見つめる彼は、真面目キャラらしい。
『源くんの学園生活物語』のキャラで、真面目な立ち位置のキャラを出せないだろうか。
……と、近頃の私はいつも小説の勉強をしてしまっていけない。
私は不満を顔に出さないようにしながら、その男子――同じ図書委員の世尊寺行成くんについていった。
「読書、好きなんですか?」
座るなり早速、世尊寺くんに聞かれる。
「もちろんです」
私は即答した。
だが、しまったな。
私の脳内では、一人反省会が始まる。
普段大人しくしている私の即答に、世尊寺くんは驚いてしまっているようだ。
学校生活というのは、小説と違って上手くいかないものだな。
まあ、ヒカルくんもまあまあ上手くいっていないのだが。
ある、雨夜のお話。
葵ちゃんのお兄ちゃんであり、ヒカルくんの親友でもある冬夜くん。そして、その他のお友達。
彼らはチャットアプリで男子会のようなものを始めた。
たとえば、お金持ちか貧乏、付き合うならどっち? みたいな話が思いの外盛り上がる。
その中間くらいが良いのでは? というようなことを話す、いわゆる恋バナだ。作者である私は、したことがないのだが……。
そこで冬夜くんは、元カノがいたことを明かす。
常夏――古語で撫子のこと、のような女の子だったらしい。
でも今カノがいじめて、彼女とは連絡がつかなくなったそうな。
そんなヒカルくんは、葵ちゃんという彼女がいながら、なんと浮気をしてしまう。
相手は、その「お金持ちと貧乏の中間」くらいのお家の女の子。
学校では目立ったところはなく、彼氏持ち。
なのに、ヒカルくんは強引に……といったところだ。
その子の弟くんを使ってやりとりをするも、つれない返事ばかり。
そんな返事が、ますますヒカルくんの心を刺激していくのだった――!
「はい、では活動を始めましょうか」
えっ、もう委員会が始まる時間ですか?
―――
反省会から、いつの間にか妄想の世界に浸ってしまっていた私だったが、仕事はきちんとした。
委員長を決めたら、今日は主に、学級文庫の選定だ。
世尊寺くんも私も図書委員経験者ゆえ、手際よく終わらせていく。
だいたい、どこにどの本があるかわかるから、手際が良いのだろう。
私はドサッと本を置くと、世尊寺くんが選んだ本を見てみる。
「えっ」
思わず、声が漏れた。
『和歌の秘密』、『めざせ古文マスター!』、『綺麗な字を書きたい君へ』……。
マニアックすぎないか。
私が選んだ本を見る。
私は無難に、『ロミオとジュリエット』、『シャーロック・ホームズ』、『怪人二十面相』などなどだ。
趣味を感じさせない程度がちょうど良いと思うのだが……まあ、いいか。
「式部さん、終わりましたか?」
その本を選んだ張本人は、何食わぬ顔で眼鏡のブリッジを持ち上げる。
私は本で顔を隠すようにして、「は、はい……」と頷いた。




