↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/30

第一話 式部さんと二年生

 毎年思う。

 自己紹介ほど、無駄で嫌なことはあるだろうか、と。


 新しいクラスになって自己紹介をするけれど、だいたい最初は猫を被るものだ。

 私だって、去年は最後まで猫を被り続けていた。

 本心は出さない。

 たまたま同じ教室に配属された者と、馴れ合うつもりはない。

 それに、どうせ顔も覚えられないのだから、出席番号と名前を知っているくらいで良いだろう。


 そこで、ふと思う。

 自己紹介以外にも、無駄で嫌なことはたくさんあったな、と。


 そう思っていると、もう私の順番だ。

 私立平安学園中等部二年二組の教卓から、出席番号十一番の生徒が退出する。

 私は、その生徒と入れ替わりに教卓へ向かった。


 教卓から見える景色は、私にとってはとても恐ろしい。

 無数の目が、好奇に染まった目たちが、私に向くのだ。


 それでも私は、話さねばなるまい。

 話さなかったら、それこそこのクラスでの生活は終わりだ。


 私は、浅く息を吸い込んだ。


「式部香(しきぶかおり)です。趣味は読書です。よろしくお願いします」


 これだけ。これだけなのだ。

 このたった数十秒のために、およそ六十もの瞳がこちらを向く。

 無駄だ、無駄すぎる。


 私は深めにお辞儀をして、自分の席に戻った。


 次の、出席番号十三番の生徒――私と同じように眼鏡をかけている生徒と、すれ違う。

 確か彼は、去年の一組の図書委員だったか。

 彼の自己紹介が始まる。

 世尊寺行成(せそんじゆきなり)という名らしい。


 私のような者にも、知り合いというか、顔見知りはいた。

 去年同じ一年二組だった、藤原彰子(ふじわらあきこ)さんとか。

 彼女とは、小学校も同じだった。

 ……私は家の都合で転校していたので、今年帰ってきたばかりなのだが。


 まあ、私は今年も一匹狼でいいのだ。

 その方が気楽だから、それでいい。


 そんなことをぼんやりと思いながら、私はため息をつく。


 新しいクラスでも、心の内は不安でいっぱいだった。

お読みいただき、ありがとうございます。


式部さん編は、納言さん編に登場する人物もいますが、主人公を変更したので、実はちゃんとした繋がりがありません。

なので、どちらからでも、片方だけでも楽しむことができます。

まだ納言さん編を読んでいない方もいるでしょう。

雰囲気はガラッと変わっていますが、そちらもぜひ。


よければ、評価やブクマ、感想などで応援してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。